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モレイラ包囲網が炸裂!日本人騎手の技術向上を見せつけた展開が津村騎手の初G1をアシスト(第19回ヴィクトリアマイル・第69回京王杯スプリングカップ)

この記事は、競馬評論サークル芯力のスペース2024.05.11 21:00~からの文字起こしです。


第19回ヴィクトリアマイル

蒼山サグ(以下、蒼):それではヴィクトリアマイルの回顧を始めたいと思います。まずは、ゆたさんからよろしくお願いいたします。

くらみゆた(以下、ゆ):2強対決が2強で決まらないというのは、昔からよく言われる話なのですが、終わってみたら共倒れ、まさかの14番人気のテンハッピーローズの勝利ということで、牝馬G1でたまにある大穴が久々に炸裂したような結果になりました。

レースを振り返りますと、ゲートでは少しごたごたしていて、スタートしてみると、ナミュールは少し出遅れてしまうという形になってしまいました。最近は出遅れもマシになっていたというところはあったのですが、やはりドバイ帰りというところで、精神的なキツいところがあったのかなという気がしています。今日はこの後もあまりレースに参加できずというような形になってしまいましたので、やはりローテーション的に厳しいところがあったのかなと。

そんな中で、スタニングローズが馬なりに先頭に上がっていきそうな気配だったのですが、コンクシェルが追って追ってハナに立つという形になりました。スタニングローズもあまりハナには立ちたくないという雰囲気だったので、コンクシェルがハナに立つのを待ちました。コンクシェルはかなり頑張って前に行った形になります。結果的にスピードメーターを見ると、瞬間的には時速70キロぐらいまで上がるといったところで、その結果、馬群はやや縦長になっています。ただ、今日に関して言うと、前半の3ハロンは33秒8という数字になっていましたが、向正面は追い風ということもありましたので、数字ほどにはスタミナを取られるような流れではなかったのではないかと思っています。

3,4コーナーで少し息が入る形になり、残りの800mから再加速する形となりました。そこから11秒4、11秒6、11秒7、11秒7と最後の4ハロンが11秒台が続く流れでしたので、バテバテのスタミナ勝負というよりは、ある程度前半が流れた中で、後半に長く末脚を使わせられる展開になりました。昨日も少し話したとおり、1400mの適性が強く問われるレースになったのかなと思っております。ワンターンの直線の長い東京のマイルであるような、前半ゆったり走ってコーナーを回って最後の末脚勝負というよりは、じわじわスピードが上がっていくようなレースになりました。

直線に入ると、好位につけていたフィアスプライドを持ったままの手応えでこの直線先頭に立ちました。一方で、促しながらの追走だったマスクトディーヴァサウンドビバーチェドゥアイズの間を狙いにいきますが、ドゥアイズがしっかり締めたので進路がなくなるような形。そうこうしているうちに、外から一気に伸びてきたのがテンハッピーローズですね。一気にフィアスプライドを捉えると、半馬身くらい一瞬で抜けて、最後は1馬身と1/4をつけてのゴールという形になりました。2着には粘ったフィアスプライド、3着に進路を最後うまくとって伸びてきたマスクトディーヴァが入ったという形になっています。

勝ったテンハッピーローズ。スタートからしばらくマスクトディーヴァの後ろにつけて、じっくり脚を溜めることができました。あまりペースに付き合いすぎなかったというのが良かったと思います。更に素晴らしかったのが3コーナーから4コーナーのところですね。手応え的には、おそらく早めに動きたくなるようなところだったと思うんですけれども、コーナーを丁寧に回って、マスクトディーヴァがちょっと下がっていたところをしっかり締めて回ったというのは非常に良かったと思います。これによってマスクトディーヴァが早めに外に進路を取るという選択肢がなくなりましたので、ファインプレーでした。直線は外に出ると一気の末脚炸裂というところで、本当に今日のレースのペースにハマるところを見せつけた形になったと思います。

