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鮮烈なスタートと成功体験が連覇を引き寄せた!坂井瑠星とレモンポップの出会いと未来を語り尽くそう(第25回チャンピオンズカップ・第58回ステイヤーズS・第75回チャレンジカップ回顧)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.12.01 16:30~からの文字起こしです。

Photo by karasi_gj

第25回チャンピオンズカップ

こひ:
昨日の展望で、「これでも勝ち切ったら坂井瑠星ジョッキーに土下座」と言っていましたが、2年連続の土下座となりました。しかし、すがすがしい土下座といった感じのレースで、良いレースを見せてもらったなという感動もありました。昨日の展望でも序盤の隊列、ハナ争いがキーポイント、坂井瑠星藤岡佑介の選択がカギになるのではという話をしましたが、序盤から見ごたえのある攻防でしたね。

スタートを完璧に切ったレモンポップが逃げる意思を見せて、それを見ながら先行する藤岡佑介、ここで外からミトノオーまでは皆の予想通りだったと思いますが、ここで外から来たミトノオーに対して、割とあっさりと藤岡佑介ジョッキーは前を譲る形になりました。そのままミトノオーがハナまで叩き切るかと思いましたが、インのレモンポップが少し内にスペースを作りながら、絶対に行き切ることはさせないという意思が伝わる動きを見せました。少しミトノオーの方が前に出るタイミングもあったのですが、そこで争うのは難しいと判断せざるを得なかったのか、ミトノオー松山ジョッキーは番手に控える形。そしてその外にペプチドナイルで態勢が固まりました。

ここまでの攻防については、去年のチャンピオンズCよりもラップ的にはかなり流れており、楽ではないペースでしたが、枠順の利も活かしてレースを支配したレモンポップと坂井瑠星ジョッキー。お見事でした。この後、ちゃんとペースを一時的に12.6と落とせて、見た目にも馬群が凝縮。ここもポイントで、3-4コーナーで動くと末脚が甘くなる中京コースで馬群を凝縮させたので、外目の位置取りをしていた馬、サンライズジパングであったり、ガイアフォースあたりは苦しくなりましたね。そんな中、ウィルソンテソーロは内から2列目のポジションでロスを最低限に。前がペイシャエスでしたが、4コーナーでうまく馬群がばらけた際にサンライズジパングの後ろが通れるように。このコースにしてはあまりロスのない競馬で末脚を全開にできる状況に持ち込んでいたのは、さすがの川田ジョッキーでした。直線ではまずレモンポップが後続を引き離し、追いすがるペプチドナイルが力尽きます。内からハギノアレグリアス、最内を通してきたドゥラエレーデが迫り、外に出せたウィルソンテソーロが強襲。それでもレモンポップは止まりません。結果的に去年よりコンマ5秒早い時計での逃げ切り。国内のダートではほぼ完璧な戦績でのフィナーレとなりました。

やはり、この勝利を得られたというのは、先ほどのレースの振り返りでも触れましたが、明確に意思を見せて行き切ったことが一つ勝因だと思います。その後、ミトノオーが引いて番手のポジションに収まったことで、少しペースを緩めることができました。秋のマイルチャンピオンシップ南部杯などと比べても、今回の馬のパフォーマンスはさらに上がっていたように見えました。馬自身の仕上がりが非常に大きなポイントだったと感じます。結果的にミトノオーが2番手につけたおかげで、他の有力馬がポジション取りに苦労するという側面もあったかと思います。

どんなレースであれ、きちんとスタートを決めて先手を取れる点の速さや、ミトノオーが引いたらペースを緩める操縦性、コントロール性の高さなど、これは陣営や坂井瑠星騎手がしっかり乗ってきた中で築き上げてきたものだと思います。本当に負けない馬というのは、どこで負けるのか、どういう負け方をするのかが難しいというところがありますが、この馬については、2年前にユニコーンステークスギルデッドミラーに負けて以来、国内で一度も負けることなく、さまざまな引き出しを作って強くなってきた点は、本当にすごい能力の持ち主だと改めて感じさせられる勝負でした。坂井瑠星騎手のこの勝利は、自身のG1レースの中でも特別なものだったと思いますし、昨日の展望のときに、「こういうところで突き抜けてほしい」というゆたさんのコメントもありましたが、そのようなレースだったのではないかと思います。

