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年の瀬の両G1も騎手の腕の差が如実に。その勝因と来年への期待とは?(ホープフルS・東京大賞典回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のレース展望スペース2023.12.29 21:00~からの文字起こしです。


第40回ホープフルS

第40回ホープフルS 出馬表

蒼山サグ(以下、蒼):まずゆたさんからお願いします。

くらみゆた(以下、ゆ):ボンドガール組の実力が判明するかなと期待されていたんですけれども、ゴンバデカーブースが感冒で取り消しということになってしまいました。その結果、上位陣は混戦かなというふうに見えたんですけれども、終わってみれば1、2番人気での決着と改めて競馬ファン上手いなと思わされた結果になったと思います。

レースを振り返りますと、内枠の2番ヴェロキラプトルと3番アンモシエラが引っ張る流れ。その後ろに内に4番シンエンペラー、外に5番サンライズジパングという流れで1、2コーナーに入っています。レガレイラミスタージーティーは出負けして後方からという競馬になりました。向正面に入るところあたりで6番ショウナンラプンタが結構抑えきれない感じで外から進出してくる形になっています。その結果、前半の3ハロンが35秒4、4ハロンが60秒ちょうど。12秒台前半の流れが続くというところで、この時期の2歳の2000m戦としてはそこそこ厳しい流れになったのかなと思います。それと若さもあったのかというところで、3,4コーナーでは2歳らしいお行儀の悪さ、騎手の腕の差が出るようなコーナリングとなりました。その中で好位から抜け出した4番シンエンペラーが勝ち切れそうだったんですけど、最後大外から飛んできた3番レガレイラの勝利という形になっています。牝馬でのホープフルS制覇となりました。

勝ったレガレイラ。こちらはいつものことですけど今回もルメールがうまかったですね。出遅れてもすぐに切り替えて後方をじっくり追走して、厳しい流れにそれほど付き合わずに脚を溜める。3コーナーから先手先手で進路確保で減速しないように丁寧にコーナー回って、直線の入り口で一気に外に出す。いつものルメールらしい追い込みの競馬で、進路確保するとあとは本当に伸びるだけという形の競馬になりました。レガレイラの方に関しても直線ではかなりシンエンペラーにぶちかましをくらっているんですけれども、逆に跳ね返すような体幹の強さを見せてというところで、かなりインパクトがある勝利だったかなと思います。陣営のコメントを見てても、恐らくミオスタチン遺伝子がCT型とかTT型であることを確定しそうな口ぶりなので、そういうこともあって春の牡馬クラシック路線に向かうという形を早めにとっているということかなと思いました。

ここからはかなり個人的な感想になるんですけれども、まず勝ったレガレイラが勝ったというところでアイビーSの価値がグッと上がってきたと思ってまして、ここを楽勝したのがダノンエアズロック。今年のモーリス産駒の真打ちだと思っています。堀調教師にじっくり矯正されているのかなと思うんですけれども、春まで頭がまともなら皐月賞はいい勝負になるんじゃないかなと期待しています。あとは5着に割ったミスタージーティーですね。こちらもPOGで指名していて、実は今年のPOG指名馬10頭の中でダービー狙えるのはこの方と思って指名しましたので、かなり注目していました。結果的には師匠の矢作師も激おこのクソ騎乗で5着。坂井瑠星騎手、今年は良い騎乗が目立ちましたが、今日はひどかったと思います。道中はレガレイラの前をずっと走っていたんですけれども、どう進路確保するのかイメージが湧いていなかったのか、3コーナーではルメールに先に行かれて進路を取られてしまって、そこで後手になってしまったという形ですね。直線もどうしようというところで内に向かったんですけど、ここはドイル騎手のアドミラルシップに先に進路を取られて行き場を無くして、外に出してみたら、そこも進路がなくなって、ほぼ最後50mくらいしか競馬できなかったなと思います。正直こっちにルメール乗ったら勝てたんじゃないのというような競馬だったと思います。この時期に一勝馬なので、ダービーまでどうやって賞金を積むかというか、一度の負けも許されないような感じになってきて厳しいところであるんですけれども、結構この思い入れを持って指名をしているというところもあるので坂井瑠星騎手には今年のダービーの仮をミスタージーティーで返してほしいなというふうに思っております。

