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2023年4月天皇賞春・青葉賞・三条S回顧

この記事は、2023年4月29日21時00分〜 Twitterスペース 芯力休憩所 #31「み新緑の季節から優駿へ」及び、2023年4月30日16時30分〜 Twitterスペース 芯力休憩所 #32「淀に盾の勇者が帰還」からの文字起こしです。

第167回天皇賞(春)

蒼山サグ(以下、蒼):本日ですが、天皇賞春の回顧をしていきたいと思うんですが、ちょっと心配な状況もありつつ、とりあえずレースそのものの回顧ということで、まずはゆたさんからお願いできますでしょうか。

くらみゆた(以下、ゆ):はい、よろしくお願いします。まずは今ニュースを見ている限りだと、タイトルホルダーアフリカンゴールドも命には別条はなさそうなのかなというような感じですかね。(その後、タイトルホルダーは右脚跛行、アフリカンゴールドは心房細動と公式発表あり)

蒼:それはよかったです、ありがとうございます。

ゆ:今回はまずレースとしては、タイトルホルダーが内枠を利してハナを獲った後に、逃げないと競馬にならないアフリカンゴールドが追って追ってハナを奪え返す展開で、だいぶ前が早い展開になりました。1000mが59秒7でこれくらいだったらまだまあありえるかなというレースだったと思うんですけれども。その後、1周目のゴールが過ぎたあたりぐらいですかね、アフリカンゴールドの手が動いて後退しているところでタイトルホルダー押し出されていくんですが、ラップを見るとこのタイミングでもあんまりペースが落ちていないというような展開で、1000mが59秒7なんですが、そこからの200m、400mが12秒ジャストという競馬になっているので、かなり前半でスタミナを問われる展開になったのかなというふうに思います。向こう正面に行ったところでタイトルホルダーアスクビクターモアという並びに対して外にディープボンド、その後にジャスティンパレスボルドグフーシュという隊列になって落ち着いているんですけれども、ここに至るまでに先ほど話したラップだったのでだいぶ無酸素運動というか、もうちょっとある意味エネルギー源のATPを使ってしまっているような状態で走らされていたという状態だったのかなと思います。その展開でしたので、一回隊列が落ち着いたように見えたんですけれども、坂の上りですかね、その辺あたりからタイトルホルダーが後退してしまって、ラップも13秒台という状態でした。アスクビクターモアタイトルホルダーの真後ろに入っていたので、これで競馬としてはだいぶ厳しくなってしまったのかなという状態でした。直線入ってくると、ディープボンドが抜け出すも、4コーナーから外回ってきたジャスティンパレスが一気に抜け出して快勝という形になりましたので、ちょっといろいろありましたけれども、結果的にはかなりサバイバルレースというか、スタミナを問われるレースになったのかなと思います。今回、京都の天皇賞春というところで、割とみんな去年一昨年の阪神とは違うというのが意識にあったと思いますし、私としてもある程度スピードが出る中での巡行性能が問われる展開で、そこまでラップの激しいスタミナサバイバルレースにはならないかなと思ったんですけれども、みんながそう考えるとなかなかそうならないというところもあり、マイル戦が2回みたいな競馬になってしまったというところかなと思います。結果として、ディープボンドが2着、シルヴァーソニックが3着という展開でしたので、決闘的に見てもやっぱりそういう展開になったのかなというところだと思います。あとはやっぱりルメールの冷静な手綱捌きが今回も光ったとは思ってまして、やっぱりどれだけスタミナ自慢だとしても、道中ラップ12秒ジャストが中盤で出てきてしまうと、どうしてもステイヤー能力というよりはもうちょっと本当に有酸素運動の耐性じゃなくて、無酸素運動の比率が上がってきちゃうはずなので、そうなってくるとやっぱり前の馬はある意味暴走と言ってもいいようなペースになってしまったのかなと思います。タイトルホルダーの方は今回結構出が硬いとか色々ちょっとあったようなこともあるので、一律にそのスタミナ切れだったかどうかちょっとわからないところではあるんですけど。(結果的には跛行による競走中止)ただちょっとその辺を踏まえても、だいぶ厳しいキツいレースにはなったのかなというふうに思いました。勝ったジャスティンパレス、最後ディープインパクトここでも京都で勝ってくるので、こういう展開でもうやっぱりキズナオルフェーヴルを抑え込んでディープインパクトが勝つっていうところはなかなか偉大だなと思いました。