津村騎手のG1初勝利は嬉しいですね。よく言われる話ですけれども、トップオブトップの川田騎手と同じ競馬学校20期の中で一番上手いと言われ続けていた男がここでG1勝利。インタビューも泣かせる内容でした。津村騎手には先日出資馬に乗ってもらって結果出てなかったんですけど、そんなことがあっても初G1を勝ったインタビューを見るのは良いものだなというふうに思いましたね。津村騎手は38歳ですか。ここから一皮むけてG1をもっと勝っていっても不思議ではない騎手だと思いますので、今後に期待したいと思います。

フィアスプライドは4コーナーでルメール騎手がフィールシンパシーの後ろから進路をしっかりと確保。内容的には勝ちに等しいと言ったら言い過ぎかもしれませんが、勝ってもおかしくない内容だったと思います。ちょっと今日は早めに先頭に立ちすぎたところの綾と、勝ち馬の適性がばっちりこのペースにはまったというところで、ちょっと遅れをとってしまったのかなと思いました。

3着のマスクトディーヴァ。これがなかなか今日は語るところが多いですね。道中のペースがちょっと早い流れに適応しきれてないような感じの追走だったんですけれども、最後の末脚を見れば普通に乗れていれば勝っていたというような内容だったかと思います。ただ今日は本当にスタートから最後までもう日本人騎手の包囲網がやばかったとしか言いようがない感じで。まずスタート直後からサウンドビバーチェが外から締めていくんですけども、ここで内からは川田将雅騎手が出てきました。そのウンブライルがもう絶対にモレイラ騎手に内ラチ沿いなんて取らせないぞというような構えを取ったんですよね。パトロールビデオを見ているとモレイラ騎手がチラチラ後ろを見ているんですけど、最終的には諦めるみたいな感じで(笑)。わかりやすいので本当にぜひ見てほしいと思います。川田騎手からはよっぽどヤバいオーラが出ていたということでしょう。勝ったのが同期の津村明秀騎手ですから、netkeibaの川田騎手のコラムでファンサ溢れるコメントが見られるんじゃないかなと思います。

道中ちょっとペースに対応しきれずに、ポジションが下がっていった後に関して言うと、テンハッピーローズの斜め後ろからびっしり締めていたというところもありますし、なんといっても今日の裏MVP、ドゥアイズの鮫島克駿騎手ですね。もう道中、特に後半はもう絶対にモレイラ騎手を外に出させないマンになっていました。特に最後の直線ですね。またウンブライルの川田騎手が左ムチでモレイラ騎手を外に追いやった時に、サウンドビバーチェの外が一瞬開いたように見えてそこをモレイラ騎手が狙っていくんですけども。そこをドゥアイズの鮫島克駿騎手がもうバッチリブロック。何度かこじ開けようとしている気配もあるんですけども、もう絶対に開けないぞという形で、最後はモレイラ騎手のマスクトディーヴァはもう内を突くしかないような形になりました。(結果的にモレイラ騎手には十分な間隔がないところを突いたということで戒告)

昨日のレースでは、モレイラ騎手が短期免許のために是が非でも勝ちたいだろうと思われましたが、ナミュールが最初から勝負にならなかったことで、一番人気馬を日本人騎手が完全に包囲網を敷く形に。絶対にモレイラ騎手にラクな競馬をさせまいという意思の強さが上回った結果になったと思われます。特に津村騎手は、鮫島克駿騎手を祝勝会にに呼んであげないといけないですね(笑)。逆に言うと、鮫島克駿騎手もG1がなかなか近いようで遠い状況ですが、こういう競馬ができるなら、いつか恩返ししてもらえるのではないでしょうか。

ルール内での真剣勝負するのが前提ですが、こういうバチバチのレースは評価されてほしいと思います。またモレイラ騎手のいいようにされずに、各騎手がこういう包囲網を敷けたというのは、ある意味日本人騎手の技術向上が生んだ結果と思えますね。20年前だったら、外国人騎手、それこそペリエ騎手が来ると、馬群がすっかすかで、どこでも通ってくださいみたいな競馬しか日本人にはできなかったわけですから、そこから約20年かけて日本人騎手もここまでやれるようになったんだなと。そういうレースで、川田将雅騎手と同期の津村騎手が、競馬学校20期の中で一番うまいと言われてきた騎手がヴィクトリアマイルを制するというのが、なかなか象徴的な話で、非常に面白い結果に終わったのではないでしょうか。以上が、レースとしての総括になります。