あと2着のシンエンペラーですね。今日のようなタフな流れで前々で競馬するというところで、やっぱり強いんだなというふうに見せつけたと思います。ここで賞金を積めたので、春は日本のクラシックに向かうのかもしれないんですけれども、ダービーでは斬れ負けそうなイメージもあるので、本場のダービー、イギリスに向かってほしいなという気持ちもあります。

蒼:続きましてこひさんの方からもぜひコメントよろしくお願いします。

こ:今回勝ったレガレイラですね。阪神ジュベナイルフィリーズで一番人気で出遅れて終わっていたロカの仔が、こういう形で2歳G1を勝つというところで競馬の面白さというのを改めて思いました。ただスタートで若干出負けした瞬間に私は正直これはロカの再来だと思って(笑)。馬券的には軽視していたのでニコニコしていたんですが、能力的に完全に蹴散らされましたね。あとはこの馬が母母がランズエッジウインドインハーヘアの牝系といいますと、阪神ジュベナイルフィリーズで2着でしたステレンボッシュと同じ牝系となっていまして、このタイミングでウインドインハーヘアの牝系が結果を出すところがすごく印象的でした。

あとちょっと負け組のところで言いますと3着の5番サンライズジパングですね。JBC2歳優駿2着の際にちょっと触れましたが、賞金額が400万円+490万円で890万円しか積まれないということになります。一般的な2勝クラスよりも10万円低い賞金ということで、この来年になってのクラシック世代で言いますと1頭だけ格下のオープン馬みたいな凄くかわいそうな立場になっています。芝もダートもどちらも通用しそうなパフォーマンスというところを見せたかなというふうに思いますが、どこでどうやって賞金を積むのやらというところも含めてですが、今後のレース選びが非常に面白いと思っております。らちょうど一昨日出ていました南関東クラシック路線のトライアルの第1弾でありますブルーバードカップ。3頭しか入れない枠の4番目ということで早くも賞金の辛さというものを味わわされているような状態になっていましたね。

あと4着のアドミラルシップは馬というよりは鞍上のドイル騎手がめちゃくちゃうまいことを乗っていたなというところが印象的でした。前回の来日のときに大きな印象はなかったかなと思いますが、福島中京中山というところで結構機動力を問われるようなレースになって非常にうまく乗ってこられたなというふうに思います。来年以降もいろんな話もあるので来てもらえるかわからないですが、ぜひ来日の方を期待したいなと思います。あとはこれ半分余談ですが、私は馬券的には6番ショウナンラプンタから買っていたんですが、1コーナーの時点で外に張って全く勝負にならない雰囲気がありありと分かってしまいまして、久しぶりに1コーナーで馬券がダメになったなというところを感じたようなレースでした。ただそんな中でもよく外に張っていくのを矯正しながら走って、最後は7着にいるのを見て結構びっくりしました。左回りなら見直したいなと思います。

2023年東京大賞典

第69回東京大賞典 出馬表

こ:今回東京大賞典、地方馬の回避がかなり多くなってしまって、最終的にはミックファイアマンガンの2頭というような形で9頭立てで頭数的には寂しくはなってしまいましたが、日本場のダート路線、総大将でありますウシュバテソーロを中心に、ドゥラエレーデ、さらにJBCクラシックを勝ちましたキングズソードなどかなりメンバー的にはしっかり揃ったレースだったかなというふうに思います。

終わってみますと、少頭数でありながら、先行はしたいが別に逃げたいわけではない馬が揃ったというところもありまして、かなり展開が結果に影響したようなレースだったかなというふうに思います。スタートを切った後に結構どの馬もいけそうな雰囲気だったんですが、とはいえ誰も主張しないところを見て、外からウィルソンテソーロ騎手が出していくところからスタートしました。終わってみるとこのウィルソンテソーロが非常に自分のリズムでペースもしっかり緩めて楽な逃げを打ちまして、最後は上がりの競馬、先行馬の競馬というものを作った形。レース後のコメントでは当初から逃げる予定はなかったと言ってた騎手でしたが、周りの馬を見ながら咄嗟の判断でハナに行ったというところ。ここは本当に非常に称賛される激走だったかなというふうに思います。

