リフレ派に関する連載ウォッチ#6
武田真彦教授の連載12回の第6回は、“リフレ派が量的緩和の根拠としてきた「ワルラス法則」”(*1)についての記事です。
飯田泰之氏によると“ ワルラス法則は、「すべての市場の超過需要の和はゼロになる」と表現される。教科書などにおいても、このような木で鼻をくくった説明が加えられるだけだが、この法則はマクロ経済を考える際に重要なインプリケーションを与えてくれる。”(*2)
ということだそうです。詳しくは、出典の記事をご一読ください。
リフレ派がワルラス法則をどのように考えているかは、高橋洋一氏、田中秀臣氏の共著「日本経済再起動」(*3)に、古典派、新古典派、ケインズとの比較が出来るように書かれています。引用しておきます。
“ ワルラス法則の諸商品は、財・サービス、労働、債券、貨幣ですが、ここに「将来の貨幣」を含めます。ワルラス法則によれば、貨幣を含む諸財が超過供給、つまり貨幣がじゃぶじゃぶのケースは、必ず将来の貨幣に対する超過需要をもたらしているということを意味します。つまり人々は貨幣不足が将来も続くと予想するわけです。これがデフレ期待(予想)という現象ですね。将来の貨幣の超過需要を解消しない限り、現在の貨幣を含む諸財の超過供給は解消しません。
[中略]
当然、財・サービス、労働の超過供給、売れ残りや失業は解消できないままです。将来の貨幣の超過需要を解消しないと、そういった状況が続きます。これが、現代版の「流動性の罠」です。ケインズ経済学のように、現在ドカーンと貨幣を供給しても将来の貨幣不足を解消できないことに注意してください。この状況を解消しなければいけないというのが、クルーグマンなど「期待」を重視するリフレ派の考え方です。”(*3)
デフレ期待をインフレ期待へと転換させる、これがポイントなのですね。インフレ目標で将来の貨幣供給を予想させる、という点が、期待を重視するリフレ派の考えと理解しました。QQE前の旧日銀では、量的緩和解除が早く消費者物価指数が1%にも満たないうちに利上げをしたり、とデフレ期待を維持したままだったと考えることが出来ます。
この「期待」については、ノーベル賞を受賞したポール・クルーグマンの「子守協同組合」(*4)の話が有名です。ご興味ある方はご一読ください。そして、それを解説した記事(*5)も併せて読まれることをおすすめします。
武田氏の記事では、量的緩和の文脈でワルラス法則について言及されていました。しかしながら、リフレ派は「将来の貨幣に超過需要がある」と考えるどうぐとしてワルラス法則を使い、デフレ期待をインフレ期待に変えることの重要性を考えていることが分かりました。
(*1) 量的緩和の理論的根拠としての「ワルラス法則」 https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00039/030100007/?n_cid=nbponb_twbn
(*2) 【SYNODOS】経済を考える勘所 ―― ワルラスの法則について/飯田泰之 / マクロ経済学 https://synodos.jp/economy/915
(*3) 日本経済再起動
https://amzn.to/3rDW5e4
(*4)経済を子守りしてみると。
https://cruel.org/krugman/babysitj.html
(*5)日本はなぜ長期停滞にはまったかを初歩レベルで解説とリフレ政策の基本 - Economics Lovers Live 田中秀臣のブログ https://tanakahidetomi.hatenablog.com/entry/2018/03/20/234041
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