負け組でいいますと、2着のウィルソンテソーロですね。この馬も、今回は正直完璧に乗り、与えられた枠順の中でできることをやりました。大きな不利もなく、能力も出し切ったところで、たまたまもう1頭強い馬がいたと思うしかないレースだったかなと思います。この馬はまだ5歳で、今年より一層パフォーマンスを上げていますので、来年の国内路線では中心になってくるのはこの馬だろうと考えています。一番驚いたのが3着のドゥラエレーデですね。この馬は、どちらかというと揉まれないポジションをとって自分のペースで走るタイプで、去年はこの馬がレモンポップの番手に行き、ミトノオー的な感じで後続をブロックした側面もあったという記憶があります。しかし、今回は最内を通り、砂をかぶりながら揉まれ続ける展開で、ほとんどスペースも少なかった最内を突っ込んで伸びてくるという、想定を遥かに凌駕するようなレースでした。このようなことをやり遂げられるライアン・ムーア騎手はすごいなと改めて感じさせられるレースでした。

あとはハギノアレグリアスですね。4着でした。この馬については、昨日の展望でかなり期待していると話しました。期待通りに乗ってくれましたが、若干前をさばくところで苦しんだ部分もあり、前の2頭と比べると力の差はあったのかなという印象です。ただ、今後1.9が抜けてくるような舞台設定になると、この馬が繰り上がりでタイトルをつかめるチャンスはあるのではないでしょうか。あとはペプチドナイルについてですが、先ほども触れましたが、あそこで引かずに自ら番手でレモンポップにプレッシャーをかけていく展開にすれば何かがあったかもしれません。ただ、それができなかった、あるいは行き切るという選択ができなかった時点で、今日は仕方がなかったのかなと思います。

6着のサンライズジパングですが、先ほども触れましたように、外目のポジショニングが難しかったです。この馬では、有力馬の中で枠順的に苦しいところを引いてしまったという印象があります。印象的な末脚を見せたのは、アーテルアストレアですね。昨日の展望でも触れましたが、中京コースの後者らしい素晴らしい脚を披露していました。しかし、ポジションが想定よりもはるかに後ろに下がってしまい、当時は頭を抱えていました。16、16、15、15の通過順で36秒3の脚を使うという面白いレースを展開していました。もう少し良いポジションを取ってくれたらと思いました。以上で、一旦終わります。

蒼山サグ:
ありがとうございました。では、有田さんからコメントございますでしょうか。

くらみゆた:
そうですね。やはり今日のこの勝利というのは、本当に去年勝ったことで引き寄せられた勝利だったのかなと、改めてレースを見直して思いました。先ほど、こひさんからも話がありましたが、今年のガイアフォースは本当にスタートからずっと内に入るタイミングがなく、掛かり気味の追走になってしまい、残念な結果となりました。去年のレモンポップも、一歩間違えばこうなってもおかしくなかったと思います。去年もし大外から2着とかで負けていたとすると、今年たとえ1枠2番を引けたとしても、ミトノオーなどがいる中で、逃げて勝つイメージがどこまで坂井瑠星に湧いたかというと微妙だったと思います。ですから、今年は多少前でやり合いが起こるかもしれないけれども、自分の競馬に徹すれば勝てるという思いで、馬を信じて内枠のアドバンテージを生かす競馬を徹底できたことには、本当に去年の経験が生きているのかなと思います。

レースを改めて見ると、ミトノオーが本当に壁役のような形で後ろを牽制してくれました。外からレモンポップに競りかけるのは厳しかったと思いますし、逆にペプチドナイルがもっと前に押し出てハナを取りに行くような競馬をしていたら、ウィルソンテソーロに最後差されていた可能性も高かったと思います。このように、レモンポップがスタートを決めてきっちり先行できれば勝ち筋があると信じられる経験は本当に大きいものだと思いました。逆にペプチドナイルにとっては、たぶん勝ち筋はハナを叩く勢いで行くしかなかったと思います。そういう意味で、前走もきちっとペプチドナイルに前を出させなかったことが大きかったのかなと感じます。

