新星誕生もクラシック本番には課題あり?クラシック前哨戦と序列の見えたスプリント路線の振り返り(第61回弥生賞・第31回チューリップ賞・第19回オーシャンS回顧)
第61回弥生賞ディープインパクト記念
蒼山サグ(以下、蒼):日曜中山第11Rの報知杯弥生賞ディープインパクト記念の回顧に移っていきたいと思います。
くらみゆた(以下、ゆ):シンエンペラーを物差しに、春のクラシックを占う一戦となったと思います。結果を見ると、シンエンペラーは能力通り走ったものの、個人的に期待していて、単勝勝負もしていたダノンエアズロックが沈むと、そしてミルコの奇襲のような捲りが決まるということで、共同通信杯に続いて、牡馬クラシックは非常に評価しづらいレースだったと思います。
レースを振り返りますと、外からシリウスコルトが引っ張る流れをシュバルツクーゲルが内から追走、外からダノンエアズロックで、内にシンエンペラー、その後ろにトロヴァトーレという形で、人気馬が固まる形になりました。ダノンエアズロックも、見た目上そこまでかかっているような印象がなく、向こう正面に入ったところも少しペースが緩むぐらいだったんですが、徐々にペースが上がるという形。どちらかというと追走能力が問われる展開になったと思います。その中で、さらに残り800から、ミルコデムーロ騎手のコスモキュランダがまくるという形になりまして、直線は我慢比べというところ。シンエンペラーがしぶとく伸びる2着まで、まさかの人気馬全部沈んで、コスモキュランダがそのまま押し切っての勝利という形になりました。
勝ったコスモキュランダ は比較的早い流れを、これをさらにまくっての勝利というところで、個人的には加用正厩舎の最終日にランニングゲイルみたいな競馬で弥生賞が決まったなと、ちょっと昔を思い出した感じでした。タイムやレースぶり自体はもちろん見事なもので、評価しなければいけないと思いますが、やはりちょっと出し抜け感はあったところがありますので、皐月賞本番で同じ競馬ができるかというところに関しては未知数だと思います。上がり勝負にもならなかったので、ダービーでというわけにもいかないと思いますが、去年に引き続き牡馬路線があまりレベルが高くない気がするので、ダービー自体の適性が過去ディープインパクト産駒がいたときよりもズレる可能性はあると思いますので、そうなった場合はヒモで買ってもいいのかなと思いました。
あとは2着のシンエンペラーですね。今日の流れは結構向いたと思いますが、それでも4コーナー手前から手が動いている感じで、相変わらずズブいレースぶりでした。最後まだしっかり止まらずに伸びてはいるのですが、やはりこの競馬だとG1ではどうしても不利、あるいはうまく走れないというパターンがあり得るのかなと思います。川田騎手というところもありますので、このまま人気するとなると、ちょっと本番では個人的には買いづらいかなと思います。海外でこその馬かなと思いますので、個人的には矢作厩舎の夢を追って、藤田オーナー海外挑戦してほしいかなと思います。3着のシリウスコルト。こちらは、正直言って人気馬が走らなかったのが大きかったのと、馬場が向いたのかな、というところで、あまりこの後のイメージは生まれない感じでした。
負け組では最初に話したんですけれども、期待していたダノンエアズロック。私個人的には、今年ミスタージーティーもダノンエアズロックもボンドガールも大きな所出れなそうというところで、POG的にはだいぶ尻すぼみなクラシック戦線の予定なんですけれども(苦笑)。それはさておき、ペースとか馬場を考えても、負けすぎかな、というふうには思いますね。レース後のコメントを見てみないとわからないんですけれども、DDSP持ちとというところで、その辺の影響もしくは、そこも含めて太かったのが影響したのかというところではありました。レガレイラを基準にしたらダノンエアズロック圧勝してもおかしくないかな、ぐらいの気持ちで見ていたので、ちょっとしょんぼりなんですけど、モーリス産駒は走らない時は全然走らないので、なかなか難儀だというふうに思われますね。あとは、春の中山でプラス18キロで人気で大敗というふうに考えると、グラスワンダーの日経賞のことをまた思い出したりして、ダイエットして、巻き返しに期待したいな、というふうには思っています(レース後のコメントではDDSPの言及なし)。以上になります。
蒼:ありがとうございました。続きまして、こひさんのほうから補足などございますでしょうか。