蒼:ありがとうございました。続きまして、こひさんの方からもぜひよろしくお願いいたします。

こひ(以下、こ):ゆたさんからコメントがありましたが、直線に至るまでの競馬がめちゃくちゃ面白かったですね。個人的にはマスクトディーヴァの単勝を買っていたので、馬券は外れてしまいましたが、普通にめちゃくちゃ面白い競馬を見せてもらったという満足感の方が上回る形でした。

やはり、最初はサウンドビバーチェからスタートしまして、松山弘平騎手、鮫島克駿騎手、津村明秀騎手がそれぞれライバル馬をマークしながら、自分の馬の能力を発揮させようとしていく丁寧な競馬を見せてくれました。特にモレイラ騎手をブロックしただけではなく、4着に入ったドゥアイズも自分の能力を発揮できた競馬だったと思います。また、テンハッピーローズについては最高の結果になりました。ただ単に締めて妨害したわけではなく、自分の馬を少しでも上の着順にするために、そういった動きをとっていたというところが、今回たまたま綺麗につながった結果だったので、非常に興味深い内容でした。それぞれの騎手にとっても収穫のあるレースだったのではないでしょうか。

テンハッピーローズの津村騎手が初のG1勝利という点に関して言えば、阪神ジュベナイルフィリーズのサンブルエミューズのことを思い出しました。当時、サンブルエミューズは2番人気で阪神ジュベナイルフィリーズに出走しましたが、直前まで騎手が見当たらない状況だったんですよね。そこで津村騎手が自ら候補に名乗り出て騎乗したものの、結果は惨敗に終わったと。そして今回、サンブルエミューズの産駒であるナミュールが人気していたレースで、津村騎手が初のG1勝利を挙げたということに、競馬の歴史、積み上げの面白さを目の当たりにした気がしました。

大舞台に向けて鞍上の手配が難航したものの、ここで新婚ほやほやの津村が一念発起して師に直訴。「勝てるのか?」という問いかけに、「大丈夫です。殴られてもいいから乗せてほしい」と気合満点の回答でコンビ結成が決まった。「逃げても強い勝ち方をしているけど、最大の武器は切れ味。決めつけずに乗りますよ」と、津村は馬との呼吸を合わせることに専念する。デビュー9年目で迎えた最大のチャンス。伴侶を得てひと回り成長した津村が、男を上げるときがきた。

https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=70584

(くらみゆた追記:新婚ホヤホヤでG1挑戦がふがいない競馬に終わった津村騎手。今日のG1勝利で家族への感謝の言葉を述べていたのも印象深いというか、家族はサッカー見に行っているという良いオチがついていたというか)

最近の津村騎手は、ノーザンファーム系の癖のある馬で出番が増えてきたところもあり、代打起用的な騎乗でも、要求に応えられる騎手になったと感じます。今回のG1勝利で、さらにバックアップが盛り上がり、騎手としての価値を高めていくことができると思いますので、これからの津村騎手の活躍が非常に楽しみです。

一方、モレイラ騎手について。今回のレースでモレイラ騎手がG1勝利の条件を満たすと思っていましたが、残念ながら敗れてしまいました。オークス週の来週はモレイラ騎手は、ブラジルに一時帰国するそうです。日本ダービーではダノンエアズロック、安田記念ではソウルラッシュに騎乗予定とのこと。この2頭でG1勝利の条件を満たせるかどうか、引き続き注目していきたいと思います。以上です。

蒼:はい、ありがとうございました。最後に何かありますか?