やっぱり大きな舞台、いろいろ矢作厩舎で経験してると思うんですけれども、 経験値いくら貯めてもやっぱり勝つことでしかレベルは上がらないっていうのは本当にいろんなスポーツでもあることかなと思いますの。そういう意味でもレモンポップとの出会いっていうのは坂井瑠積賞一段上に押し上げたと思います。 去年のフェブラリーステークス勝てたのも、根岸ステークスの時に安かったスタートが改善できたっていうところもあったと思いますので、 本当にこのレモンポップと坂井瑠星騎手のゲートのこのスタートの息の合い方っていうのに、このコンビの素晴らしさが詰まっていると思います。坂井瑠星騎手は今年三着続きのレースが国際G1で続きましたが、来年は勝ってさらに上のレベルを目指してほしいですね。本当に坂井瑠星騎手にはレモンポップという馬との出会いがあって良かったと思います。この出会いについて、いつかいろいろ語られることがあると良いですね。

蒼山サグ:
はい、ありがとうございました。お二方からコメントを頂きましたが、最後に何か付け足しなどありますでしょうか。

こひ:
この後に引退式があるというのが、まずはダート馬で中央のG1を走ってそのまま引退式があるというケースは過去にありませんでした。中央にはダートのG1が2つしかない状態で、そういう引退式を開いて誰もが当たり前だと思えるような実績を重ねた馬がいて、その馬が最後、ハナ差で勝って引退式を迎えられるというのは本当にすごいことですね。中央のダートG1といえば、フェブラリーステークスチャンピオンズカップで、何度かこの展望や回顧でも触れていましたが、求められる適性は全く異なる2つだと思います。だからこそ、この2つのG1を両方勝つことは非常に大きな価値があるものと個人的には思っています。昨日も触れましたが、この馬、ベストはどちらかというと東京や盛岡の1600mのタイプだと思います。しかし、その馬が2度違う枠順で、この中京ダート1800mという非常に紛れもある難しい舞台設定を勝ち切ったことは本当にこの馬がなかなか出ないレベルの名馬だと思います。今のダート種牡馬はナダル一色になっていますが、多くの牝馬を集めて、ナダルに負けない馬格とお尻を含めたボリューム感がある馬として、活躍を期待したいなと思います。

くらみゆた:
ケツデカから伝わるスピードといえば、ナダルの種付け料が1000万というところで、芝での活躍の可能性も含めて値段なんじゃないかという話を冬コミの同人誌の記事で語りました。レモンポップも芝馬を出してもおかしくないくらいの大器だと思いますので、活躍期待したいですね。

こひ:
この馬とパレスマリスで、ゴドルフィンのダーレーのスタリオンも来年かなり忙しくなるでしょうね。社台スタリオンにちょっとでも対抗できるような形で、種付けの数が集まるようなスタリオンが揃ってくると、日高方面も熱くなるでしょうし、ノーザンや社台も繁殖牝馬を何頭か連れて行くでしょうから、どういう馬が連れて行くのか楽しみにしていますね。ちょっとギルデッドミラーに1回付けてほしいなということだけ触れておきます。

第58回ステイヤーズS

こひ:
冬の中山の名物、芝3600m戦。すっかりこのレースに特化した馬たちが集う路線になってきました。今年は、なんと1番人気が3勝クラスからの格上挑戦となるゴールデンスナップゴールドシップ産駒という点も影響したと思いますが、意外な結果です。順調な臨戦過程ではないものの、昨年の覇者アイアンバローズに、長距離重賞馬ミクソロジー、京都大賞典勝ちのシュヴァリエローズと、まずまずのメンバーが揃ったと思います。

スタートではダンディズムサンライズソレイユがやや遅れる形になりました。しかし、最内を活かしてダンディズムはインの中団に収まりました。アイアンバローズが今年も先手を取り、ミクソロジーフルールと続き、その後ろにシュヴァリエローズ、インからダンディズムという隊列で固まりました。ゴールデンスナップはその後ろに位置しました。レースのペースは微妙に上下しましたが、隊列に大きな動きはなく淡々と流れていきました。前年は2周目で後続を引き離していたアイアンバローズですが、今年は後続を離せず、常にプレッシャーのかかる形で進みました。それでも前年同様、残り1200mからペースを上げていく強気の競馬をしましたが、万全ではなかったのか直線で失速しました。そこで、外から良い手応えで上がってきたシュヴァリエローズが抜け出しましたが、なんと外から迫ってきたのが中団から外に出して追い込んできた人気薄のシルブロン。最後は鼻面を並べたところがゴールでしたが、2cmだけシュヴァリエローズが残していました。