こひ(以下、こ):このレース、なんで人気どころはこんなに走らなかったんだろうなとパトロールを見直していたのですが、1コーナーまでのところが非常に面白い状況になっていました。シンエンペラーの川田騎手とトロヴァトーレのルメール騎手、この2人がダノンエアズロックの後ろ争奪戦みたいな形で、両者完全に馬体をぶつけ合って争ってるというようなところがありました。レースを横から中継で見ていると、シンエンペラーとトロヴァトーレの二頭と比べてダノンエアズロックはスムーズに前につけていて、多分、気性的なところも含めてうまくやれているのだろうという印象が強かったのですが、シンエンペラーとトロヴァトーレについては、そこで削り合いをしているのは後からわかったんですよね。トロヴァトーレが全く伸びなかったのは、そういったところの影響によって序盤消耗してしまったというところが、多少はあったのではないかと思います。シンエンペラーの川田騎手は外に出したかったんですが、絶対にそれを許さない、プラスダノンエアズロックの後ろにそのまま入れるところも譲らないルメール。本当に2人のトップがレイチェル・キング騎手の後ろをめがけて争っているという姿が実に今日の競馬っぽいなと思って見ていました。この2人がそれだけガチンコで削り合いをしているシーンってなかなか見られないですので、ぜひパトロールの序盤を見ていただけると面白いかなと思います。以上です。
ゆ:ここまで牡馬クラシック路線が本当によくわからないという印象が強いので、このまま行くと、本当にレガレイラに2冠を持っていかれるんじゃないかということまでの印象があるんですけども、残りまだ残ってるスプリングステークスはどうなるかですかね。
こ:レガレイラか、共同通信杯のジャスティンミラノかの今のところやはりこの2頭が抜けている見方にはなってくるかなとは思いますね。強い馬と争ってない馬が、条件戦勝ってからの前哨戦でパッと期待された結果が出せないというケースが重なってきますと、混戦クラシックという雰囲気がしてきて、馬券的なところの狙いはいろいろ考えたいなと思います。
ゆ:サンデーがいなくなった後、ディープが出てくるまでもありましたが、新馬勝ち直後とか条件馬が重賞で連勝できないという状況。サンデーサイレンスやディープインパクトとかそういうポテンシャルのある馬でないと連勝は難しいのかなというところは、ちょっと今日改めて思ったところでした。
蒼:レイデオロもここにかけていたと思うと、残念ですね。
第31回チューリップ賞
蒼:土曜の阪神第11Rで行われましたチューリップ賞の回顧をお願いしたいと思います。
ゆ:桜花賞に必要な賞金を持った実績馬というのは、直行での出走が当たり前になっていますので、今回全馬重賞未勝利馬という形になったレースです。桜花賞出走を狙うには、3着以内が必要となるというメンバーだったので、各騎手、陣営がどう乗るか、どういう体調で持ってこれるかというところが注目になりました。そんな中でクラシックを知り尽くした名手、武豊の腕が光った一戦だったと思います。
レースを振り返りますと、ワイドラトゥールがスタートを決めたのですが、じわっとセキトバイーストがハナにいきました。人気のミラビリスマジックが好位の内側に、外からタガノエルピーダ、内側にスティールブルーという形です。スウィープフィートは後方からという隊列になっていました。前半の3ハロンが34秒5、1000mも57秒7というラップでしたので、有力馬が先行したこともあって、少々脚が溜まりにくい競馬になったのかなと思います。直線に入ると、セキトバイーストが一旦抜け出したところだったんですが、外から一気に伸び脚。スウィープフィートが素晴らしい斬れ味で差し切るという競馬になりました。2着が逃げたセキトバイースト、3着にハワイアンティアレが入るという形で、2,3着は荒れた結果になりました。
勝ったスウィープフィートが、武豊騎手に乗り換わって一発でポテンシャルを出し切ったという走りで、騎乗ぶりが本当に完璧だったと思います。スタートは有馬記念のドウデュースでもあったような、そろっとした出し方で、馬をはやらせないような走り。向こう正面ではパトロールビデオを見ると一目瞭然だったんですが、外目の綺麗なところを選んで、無理のないラップで追走。さらに、心にくい形で3コーナー手前で、内ラチ沿いに誘導して、距離ロスがない形を持っていって、4コーナーでは、外に出して進路を確保。直線入り口を斜めに持ち出す形で、ロスのない進路確保。あとは抜群の切れ味を見せつけたという走りでした。本当にレジェンドの格の違いを見せつけたかなと思います。
