見出し画像

逃げ馬不在が生んだ1コーナーの攻防とペースメイクはベテランのパワー!に軍配。ポストディープ時代に求められる老獪さと勇気とは?(第91回日本ダービー・第7回葵S回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.05.26 16:30~からの文字起こしです。


第91回東京優駿

蒼山サグ(以下、蒼):撮って出しの日本ダービーの回顧を早速やっていきたいと思います。昨日の展望からもいろいろ語れることがあるのではないかという結果になりました。まずは、ゆたさんからよろしくお願いいたします。

くらみゆた(以下、ゆ):昨日の展望、総論が当たってるものの各論で間違えましたという感じで、ちょっと悔しい感じですね。

蒼:重要な馬名は全部出ていた気がしますね(笑)。

ゆ:そんな展開もペース読みもバッチリだったのですけれども、ダノン違い。横山武史騎手の3度目の制覇で幕を閉じた2024年の東京優駿なのですが、終わってみると先ほども話しましたけれども、老獪なベテランが今回ペースを作ったというところで、後続勢は封印されてしまったというような感じだったと思います。ですから最年長騎手のダービー制覇というのは、納得の結果だったのかなと思います。

何が逃げるかという注目だったスタートですね。私はシュガークン、こひさんがシンエンペラーを上げていたのですけれども、逃げたのは結果的にはエコロヴァルツという形になりました。スタート直後、シュガークン武豊騎手も出していく素振りを見せていましたし、ダノンデサイル横山典弘騎手もハナを奪うぐらいの勢いで前に行ったのですけれども、さらに外から一気に先頭に立ったのが先ほど話したエコロヴァルツでした。例年の東京優駿らしく、1コーナーまでのポジション争いは激しいものがあったのですが、結果的に逃げ馬の後ろのポケットを確保できたのがダノンデサイルシュガークンが2番手、ジャスティンミラノエコロヴァルツについていくような形で先行。その後ろ内からシックスペンス。ちょっと外にシンエンペラー。さらにその後ろ内にダノンエアズロックは、さらにレガレイラというような展開になっておりました。

逃げ馬は展望の時に触れた馬とはちょっと違いましたが、ペースはだいたい予想通りという感じで、かなりのスローペースで流れていました。ホームストレッチに入ったところでぐっと落ちて、前半の1000mが62秒2。こうなるとやはり最近の東京優駿は動く馬が出てきますね。向こう正面から動いたのはコスモキュランダでした。その後、一呼吸を置いて外からさらにサンライズジパングが動いて、先頭に立つような形。3コーナーではちょっとペースが緩むような素振りはありましたが、4コーナー手前からグッとまたペースが上がって、直線に入るという形になっています。直線に入ると、ジャスティンミラノは結構良い位置に見えたのですが、手が動くも、なかなか前に抜け出せず。その中で内ラチ沿いから一気に抜け出したのはダノンデサイルで、一気に後続に差をつけて一着、二着にジャスティンミラノという結果。三着には本当によく追い込んできましたシンエンペラーが入りました。

勝ったダノンデサイル。展望で触れていました逃げ馬の真後ろのポケットこれは、横山典弘騎手の勝利ジョッキーインタビューで触れられたんですが、本当にこのポジションを取り切ったというところが大きかったですね。皐月賞のゲート直前の回避から、このダービーの展開読みまで含めて、今回はダノンデサイルに横山典弘騎手がダービーをプレゼントした、ダービーを勝たせたというような感じだったと思います。パトロールビデオを見ても、スタート直後からを一気にポジション取りに行ってます。東京芝2400m、ダービーのレース展開は、この最初の1コーナーまでに決まるというのが象徴的なレースだったというふうに思いました。

