見出し画像

【本】ミルトン・フリードマンの日本経済論

ミルトン・フリードマンの日本経済論 (柿埜 真吾,2019)
http://amzn.to/2riUPT1

”金融政策を中心とする日本経済の諸問題とフリードマンの関わり“について書かれた本です。書籍の中では、(日本では大物経済学者かもしれない)日本の経済学者の残念な言説をバッサリ斬っていて痛快です。
文章も読み易く(僕はiOSに読み上げてもらったのですが)、あっという間に読了しました。

マネタリズムや貨幣数量理論といった、いわゆる「フリードマン」らしい話題もある一方で、日本経済を振り返るうえで大切な変動相場制や1970年代の二度のインフレ、バブル崩壊と金融政策の関係など、盛り沢山です。

デフレが始まった1990年代半ばからの「平成大停滞」への処方箋を示してくれます。

フリードマンのスタイルに好感が持てる点は、演繹的な論理展開、実証的な分析スタイル、にあると感じました。

日本経済に興味のある方には必読の一冊です。

ここからは僕個人の「つぶやき」です。

最近は「◯◯貨幣理論」という名を冠しながら「レンズ」という実証に耐えないものに触れる機会があり、困惑したこともありました。フリードマンは既に亡くなっていますが、「現代」のレンズよりも、貨幣の力を認める高い見識を持った経済学者であったと言えると思います。

元日銀総裁として任期中をほとんどデフレに精緻にコントロールした白川方明(しらかわまさあき)さんも、若い頃の論文(*1)では

"通貨の超過供給→財への支出増加→国内物価上昇(14頁)…為替レートの決定には現実の通貨供給量と並んで通貨供給量の予想も重要(15頁)"(*1)

"「名目的」(nominal)、「貨幣的」(monetary)な現象であるインフレーション"(*1)

"完全なフロート制の下ではマネーサプライはコントロール可能な内生変数"(*1)

と貨幣の力を良くご存知でした。日銀総裁在任中は、マネーの力を忘れてしまったかのようでしたが…

共産主義系の政党の国会議員が2013年3月28日の財金委員会で次のような発言をしておられます。
「実は日銀の皆さんとはずっといろんな議論をして、恐らくこの後ろに座っていらっしゃる方ほとんどは私とまだ同じ考えじゃないかと実は思うんです。」
後ろには黒田東彦氏以外に雨宮理事(現日銀副総裁)など、デフレ維持に邁進し、金融政策でのデフレ脱却に否定的な人々が座っていらっしゃったようです。(参考人:黒田東彦、田中 洋樹、雨宮 正佳)

日本の共産主義系の方は金融政策に否定的です。
極端な左派の貨幣の考え方(レンズや態度と言った方が良いかもしれません)でも金融政策については、その効果を充分に捉えて活用しようという見方はされていないようです。第二次安倍政権で、雇用環境を改善させ、長い間続いた名目GDPゼロ成長を終わらせた金融政策。

実証的な分析とその姿勢を学ぶためにも、極端な左派などから叩かれたフリードマンに学ぶ意義は大きいと感じます。

歴史的な分析は、同書でも紹介されていた若田部昌澄氏(現日銀副総裁)の論文(*2)が良いと思います。

(*1)マネタリー・アプローチについて

http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/shiryou/kks3-1.pdf

(*2)歴史としてのミルトン・フリードマン(若田部昌澄, 2012)
https://jshet.net/docs/journal/54/541wakatabe.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?