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行政文書を悪用する残念な人

立憲民主党の小西議員が公開した「行政文書」に関する話題が注目されています。そろそろ、終息しそうですが、僕の雑感を残しておきます。
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ポイント
1.選挙で選ばれた政治家への圧力
2.既得権から目を逸らす議論
3.劣化したメディアと仲間たち

1.選挙で選ばれた政治家への圧力

自民党の細野議員は、以下のように警鐘を鳴らしておられました。

"総務省の行政文書の背景に何があるかは分からないが、仮に一部の官僚が行政文書に時限爆弾をしかければ政治家を殺せる仕組みは問題。大臣レク(政治家レク)のどこが行政文書に残るのか、残る場合に政治家は自分の発言を確認できるのか。これは党派を超えて重要な問題だ。" (2023.03.15, 細野豪志)

仰る通りだと思います。

今回の事件で驚いたのは、正確性が確認できない「行政文書」を基に、大切な国会審議の時間を使い、選挙で選ばれた高市早苗大臣に対して色々と…

行政文書であったとしても、
A). 本物か
B). 正確性の確保
C). 内容に価値があるか
で評価したうえで、国会で取り扱うべきだと、僕は考えます。

A~Cを各10点満点で評価すると、

A).本物か

10点
日頃確実な仕事を心がけている総務官僚が「原案」を作成し「上司の関与を経て」(霞ヶ関文学に詳しくないのですが、確認のみならず、修正することを指す、とお聞きしました)、保存された文書です。
本物の「行政文書」と言えるでしょう。総務大臣も認めておられます。

B).正確性の確保

1点
高市氏に関する文書は4つあり、そのうちの1つは出席者とされる6名のうち3名が内容を否定か覚えていない、残る3つの文書は、作成者不明とのこと。
= ( 1 * (3/6) + 3*0 ) /4 = 0.125 = 12.5% と評価し、これを10点満点で1点としました。

C). 内容に価値があるか

1点
放送法の解釈変更が行われた形跡はなく、国民にとって、有益性が感じられませんでした。ただ、行政文書の正確性の大切さ、などを学ぶ機会をくれたことを勘案し、1点としました。

A × B × C の評価点

満点であれば、1,000点 (10点×10点×10点) ですが、
僕の評価は、10点 です。

総務省の報告(*1)によると以下の通りの結果となっています。
正確性は確認できなかったそうです。
(文書が管理簿に登録されていなかったことも明らかになっています)

以上を勘案すると、2月13日に放送関係の大臣レクがあった可能性が高いと考えられるが、5月12日以前に放送法第4条の解釈に関する大臣レクがあったかについては、関係者間で認識が分かれており、確認はできなかった。

・なお、作成者及び同席者のいずれも、この時期に、放送部局から高市大臣に対して、放送法の解釈を変更するという説明を行ったと認識を示す者はいなかった

・また、この文書に記載されている内容については、
-発言者等の確認を取らないまま作成されたものであること
-約8年前のことであり、作成者及び同席者のいずれも個々の内容までは覚えていないとしていることから、この文書に記載されている内容についての正確性は確認できなかった
・文書整理 No.39、42、43 について、作成者が不明の文書でもあり、高市大臣から安倍総理又は今井秘書官への電話のいずれについても、その有無について確認できなかった
(*1) 2023.03.22 総務省

総務省の行政文書を知る人

一般人の僕が、行政文書の正確性を議論しても大した意味は無いので、詳しい方のご意見を拝聴いたします。

まずは、竹中平蔵元総務大臣です。

行政文書っていうと非常にオーサライズされた文書みたいに、みんな思っちゃいますけども、全くそんなことはありません。行政文書というのは、かなり、いい加減なものでですね、実は役人が自分が交渉が、例えばですけど、これ本当によくあることですけれども、自分がほかの役所と交渉して上手くいかなかった場合に、その言い訳みたいな文書を書くんですよ、よく。
それで、なんか相手が卑怯な手を使ったとかですね、総理から圧力がかかったとか、そういうのはしょっちゅうある訳で、行政文書の中にも、そういう、いい加減なものが沢山あるっていうことですよね
(*4)