その1コーナーの攻防ですね。ちょっと振り返ってみますと、ダノンエアズロックが私が思ったよりは出していかなかった形になっています。折り合いに不安があるモーリス産駒というところで攻めきれないところがあったのかもしれません。ジューンテイクはその中で期待通りに内ラチ沿いを確保。その結果ダノンエアズロックはちょっと中途半端な競馬になっています。そんな影響を受けたのがシックスペンスシンエンペラーの2頭。この2頭は多分もう1つぐらい内に行きたかったと思うんですが、ダノンエアズロックジューンテイクの外側でちょっと張り気味な感じで走りましたので、1コーナー手前はちょっとガチャッと外に押し出されるような形になっています。特にシンエンペラーはちょっとここで若干不利というほどはないんですけども、ポジションを落としてますので、これがなければもうちょっと迫られたのかなというところが惜しいところだと思いました。

そんな中で気になったのが武豊騎手の動きですね。シックスペンスが外に張ったところで、前にいた1コーナーのシュガークンもあえて引かないような形でまっすぐ走るという形を取りましたので、結果的に外から先行したジャスティンミラノは大外の4番手を走るという形になってしまいました。ちょっとストレスの多い1コーナーになってしまったのかなと思います。この辺はなかなか一番人気が楽な競馬はさせてもらえないなというのは分かりやすいパターンだったかなと思いますね。

道中の感じてみると、本当に遅い流れになりました。最近の東京優駿は遅くなると動くのがトレンド。ちょっとレイデオロとか福永祐一騎手のイメージが突く鳴ってるのかもしれないですけど、本当にみんな動くようになっています。デムーロ騎手が発射したのはみんないつものやつだなと思ったと思うんですけれども、一呼吸置いた池添騎手の動きは良かったですね。デムーロ騎手を踏み台にするような形でハナに立つところまでいきましたのも、結果的に4着に残っていますので、好判断だと思います。ちなみに東スポの田原成貴騎手の展開予想ではエコロヴァルツの逃げ、サンライズジパングが向こう正面でで動く可能性を言及していました。いろいろ言われている田原成貴ですが、さすがだなと思いました。

そんな中で本当にスローの中から早めに動くという流れになった中で、2着に終わったジャスティンミラノに触れますと、ペースにちょっと順応できなかったかなというような形で手が動いてしまいました。戸崎騎手もそれなりに乗っているというふうには思うんですけれども、結果的にこのレース上がり最後の1000mが11秒7、次は11秒3、11秒1、11秒2、11秒5という形になりました。ジャスティンミラノが手を動かして仕掛けているタイミングが11秒1、11秒2あたりなので、そこでやっぱりキズナが10秒台の切れ味を出せるかというと、やっぱり出せないですよね。一方の勝ち馬はロベルト系らしく上がり4ハロンの中で速い脚が使える、さらに母系に米血、エーピーインディ、ストームキャットとスピードが注入されている点が効いたのかなというふうに思います。キズナの苦手な展開に持ち込まれた時点で、内の馬がダノンデサイルじゃなかったとしても何かにやられてしまうというような結果だったのかなと思います。

ジャスティンミラノの勝ち筋あったのかと言われると、去年のソールオリエンスと一緒でなかなか難しいところはあったとは思います。ただこの展開自体は想定されたところだっただけに、向こう正面で後続が動いたタイミングや、1コーナーでもっと攻めていくことができたら。極端な話、ダノンデサイル横山典弘騎手と同じようにハナに立つ覚悟まであってもよかったのかなと思いました。今日の競馬で戸崎騎手を責めるのはちょっと酷かもしれないですけれども、その一歩の勇気が足りなかったのかなというふうに思いました。3着のシンエンペラーは本当によく追い込んできましたね。日本で走っているのが厳しいだけなので凱旋門賞は是非行って欲しいですね(レース後に陣営は凱旋門賞目指すとコメントあり)。

蒼:続きまして、小石さんからもよろしくお願いいたします。

こ:まさにペースというところも含めて、昨日の展望で考えていた通りのパターンになったかなと思います。ただ、ダノンデサイルまで手が回らなかったですね。

改めてレースを見直して思ったのは、昨日戸崎騎手は安全に乗るのか攻めるのか。まあ安全に乗っても勝てるかもしれない馬だよねというような話をしていたんですが、私はどちらかというと今日は攻めたなとは思っています。エコロヴァルツが内に切れ込んでいく動きをうまく使ってちゃんと先行していったというのは、結構勇気がいる騎乗だったかなと思います。当然、前に何もいない状態でレースを回っていくというところも選択をしていて、2番手3番手という形での競馬にはなりましたが、結果的に負けはしたものの、手は打っていました。