また展開的に非常に再現性というものを感じたのが、その後にドゥラエレーデムルザバエフ騎手が番手につけて完全に隊列が固まったというところですね。これがチャンピオンズカップと全く同じ構図だなというところを改めて見直してみると、番手にムルザバエフ騎手がピタッとくっつけた時点で、他の馬があまり動きたくても動きにくいような状態になってしまったんじゃないのかなと。そんな中でもレースを動かせそうな武豊騎手が乗ったノットゥルノは内側にいたんで自ら動くことはできなかったというところで、今回の非常にスローな展開というところが導かれたのかなというふうに思います。ラップタイムを見ていても4ハロン目で13秒6、5ハロン目で13秒3。そのあとちょっと12秒7になるんですが、そのあと13秒0というような形になります。完全に上がり3ハロンから2ハロンぐらいの競馬というところに持ち込むことができたというところで、レースの質としましてはもう本当に隊列順にゴールをする、しかも内側の馬が有利であるというレースだったと思います。

そんな中、一番後ろから2番手のところから外を回して直線ではもう本当に内から9頭分目ぐらいのところを走っていたウシュバテソーロが、最後は若干余裕を残しながら差し切ったというところで、1頭だけ明確に次元に違う競馬を見せられたなというような印象でした。本当に直線に向いて加速してきた時からの雰囲気というのかな、しびれるような脚を使っていまして、こういったペースを作った騎手は120点で騎乗をしたんですが、このペースの中、馬の能力を信じ切ってウシュバテソーロの競馬をやり切るという決断をした川田騎手の判断力という肝の座り方というところも改めて素晴らしいなというところを思わされたレースでした。終わってみましたら、それはドバイワールドカップを勝っている馬ですねというような脚だったかなと思いますし、それ以外の馬については本当に道中の順番通り、枠通りに入ってきたというところでレースの総論としてレベルが高い低いというところはなかなか難しいところはあるかなと思います。ただ1着馬、2着馬の騎手の腕というところは称賛されるべきですし、ムルザバエフ騎手はこういうところでしっかり番手につけて持ってくるというところでは上手いなというような印象でした。

ウシュバテソーロに関しては能力的なものをここで触れる必要もない馬かなと思います。来年サウジからドバイという路線も出ていますので、そこでたぶんデルマソトガケと一緒に来年1年は海外ツアーという感じになるかと思います。どこでタイトルを積み重ねられるかというのを素直に期待したいと思います。

2着のウィルソンテソーロですね。本当に力をつけているなというところを改めて見せつけられたかなというふうに思います。特に騎手は前走ではちょっと出が悪かったところで腹をくくって後方で動かないと競馬。今回はうまくスタートが切れて周りを見てハナに行くというようなところで、レース経験がこの2鞍しかない割にはものすごく度胸のある騎乗をしているなというところをすごく印象付けられました。トップホースがいない5月の川崎記念ですとかそういったところでは順当にチャンスが来ておかしくないんじゃないかなと。3着のドゥラエレーデでは芝なのかダートなのかどこに行くのかという路線的なところで言うと、今回で明確にダートでしばらくやっていけるんだなと路線が決まったことはすごくいいなと思います。ただこのレースもチャンピオンズカップもそうなんですが、逃げた馬の番手に行って、逃げた馬は捕まえられずに後ろから差されているというところはあるので、勝ち味には遅いタイプにはなるんじゃないのかなと。単勝ではちょっと買いにくい馬なんじゃないのかなというような印象になってきました。

負けたところで言いますとミックファイアですね。この芯力では時折3歳牡馬のジャパンダートダービー組のレベルに関しては疑問符を付けていました。今回ももうちょっと人気になってもいいかなと思っていたんですが、3番人気止まりというところでやはりそういった不安という皆さんは思われていたところが結果に出た部分はあったかなと思います。7着は正直負けすぎたなというようなところで順調さを欠いたというようなところですとか、馬体重プラス10キロというようなところもありますので、1回リセットをして見直していきたいなというふうに思います。ただ御神本騎手現状での古馬との差にコメントしていましたし、馬券的には次以降も静観した方がいいのかなと思います。どこかで上向きにして改めて中央馬に立ち向かっていく姿っていうのは見たいなと思います。

C103同人誌頒布予定のお知らせ

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「ディープインパクト 未来に遺したゲート」
オフセットA5 500円 31日(日)東ホ-30bにぜひお越し下さいませ。

C103 お品書き


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