前走、前々走、阪神ジェヴェナイルフィリーズでは、焦って外に出して動いちゃったり、エルフィンステークスでは、わざわざ馬場の悪い内を選んでしまったという形で、イマイチな騎乗が続いてしまっていた永島まなみ騎手。比べるのはもちろん可哀想なんですけれども、ここまでやっぱり違うかというぐらい馬の末脚が変わったかなというふうには思います。人気馬に乗ってるから勝つというものではないなというのを改めて思わされましたね。本番に向けてというところですが、最後に1ハロンが結構かかったので、見た目以上には末脚が目立ったかなというところもありますが、一方で勝ち馬も先頭に立ってから、物見する余裕もあったりというところなので、桜花賞でも能力は十分通用するのかなという見立てだと思います。ただ、あとはやっぱり2歳時、3歳頭とちょっとレース数を無駄に使ってしまった結果になってしまったので、庄野厩舎がちゃんとクラシックに向けて馬を仕上げられるか、体調を戻せるかというところがとにかくポイントになってくるのかなと思います。当週の状態で、ちょっとでも怪しいようなコメントがあったら、買いづらくなるかなというふうに思いました。
2着のセキトバイースト。こちらは、時計のかかる馬場で先行勢に脚の溜まりにくいラップに持ち込んだのが良かったなと思います。藤岡佑介騎手、フェブラリーステークスに続いての好騎乗という形で、騎手の本格化の方が気になったレースでした。去年の秋の天皇賞のジャックドールでの漢を見せた走りは、イクイノックスの走りだけじゃなく、もしかして藤岡佑介を一枚引き上げたのではないかという可能性すら感じたところではございます。坂井瑠星騎手の騎乗停止により、個人的には推しのミスタージーティーに来週乗るということがありますので、結果次第ではダービージョッキー藤岡佑介の誕生も夢ではないかもしれないと、個人的に思います。福永祐一騎手が引退して調教師になって、こういう楽しみが減ってたんですけど、この1年ちょっと個人的には藤岡佑介に楽しませてもらっているなと思っております(笑)。
3着のハワイアンティアレは、西村淳也の得意のセコノリがはまったなという印象でした。あとは、ちょっとがっかりだったのは、4着のタガノエルピーダだというか、団野大成騎手ですね。このレースの位置付けを理解してたら、ああいう騎乗にはならなかったのかなと思います。賞金不足で朝日杯FSから直行してきたんですから、ここは勝つことよりも3着以内に入ることが目標。そういうふうに考えると、ルメールと川田の横についていって、一脚使って3着以内にしっかり入るという競馬が必要だったのかなと思うんですけれども、を3コーナー手前から前を追いかけて脚をなくす形になってしまいました。外枠というところもありますし、気性的なところもあるというのはもちろんわかるんですけれども、レース後のコメントを見ると、「レース前は自信がありました」というコメントをしているので、本人がレースの組み立ての難しさを自覚していなかったという気がしますね。「一番考えてた中で最悪のパターンになっちゃいました」みたいなコメントだったら、ある程度しょうがないなって感じなんですけど、「自信はあった」と言われるとうーん、事前の準備不足では?と思ってしまうところではありますね。スウィープフィートからタガノエルピーダで勝負したので、言うわけじゃないんですけども(苦笑)、今後に向けてはもうちょっと反省してほしいなと思いました。以上になります。
蒼:はい、ありがとうございました。それでは、こひさんの方から補足などございますでしょうか。
こ:やはりこのレース目についたのは、2着に入りましたセキトバイースト。このレース、結果的には前が流れて速めのペースになったんですが、誰も行きたくなさそうだった素振りをしていながら、ペースが速くなったという結構珍しいパターンだったかなと思います。そういったところが、ひょっとしたら、先ほどのコメントありました、団野大成騎手がペース的なところを詰めて読み違えたところの原因の一つになったのかなというところにも思います。またそんな中、これまで一回も逃げてなかった馬を、行く馬がいないなら行くわというような形で前に行かせた。これまで結構強い相手とはいい競馬はしてきて、2着というのが多いキャリアではあるんですけれど、そういったレースを積み重ねる中で、多分能力を発揮し得るであろう戦術というところに一つたどり着いたというところで、多分陣営も含めて非常に収穫は大きいレースだったかなと思います。牝馬のこういった距離で前で競馬ができるというところは、単純に穴馬として出て来られるチャンスは大きくなるかなと思いますので、あまり人気にならないタイプではあるかと思いますので、ちょっと今後馬券的にはケアしていきたいなと思います。
第19回オーシャンS
蒼:オーシャンステークスの回顧をお願いします。