これがもっとなんとなく乗っていたらどうなっていたかと考えますと、やはりこのペースでさらに外を回されて中団になると、もっと厳しい結果になっていたかなと思います。そういう意味では、戸崎騎手はちゃんと攻めて乗ってはいたものの、舞台設定的なところを含めて完璧にはハマらないのが東京優駿の流れだったというところと、ポケットに入ったダノンデサイルの横山典弘騎手がめちゃくちゃ上手かったというところで、ある種仕方がない負けだったのかなと、改めて見ながら思ったところです。

そんな中でレガレイラですね。この馬が5着まで来ているのは、結構衝撃的なところかなと思います。4角13番という位置からでしたが、1頭だけ最後に来ていますし、上がり33秒2とあるんですが、この馬は直線まではずっと内にある種閉じ込められたところから、ずっと斜めに走って外まで出していました。いとこのアーバンシックで並んで突っ込んでくるみたいな絵面ではあったんですけど、この33秒2にも無駄が多い33秒2ではあったなと思っていて、今回はやはり舞台設定、ペース的にこの馬の出番がなかっただけだと思います。この馬は逆に多分内枠も良くなかった側面はあるかなと思うんですが、能力的なものはやはり素晴らしいものは見せたなと思います。この結果5着という結果だけであまりネガティブに捉えないでほしいなというところは思いました。牝馬でダービーというのはそんなに簡単ではありませんし、この結果は本当に率直に素晴らしい結果だったなというふうに思います。

あとは3着のシンエンペラーですね。よくこの条件の中、若干ロンスパ勝負的なところになったところはあったとはいえ、よく追い込んできていたなというところ。ただやはり1コーナーのところの不利ですとか、そういったところの動きを見ると、もっと攻めていればもっと前に行けて、その着差が縮まったんじゃないのかなという思いはちょっとある結果だったなというふうに思いました。はい、一旦私の方からは以上です。

蒼:お二方からご意見・感想をいただきましたが、改めて何か補足などありましたらどうぞ。

ゆ:ジャスティンミラノはみんなが期待している競馬はできたのかなと思います。ただダノンデサイルは逃げてもいいぐらいの競馬をしていたわけで。皐月賞のゲート前の取りやめや、今回の逃げる覚悟も含めて、ある意味何も守るものがない横山武史騎手の怖さにやられた、その領域まで行かないと勝てない競馬だったのかなと思います。ただ、メイショウタバルがいなくなった時点でこの展開は非常に読めていただけに、シンエンペラーも含めて、もうちょっと攻めた競馬ができたのかなという気持ちは残りますね。戸崎圭太騎手の名誉のためということではないですが、下手には乗ってないと思います。ただ、こういう負け方は束縛になってしまうので、また殻を破るのはまた一つ大変になってしまったなと思いました。

蒼:はい、ありがとうございました。こひさんはどうでしょうか。

こ:そうですね。ジャスティンミラノは、うまく攻めて乗ったと思うんですけど、それが成功体験になっていないというところは、今後のことを考えると辛いところだなと思いますね。あと負けた組ですとシックスペンスとかは、やっぱりこういう時計の勝負があまり向かなかったのか、結構直線になるとあまりまっすぐ行けないような形もありまして、なかなか辛い競馬になっていて、この辺りが、やっぱりキャリアが薄くレース経験のなさがが出たのかなと思ったところですね。

改めて全体を見直してみても、やはりディープインパクト時代が終わりを告げて、ポジションが取れないと勝てない。そういったキャリアが求められるというところは今回の東京優駿のコーナー通過順やラップを見ていて、思わされるところですね。今回シンエンペラー東京優駿で3着ですからね。そういう血統でも、こういったところまで来れるというようなところも含めて、今後のクラシック戦線というところが、すごく面白くなるだろうなと思わされました。