蒼:はい、ありがとうございます。ぜひこひさんからもぜひレースの印象などをお聞かせ願えればと思うんですが。

こひ(以下、こ):はい。まさに今お話があった通り、こんなに厳しいG1もなかなか見たことがないなというところで、非常にレースの見直しがいがあるレースだと思います。やはり近年、どちらかというと一昔前の上がり3ハロンの競馬というよりは、もうちょっと早め800ですとか1000ぐらいからある程度ラップを刻んでいくというような、そういうスタイルに競馬が若干変わってきつつある中で、まず一つタイトルホルダーというはっきりとした前に行ける強い馬、そしてそういうラップが踏んで強い馬がいる長距離戦というところと、あと新しい京都になってまだ騎手の面々の方にもそういったペースとかそういったところのベンチマーク的なものがまだない状態でのレースだったかなというふうに思います。そういったところから、やはり一周目のところでアフリカンゴールドが後退していたところでタイトルホルダーが先頭に立ったことを、やはり周りの騎手がそこでのペースを誤認してしまったんだろうなとも思います。そういったところがすごく競馬の面白さというのがあるなと思っています。特には今回ですと、ディープボンドより前にいた馬全滅してるんですよね。ディープボンドという馬はやっぱりステイヤーとしてのすごい能力というのは、改めて今回も2着だったというところで発揮してたなと思いますし、前に行ってた馬は本当に体感したことがないようなレースを強いられて。ペースが速い時に馬群がばらけるというレースは結構あるかなと思うんですよ。今回は馬群が詰まりながら速かったので、ちょっと未知の領域に出現しているような、そんな印象でした。あとちょっとレースを改めて回顧してて、なんか面白いなと思ったのが、今回タイトルホルダーが早めに後退するような形になりました。先ほどのゆたさんもありましたより、その後ろにいたアスクビクターモアもですね。そこが若干進路を失うようなパターンになって、横山兄弟が、そんな形になっていたんですが、その横でマテンロウレオに乗っていたお父さんが絶妙な動きをしてました。

蒼:そうでしたね。

こ:タイトルホルダーがいなくなったところに、すっと自分の馬を入れていって、久しぶりの京都の外回りのラチがなくなるところで、そのままイン突きに繋げていきまして、いやーなんかこの横山家の3,4コーナーの雰囲気、あのちょうど後退していくタイトルホルダーを見送るパパの姿ですね。なかなかいろんな想像力が駆り立てられました。

蒼:それはちょっと気づいてなかったので、もう一度横山家3人でポジションを見てみます。

こ:ジャスティンパレスに関しては、今回は勝ち方という意味で、自分の競馬にしっかり枠を生かしていた安定の上手さがありました。もちろん、能力的にはタイトルホルダーみたいにちょっと能力を発揮できなかったところもありましたが、一枚上手だったのではないでしょうか。また、ブレイクアップが地味に力をつけていますよね。阪神大賞典以上だったと思います。

蒼:どうもありがとうございました。お二方の言い残しはありませんか?大丈夫でしょうか。

ゆ:そうですね。展開的にはボルドグフーシュの川田騎手がジャスティンパレスの後ろでいい位置を取っていたのですが、今回はちょっと力が足りなかったのかなという感じでした。

こ:いつもの川田騎手と比べるとメリハリがない感じでしたね。途中で松山騎手のブレイクアップにポジション取られてしまっていましたが、今日のボルドグフーシュは全体的に枠なりに回ってきているような川田騎手らしい手綱捌きが感じられなかったですね。