そうだったんですね。。。
「本物の行政文書」であったとしても、安易に「正確性が確保」された情報と思わぬよう、気を付けたいと思います。

さらに、お一人。高橋洋一氏の記事(*5)より。

配布先に大臣、事務次官が抜けているので、正確性が担保されていない行政文書だ。配布先から、総務省全体ではなく旧郵政の内輪情報共有メモであることもわかるが、当時総務相だった高市早苗氏が旧郵政から部外者扱いされ、バイアスで書かれた可能性がある。ちなみに、高市氏は、そんな言い方はしていないと否定している。
(中略)
17年3月の加計学園問題でも、各省間での折衝の際、折衝メモがそれぞれの省の職員で作られたが、相手省の確認を受けておらずに、自省に都合よく書かれていて、その正確性は疑問視された
その後の行政文書作成のガイドライン改正で、政策立案などでの打ち合わせ文書では相手方の確認を取るとされたが、それ以前は確認を取ることはなかった
今回問題とされている行政文書は15年のものなので、正確性が確保されていなくても不思議ではない
(*5)

行政文書の管理に関するガイドラインの平成27年(*6)、29年(*7)の改正内容を見比べると、29年のガイドラインに次の内容が加えられています。

(1) 文書の作成に当たっては、文書の正確性を確保するため、その内容について原則として複数の職員による確認を経た上で、文書管理者が確認するものとする。作成に関し、部局長等上位の職員から指示があった場合は、その指示を行った者の確認も経るものとする。
(2) ○○省の外部の者との打合せ等の記録の作成に当たっては、○○省の出席者による確認を経るとともに、可能な限り、当該打合せ等の相手方(以下「相手方」という。)の発言部分等についても、相手方による確認等により、正確性の確保を期するものとする。ただし、相手方の発言部分等について記録を確定し難い場合は、その旨を判別できるように記載するものとする。
(*7)

僕も仕事でお客様打合せの議事録を書いたりします。
若手に書いてもらった議事録を修正もしますが、修正後は、打合せの相手方に確認・承認を得るプロセスを踏み、正確性を確保するようにしています。

後を絶たない行政文書の問題

平成29年の行政文書のガイドライン改正以後も、森友学園に関する決裁文書の書き換えがありました。

赤木氏によると、
"『今回の問題はすべて財務省理財局が行いました。指示もとは佐川元理財局長と思います。学園に厚遇したととられかねない部分を本省が修正案を示し現場として相当抵抗した。事実を知っている者として責任を取ります』"
などと記されています。

佐川元理財局長は、証人喚問の中で、次のように述べ、文書書き換えに関する政治家の関与を否定しています。

私ども理財局の外、例えば財務省の中の官房部局にご報告や相談をするとか、あるいはましてその総理官邸に対してですね、何かご報告をするとか、そういうことはございませんし、そういう意味では官房や、官邸等からのご指示もございませんで、本件は理財局の中で対応したということでございます。
(*9)

2020年にも、エネ庁の虚偽文書問題が起こりました。
"経済産業省資源エネルギー庁幹部らが虚偽の公文書を作った"(*10)

多くの官僚の方々が、日頃確実な仕事を心がけていると思いますが、一部の残念な人々によって、行政文書の正確性に対する信頼を損ないかねません。

2.既得権から目を逸らす議論

今回の文書を巡っては、放送法の解釈変更が行われたか否か、高市氏に関する文書の内容の真偽に話題がフォーカスされがちです。
しかしながら、総務省などの官僚やメディアが持つ権力、それに影響を受ける人々がいることにも注目すべきと考えます。