第7回葵S

蒼:今日行われました葵Sの回顧をやっていきましょう。こちらの方ですが、こひさんからよろしくお願いします。

こ:葵Sの回顧入らせていただきます。だいぶ路線として定着してきたレースだなというような印象で、今年も前より短い距離でオープンの実績がある馬が揃ったメンバーになりました。その中でもフィリーズレビューの勝ちっぷりと桜花賞での健闘というところもありまして、エトヴプレが少し抜けた一番人気というような構図になっていたかと思います。

しかしレースの方は、モズメイメイが去年勝った時のリプレイかというような形になりまして、外の8枠17番からピューロマジックが好発を決めるというところからスタートしたレースでした。このピューロマジック横山和生騎手が一切躊躇なく内に持っていってハナを叩くというような形になりまして、後続もあまりの速さですんなりとこの逃げを容認せざるを得ないというような形で隊列が決まったレースだったかと思います。この時点である程度ピューロマジックの好走が固まった、そんなレースだったかなと思います。

一方人気のエトヴプレについては、前に行かせようという素振りがなく、馬なりに進めていくようなスタンスだったんですが、徐々にポジションが横から前に入られたりですとか悪くなっていくというような形になっていきまして、ちょっと中団待機から最内を進むというような、ちょっと事前では想像できなかったようなポジションになってしまったような印象です。この逃げたピューロマジックの刻んだラップは遅かったのかというと、決して遅いわけではなくて10秒6、10秒7という形ではあるんですが、そこからちょっとラスト3ハロンを33秒9でまとめられてしまうと、もう後続はなす術がない、そういったレースかなと思います。

結果的には完全な行った行ったの競馬になったかと思います。今回勝ったピューロマジックですが、毎度ロケットスタート気味にスタートを決めていく感じで、ちょっと低い体勢からゲートを飛び出る形のスタート巧者です。前走はちょっと馬場が重たかったこともあったので、いい形で行きながらも最後止まった形でしたが、今日の京都でしたら最後まで全く止まらないという形でした。ただ恵まれたというよりは一定力を示した感触だったのかなというふうにも思います。特に騎手が毎度毎度変わっているんですが、誰が乗ってもスタートが速いというのがこの馬の強みかなと思います。こういった形の時計が速い馬場だと良さが出るタイプだと思います。こういったスタートでアドバンテージが取れる逃げ馬というのは、今後も短距離路線の存在感を示すかなと。

2着のペアポルックス、3着のナナオはそれぞれにポジションを取っていきました。今の力は出し切ったんじゃないかなと思いますが、それではちょっと前の差は詰まらなかったというようなレースでした。人気になったところで言いますと、エトヴプレは上がり33秒6、ナムラアトムが上がり33秒4の脚を使ってはいるんですけれど、ちょっとこの展開であれば差し届くわけもなく、出番がなかった印象のレースでした。見た目は行った行ったの形になってしまいましたが、時計的なところを見ていても一旦レース全体の質は一定の評価ができるのかなというような風にも見えています。3歳世代のスプリンターがちょっと夏からこの路線は古馬相手になっていきますが、そういったところは相手でも斤量の差が大きいうちはいいところがあるんじゃないのかなと思いました。

同人誌通販のお知らせ

C103「ディープインパクト 後世に遺したゲート」

#C103 にて頒布した同人誌。テーマは「種牡馬ディープインパクト」。 英雄が未来に遺し紡いだ莫大な功績をさまざまな視点から振り返り考察します。A5/44P/500円

C102「福永祐一 あんそろじー」

#C102 にて頒布した同人誌。テーマは「騎手・福永祐一」。公式本と読み比べていただけると、より楽しめる一冊に仕上がっております。A5/32P/500円

C101「ウマ娘読本Make debut!」

#C101 にて頒布した同人誌。蒼山サグと多彩な執筆陣でお届けするウマ娘合同誌です。2022年末時点のアプリ登場ウマ娘完全網羅の史実年表や4コマ漫画など。B5/34P/500円


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?