蒼:はい、ありがとうございました。

第30回テレビ東京杯青葉賞

蒼:青葉賞の回顧まいりましょう。こちらですがスキルヴィングの差し切り勝ちということになりましたが、ではゆたさん印象などお聞かせ願いますでしょうか。

ゆ:はい、よろしくお願いします。勝ったスキルヴィングですね、こちら以前のこの場のゆりかもめ賞の回顧でも触れていたんですけれども、そこでお話した通り青葉賞に駒を進めて見事な勝利という形になったと思います。予想通りというかいい勝ちっぷりだったと思います。レースについては2コーナー手前で隊列が決まってからは比較的淡々とした流れでした。で、道中1000m手前ぐらいでよく見る光景な気がするんですけれども、デムーロ、ヒシタイカンがちょっと我慢できずに上がっていったところで、馬群の方も詰まっていきました。スローで馬群が詰まった形で、かつ直線も前があんまり頑張れずに内がごちゃつくようなレースになったと思っています。で、馬群を割って上手く乗ったハーツコンチェルトスキルヴィングが横綱相撲で交わしたというレースだったのかなと思っています。勝ったスキルヴィング、パトロール見ても常に外回されていてヒシタイカンにもちょっと邪魔されるような部分もありましたので、勝ちっぷりはこの相手では1枚上という走りで良かったと思います。お釣りを残した仕上がりというのも言われていますので、ダービーでも当然好勝負になるのかなと思いますし、ルメールですね、こちらファントムシーフがサンデーを持っていないような血統構成というのもありますし、(騎乗の返事を)待たせているというのも考えると、スキルヴィングに乗るんじゃないかなというところも印象がありますね。青葉賞というレースをどう捉えるかというのがダービーに向けては、ちょっと扱いが難しいところで、毎年言われることですけれども、ダービーにとっての最重要ステップはやっぱり皐月賞というところになってきて、青葉賞というのは距離が同じというところがあって、違うペースで競馬ができるわけでもないというところもあるので、どうしても足りないということが多いのかなということがあると思っています。今回についても、着差がつかなかったのはハーツコンチェルトが目一杯の仕上がりでベストの騎乗だったというところもあったと思うんですけれども、やっぱりダービーを勝つというところまでいくと、もっと突き抜けてもらわないと厳しいのかなという印象もありますし、これを見た感想は、ゆりかもめ賞の時からの延長にはなってしまうんですけれども、どちらかというと、秋にはもっと良くなるような、まさに母父のシンボリクリスエスだったり、ゼンノロブロイだったりというようなイメージで、やっぱり思い出すのは、藤沢元調教師がシンボリクリスエスで青葉賞を勝った時に武豊に、「秋には良くなりますね」と言われて、「これでダービー勝てないか……」と思ったら、やっぱり勝てなかったという逸話がありますけれども、ちょっとそういうのを思い出させてしまうようなレースだったのかなと思います。厳しい競馬をしないでダービーに向かえるというのはもちろんメリットではあるんですけれども、ダービーで勝つという意味で言うと、ちょっと経験値として足りないところが出てくることが多いですので、そこが今回ひっくり返せるかというのは、なかなか難しいのかなとは思うところではあります。あと2着のハーツコンチェルトですね、こちら目一杯の仕上がりだったと思いますし、非常に直線も無駄なく乗って良い走りをしている2着というところで、ダービーに駒を進めたというところなので、ダービーに向けての上がり目という意味では、ちょっと厳しいのかなというところはあるんですけれども、この馬、2歳から武井調教師がだいぶ吹いてたりというか、モノが違うと言っていたり、なのに青葉賞で2着というところまでダービーに出る枠が勝ち取れないというのを考えると、やっぱりダービーに出るの難しいんだなというのを改めて思いましたし、個人的にはグランヴィノスが間に合わなかったので、今年ちょっとPOG大敗なんですけれども、やっぱりダービーに出るの難しいなというのを改めて思いましたし、ダービーに関係者が出したい気持ちも改めて伝わりましたし、その中で青葉賞をどう捉えるかというのもなかなか難しいしというところで、非常にダービートライアルらしいレース後の感想を持てるレースだと思います。

蒼:ありがとうございます。あとこひさん、何か補足や付け足しでいたいこととかもしございましたらお願いできると思うんですが。

こ:そうですね。やっぱり2着のハーツコンチェルトで、私は結構長年グリーンファーム愛馬会というマイナー一口クラブをやっているんですが、このクラブで人気した馬が走ってダービーまで進めたというのは、それはとんでもないことだと思っておりまして、この馬自身も新馬での圧倒的なパフォーマンスから、東スポ杯でちょっと取りこぼしての3着というところから結構路線的には迷走して、このレースまでは収得賞金400万円に迎えていたことを思うと、ここをちょっと仕上げ切り、多分松山自身もものすごくロスなく最後に直線さばいて乗るというところを心がけて乗って、こういった着順でダービーに馬を進めるというところを見ていると、私自身も出資はしてないんですけれど、本当にダービーに出るのは難しいなあということを、この馬を見ていてすごくしみじみ思いましたね。レースの感想としては非常にゆたさんと似たようなところで、勝ち馬については、今日のパフォーマンス自体はやはり素晴らしかったですし、全く同じものが出せればダービーでも面白いかもなと思いますが、多分似たようなレースしかしていないとうところ。ダービーが次どうなるのかな、枠順などがそういったところに結構左右されるだろうなというところが一つと、ハーツコンチェルトについては、とはいえ今日よく権利が取れたんですけれど、競馬の内容としては勝たないといけないぐらい上手く乗れていたところで勝ち切れなかったということを考えると、本番でひっくり返すこと自体は結構難しいところなのかなというのは思いました。