勝ったシュヴァリエローズは、今年、中距離から長距離に伸ばしてからの活躍が本当に目覚ましいですね。3600mに距離が伸びても道中は動かず、じっと折り合い、外に出して自ら動いて勝ち切ったのは見事ですし、来年の春の天皇賞にも長距離路線から来る馬の対象格として臨めるのではないかと考えています。2着のシルブロンは驚きましたね、オープンになってからやや壁に当たっている感じでしたが、今回は鞍上マーカンジョッキーが豪快に外から動かしてきたこともあり、これまでに見られない末脚が見られました。これがきっかけとなる可能性もあるでしょう。3着のダンディズムはロスなくインで運びましたが、直線で外に持って行かず、やや窮屈な形になりました。3600mの消耗戦では、伸び伸びと末脚が使える進路が欲しかったですね。とはいえ、この馬も長距離路線に可能性が開けたと思います。4着のゴールデンスナップは、現状では外枠だとこのくらいなのかなと感じました。目立ったのは6着の2勝クラスから格上げ挑戦のサンライズソレイユ。ダートの長めの距離で頭角を現した馬を、少し壁に当たったら柔軟に芝に持ってきて適条件を模索する、さすがの矢作調教師ですね。

第75回チャレンジカップ

くらみゆた:
やたらと多くのグラスワンダー系が出走した今年のチャレンジカップ。少し広げてみても、アウスヴァールの父ノヴェリスト以外は、全てサンデーサイレンス系とロベルト系という、特徴的な血統の並びとなったレースになりました。

レースはマキシが躓いたようなスタート、バビットが内から先行するところを、手綱をしごいてアウスヴァールがハナを主張する形。速い流れで向こう正面に入ると、更に外からルペルカーリアが捲るようにポジションを上げ、息の入らない流れに。前半の400-1000mが11.7-12.0-11.7と、先行集団には厳しい展開となりました。3コーナーから4コーナーにかけて、外から休み明けのボルドグフーシュが早めに上がる形で、更に激流に。直線に入ると道中、馬群の中でスムーズに追走していたラヴェルが一気に抜け出し、セーフティリード。最後はディープモンスターと、道中死んだふりをしていたエアファンディタが3着に入りました。

勝ったラヴェルは、川田騎手が前走の走りを受け、この馬の良さをしっかりと引き出しました。スタート直後はストレスのない少し外目を数歩走らせ、馬群が広がったところで内に誘導。飛ばす先行集団の5馬身ほど後ろでしっかりと走る形を作ると、激流が少し落ち着いた残り800mからじわじわと加速。前を走るダノンエアズロックの手応えが悪くなる前に促して進路を確保し、あとは独壇場でした。完全に前走の走りできっかけを掴んだ形で、来年の活躍が楽しみになった走りだったと思います。

2着のディープモンスターと3着のエアファンディタは、速いペースをやり過ごした騎手の判断が良かったですね。特に、そこそこの上がりを使える追い込み馬に乗った京都で武豊が13番人気。私も取れていませんでしたが、これは複勝を買っておかないといけない条件でしたね。負けた組ではボルドグフーシュ。強気に動いて最後は息切れしましたが、1年半の休み明けで流石の走り。脚元さえ持てば、十分復活もある走りだったのではないでしょうか。

こひ:
勝ったラヴェルは本当に前走から今回にかけて、一皮むけたような競馬をしているなと感じました。川田将雅騎手もレース後のコメントで触れていましたが、アルテミスステークスリバティアイランドを負かした馬を、川田騎手が乗ってさらに華開かせるというのは、とても面白いなと。改めてこのラヴェルの母でもあり、ナミュールの母でもあるサンブルエミューズについても名牝だなと。キョウエイマーチから続く本当に素晴らしい血統だと改めて感じました。

またボルドグフーシュも非常に久しぶりの出走でしたしが、5着に入ったセイウンハーデス。この馬も七夕賞から1年以上の休み明けでも一定のポテンシャルを発揮できるのが、今の時代の競馬を象徴していると思いました。

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