こ:オーシャンステークスの回顧を入らせていただきます。高松宮記念に向けたトライアルで、最後のレースという位置づけになりますが、間隔を取って本番に向かう流れというのがほぼ競馬界全体でできた近年で、やや重要度は落ちてきている印象のレースです。今年も現時点でG1で勝ち負けレベルという出走馬はトウシンマカオのみというところで、あとは本番に向けてここから駆け上がっていきたいオープンクラスだとか、条件性を勝ってきた馬だとかの対決という形で、かなり先週の阪急杯と構図的には似た印象のレースではありました。そして、結果自体も同じような形で、実績馬であるトウシンマカオがこちらも完勝という形で決着したレースになりました。
レース自体は開幕2週目ということもあり、内からグレイトゲイナーで、外からオタルエバーが先行していきました。また、安田隆行厩舎がちょうど今日で最終週でしたが、ジュビリーヘッドも、ある程度出していくという形。2ハロン目に10秒5、3ハロン目に10秒6という形で、前日夜に雨が降ってやや馬場が重たい中としては、ある程度流れるペースになったと思います。そんな中、8番枠のピンク帽子のスタートから外を回る形になっても、トウシンマカオはしっかりと一定のポジション、中団の前目のポジションを外から確保しにいきました。そしてそのまま、直線ではかなり余裕を持って外から突き抜けるという形でした。終わってみまして、着順を見ますと、トウシンマカオの内で同じくらいのポジションにいましたバースクライがインを抜けて3着、トウシンマカオの後ろからそれを見て構えて動いていったビッグシーザーとヨシノイースターが2着、4着というような形で、完全にトウシンマカオの周りにいた馬たちが上位に顔を出したというところ。その中で1馬身4分の1という着差以上にトウシンマカオの完勝、強さばかりが印象に残るような結果だったかなと思います。
トウシンマカオについては、先週ウインマーベルの阪急杯回顧と同じような印象でして、やはりこの路線のトップクラスの馬が普通に走ればそれ以外の馬との力差があるなというところは見せつけたかなと思います。本番でも、馬場状態ですとか枠ですとか、そういったところの要素が揃えば、勝ち切るだけのポテンシャルはありますし、昨年は不良馬場で完全に泣いてしまって、まともにレースができなかった形でしたので、高松宮記念本番では良い馬場を期待する方の陣営かなと思います。
2着のビッグシーザーですね、こちらは明け4歳の世代ですね。昨年の3歳世代のスプリント路線をずっと引っ張ってきた馬ですが、古馬混合になってから若干結果が出ない形にはなっていましたが、ようやく速めに流れていく古馬オープンのペースにも慣れてきました。勝ったトウシンマカオと同じビッグアーサー産駒ですが、そのトウシンマカオを見ていても、ビッグアーサー産駒、若い頃から走っていても、スピードだけではなく成長力というところをサクラバクシンオーから受け継いでいる印象でして、ここから徐々にパフォーマンスを上げていくんじゃないのかなと思います。そういったところが上がっていきますと、夏以降重賞勝ちレベルは十分に期待できるかなと思います。この距離でのビッグアーサー産駒の強さが見えるレースだったかなと思います。
レース全体としては、G1前の別定戦のトライアルらしく、現時点での力の差というのがしっかりと出たレース全体が、そういう結果だったかなと思っていいでしょう。これで、高松宮記念の主要ステップレースが全部終わった形になりますが、ちょうど回顧してきました通り、京都牝馬ステークスのナムラクレア、阪急杯のウィンマーベル、オーシャンステークスのトウシンマカオという形で、直前のレースを使ってきた有力な馬たちは、しっかりとそれぞれに本番に向けていいステップを踏んできたなというような印象です。あとは、ママコチャですとか海外転戦組を加えて、本番というような形になりますが、近年比較的短距離戦は乱戦と言われてきていて、荒れる結果も多かったかなと思いますが、結構序列はしっかりと固まってきつつあるかなというような印象です。ですので、本番も一定ハイレベルなレースが見られそうという期待感というのは、今の時点では持っておりますというところです。以上になります。
蒼:ゆたさんのほうから補足などございますでしょうか。
ゆ:こひさんからお話しあったように、序列が割とはっきりした形で前哨戦を終えたというところなんですけれども、今回高松宮記念には香港馬のビクターザウイナーが参戦するんですよね。なので、もし去年からの序列が変わらずに上積みがないという形で本番を迎えると、ビクターザウイナーが調子良ければ、香港のスプリント路線のが格上なのではないかと。人気次第ですけれども、個人的には香港馬こちらから買いたいなと思いました。
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