蒼:はい、ありがとうございました。ちなみにちょっとしたトピックというか、豆情報なんですけど、スキルヴィング 4戦連続 524キロ増減なし、結構珍しくないですかこれ。僕の記憶ではなんですけど。全く馬体の質そのものを変わってないとは思わないので、実際馬としては動きはあるんでしょうけど、なかなか珍しい事象だなと思ってちょっと感心してました。

ゆ:ダービーで好走したら、井崎先生あたりがコラムのネタにするような逸話ですね(笑)

2023年三条S

蒼:続きましては、本日行われたのは、新潟11レース三条ステークス、牝馬限定のダート3勝クラスということで、ここからまたダートグレード牝馬路線に顔を出してくれるのか、いないのかという話も込みで、語り口としては全然お任せなので、ちょっとこひさんからダートグレード牝馬路線についてお話しいただければと思うんですが、よろしくお願いします。

こ:はい、では今日が三条ステークスという、先日コラムでも書かせていただきましたが、年に3回しかない、準オープン3勝クラスの牝馬限定戦という、非常に貴重なレースでございました。このレース自体も、こういった路線自体が徐々に確立されてきたこともありまして、牝馬の準オープンで、強い馬がここで勝ち切ろうというふうに、狙ってくるっていうような、そういう側面がすごく見えてきたレースになっておりまして、今回も登録をしていた中の有力馬が除外されるですとか、なかなか出ることから大変な感じがしてきております。このレース自体も、レース前の人気で言いますと、結果的には2位、3位、4位直になりました、シダーキャリックアリードカラフルキューブ という3頭が人気の方していました。この一番人気のキャリックアリードについては、未勝利からの3連勝でここに来ているような馬。2番人気でしたシダーについては、牡馬混合でも関係なく過去5戦オール3着以内というような、非常に強い競馬をしてきている。またカラフルキューブについても、2勝クラスを勝ちまして、牡馬混合の準オープンでも3着に来ていたりですとか、非常に粒揃いのメンバーで、レース自体も本当にこの3頭が互いを意識し合っているというのが、非常によくわかるようなレースになってきまして、先行するシダーをぴったりマークするキャリックアリード。そしてそれを外から見ながら、4コーナーで内をすくってポジションを上げていた、カラフルキューブという形で、さすがこの3頭、人気馬、すごいな、ちょっとみんな意識していい競馬してるなーって、これで決まるのかなと思ったら、最後に外からエナハツホという馬が飛んできたというところで、なかなか見ごたえがあるレースだったかなと思います。エナハツホという馬についても、今回ちょっと人気的には盲点にはなっていたんですが、牡馬混合の2勝クラスをきっちり勝ち上がってきている、2連勝中というような形です。父トビーズコーナー、生まれは大狩部牧場というところで、人気にはなりにくいタイプではあったんだろうなとは思いますが、かなり内容の濃い形での3連勝を決めてきておりますので、今後のダートグレードという点でも非常に注目されるべき存在かなと思います。特に、ずっと後方からの差す競馬をしてきていて、最近のダートグレード競走は、テリオスベルがいることによって、必ずペースが上がることが約束をされてきているというところがありますので、うまくはまればちょっと大きな仕事をできるような馬になってくるかもしれないな、というところを思っています。あとやはりこの後ダートグレード競走で戦っていく上で、すごく大事なことは直近1年間の賞金をどれだけ持っているかというところになってきます。そういう意味ですと、この3連勝でここを勝っていますので、当分の間の収得賞金が直近1年2千万という、かなり強い数字を持っている状態で1年弱戦っていけるというところも確定的ですので、必ずダートグレードの枠に入ってきて、上位層とどういった競馬をできるかというところも、すごく楽しみになるという印象でした。

蒼:はい、ありがとうございました。ゆたさん何か付け足とかありますか?

ゆ:そうですね、この路線の話は私もあまり詳しくなかったので、こひさんの話をいつも興味深く聞いているんですけれども、ちょっと思ったのは、今回のレースで三場開催の新潟ということもあって、騎手が結構メジャーどころではないと言っているんですけれども、結構若手がね、競馬に乗っていたりとかしていて、そういう意味でもちょっと登竜門になる可能性がこの路線にはあるな思いまして。今月号の優駿でで小林稜大騎手のインタビューが載っていて、そこでテリオスベルが触れられていたんですよね。自分が乗って二つ勝っていたから、今の活躍を見て、ちょっと悔しいような、どんどん育っていってほしいようなコメントがあったりしたので、やっぱり今若手がどんどん出てきているタイミングでもあるので、このダートグレード牝馬路線に、そういう若手騎手がどういう活躍をしていくのかなというのも、一つ今後楽しみになってくると面白いのかなと思いました。


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