ゆ:モレイラ騎手、ダノンエアズロックは、どんな手を使っても勝ってほしいものですね(笑)。あとテンハッピーローズは、社台ファーム生産馬なんですよね。マスクトディーヴァ、出資者には残念でしたが、吉田照哉氏にとってはどちらにせよ嬉しい結果だったかもしれませんね。

こ:なかやまきんに君とパワーポーズ決めてましたね(笑)

第69回京王杯スプリングカップ

こ:京王杯スプリングカップの回顧をさせていただきます。近年は安田記念のトライアルというよりは、どちらかというと1400mのG2レースとしまして、マイル以下の短距離志向の馬が集うレースになっているかと思います。今年のメンバーを見ていても、安田記念に向かいそうな可能性があるのはレッドモンレーヴぐらいというような構成だったかと思います。

レースに入りますと、スタートからメイショウチタンが行きまして、2番手に3連勝中の上がり馬のリュミエールノワル、その後ろにトウシンマカオというような体勢になりました。大外からのスタートになりましたウインマーベルも、徐々にポジションを上げていくような形になります。結構有力馬が前に行ったところもありまして、序盤からペースがあまり緩まずというような形になりまして、2ハロン目の11秒1から11秒0、11秒0というようなラップになっていきました。

昨年覇者のレッドモンレーヴは、最後方から自分の競馬というような形で直線に入っていきます。直線に入りますと、外から抜群の手応えで、道中4頭目とかなり外を回していたウインマーベルが進出していきまして、いつ抜け出そうかというような形でした。ただ、残り400mからレッドモンレーヴが追い出されますと、かなりびっくりするような末脚で瞬く間にウインマーベルが抜け出そうとしていたところを捉えるというような形になりました。しかし、そこからウインマーベルがかなり粘り腰を見せまして、またレッドモンレーヴの方がちょっと速く斬れすぎたころもあってか、内からハナだけウインマーベルが差し返したというところがゴールというようなレースになりました。2着のレッドモンレーヴの上がりが32秒2というところで、そこそこ流れながらも上がりのタイムも早いというような形で、今の東京の馬場の良さというところも伺えるようなレースだったかなと思います。

勝ちましたウインマーベル。短距離路線の際にいつも触れていますが、いわゆる何か恵まれればいつG1に手が届いてもおかしくないというような、そういったポジションの馬でございまして、今回も得意の舞台でしたので、昨年の雪辱を果たすというような形になりました。この馬に乗っている時の松山弘平は非常に安心感があるなというところも、改めて思わされたところです。

2着のレッドモンレーヴ。この馬も驚異的な上がり32秒2、これが東京の芝1400としては史上最速上がりだというような話も出ていましたが、そういった形でも最後差し返されるような形で一踏ん張りできずと見えてしまうというところで、競馬の難しさというところがあったかなと思います。ただ、ここにちょっと不振で中山の1800mを使ったりですとか、いろいろ悩んでいたところもあったんですが、得意舞台に戻って自分の競馬をして、改めて良さというものが戻ったなというような印象です。安田記念でも完全な瞬発力勝負みたいな展開であれば、出番があっても驚けないかなとは思いました。今日はこの2頭、東京競馬場の馬場状態やラップを踏まえますと、どちらも外外を回す形でありながら後続に対して決定的な差をつけたというところは、今日のところは完全に抜けたパフォーマンスだったのかなと思います。

3着に入ってきましたのがスズハローム。この馬は、オープン上がりから良い競馬を見せたなと思います。このまま比較的外を回すような形になりまして、早めに仕掛けられながらも最後まで止まらずによく伸びていましたし、このメンバー相手にオープン級でやっていける形のめどがしっかり立ったレースだったかなと思います。あとは4着のダノンスコーピオンですね。ここ1年以上、さっぱりな競馬が続いていましたが、福永厩舎への転厩初戦で、久しぶりに良い脚が使えるというようなレースだったと思います。厩舎力に背景に今後のパフォーマンスをどう見せていくのかというところに、非常に期待したいなと思わされました。あとは人気どころで言いますと、6着のトウシンマカオですね。若干東京の舞台設定があっていなかったなというような印象でした。

全体的にラップや走破時計を見ても、全馬が力を出し切った印象で、安田記念につながるかどうかはさておきとして、このレース単体としては、いい見応えのあるレースだったのではないかなという印象でした。以上です。

蒼:はい、ありがとうございました。では、ゆたさんの方から補足などございますでしょうか。

ゆ:SNSでMahmoudさんがラップ分析で話していたんですけど、ウインマーベルレッドモンレーヴ、本当に対照的な脚の使い方でしたね。特に今日に府中は追い風だった中でも、レッドモンレーヴは最後止まってしまったわけで、一瞬しか脚を使えない馬の難しさを感じました。

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