総務省は、放送・通信のみならず、地方行政やIT関連なども担っています。

特に放送・通信においては、他の先進国と比べて、行政側の裁量が大きいと思っています。下図の網掛けが大きいほど、行政側の裁量が大きいというように見ることもできます。

図表出典:通信・放送分野の独立規制機関 (2022.08.05, 砂田篤子)

放送法の解釈変更や、政権の圧力によって、メディアが萎縮している、という議論がありますが、安倍晋三総理大臣(当時)の2016年2月4日の国会答弁を引用しておきます。

例えば、きようタ方、帰りに日刊ゲンダイでも読んでみてくださいよ。これが萎縮している姿ですか。萎縮はしないんですよ、毎晩の報道を見ていただければわかるように。
それはむしろ言論機関に対して、私は失礼ではないのかなと思いますよ。むしろそれは言論機関に対して失礼であって、萎縮している機関があるのであれば具体的に言っていただかないとわからないんですが、まさにそれは、私は大変失礼な話ではないのかなと思います。
そういうことを申し上げれば、むしろ、安倍政権を弁護する立場の言論の方は、なかなか貫き通しにくい雰囲気すらあるという人もいるわけでございます。
2016年2月4日衆議院 予算委員会

先進国で唯一(?)クロス・オーナーシップが認められているのが日本です。新聞社がテレビ、ラジオを抑えていて、多様な言論が期待できるのでしょうか。

海外では、メディアのバイアスを評価するようなレポートが挙がっています。

画像出典:AllSides

日本のメディアである「○日新聞」は、どの位置に…

3.劣化したメディアと仲間たち

森友学園問題では、政治家の関与という疑惑が言われましたが、結果は、佐川理財局長をトップとした財務省理財局の不祥事でした。
謝罪記事を公開した大手メディアがあったでしょうか?

今回の問題でも、正確性が不確かな文書で、貴重な国会の時間を浪費することを、メディアが助けているのではないでしょうか。

既得権を持つ、官僚、メディア、一部政治家が、力を合わせて、セキュリティ・クリアランスなどの大事なことを担当する国務大臣の時間を奪い、攻撃する、というようなことがあるとすれば、国益に大きくマイナスです。
喜ぶのは、日本弱体化をもくろむ組織くらいではないでしょうか。

高市早苗氏からの公開情報

国会では、答弁することを制限しようとする人がいて、説明時間を充分に取れなかった高市早苗氏から、資料の開示がありました。

総務省文書に関して参院予算委に提出した資料①~⑤
https://www.sanae.gr.jp/column_detail1424.html
https://www.sanae.gr.jp/column_detail1425.html
https://www.sanae.gr.jp/column_detail1426.html
https://www.sanae.gr.jp/column_detail1427.html
https://www.sanae.gr.jp/column_detail1428.html

高市早苗氏の独占手記が以下で公開されたそうです。
月刊WiLL (ウィル) 2023年 05月号 [雑誌]

感想

大手メディアで信頼できる情報を得ることが難しく、既得権者よりの情報ばかりを見ることは、他にもあると思います。
日本の財政危機は、1980年頃から言われ続けていますが、2023年の今も…

ネットなどで専門性を持った方々、良質な情報を発信してくださる時代です。
より良い情報を取りに行く努力、そして、そこから学び、良い情報を発信できることを目指していきます。

参考情報

(*1)「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について(追加報告)(2023.03.17, 総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000506.html

(*2) 政治的公平に関する文書の公開について (2023.03.07, 総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000503.html

(*3) 「政治的公平」に関する行政文書の正確性に係る精査について (2023.03.10, 総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000505.html

(*4) [小西文書] 馬鹿馬鹿しいにも程がある!国会の時間をこんなことに・・・ (2023.03.16, 竹中平蔵)
https://youtu.be/URW54AbqKms

(*5) 【日本の解き方】総務省の「行政文書」は全て正確なのか 官僚のバイアスかかる可能性 都合よくまとめられがち、筆者もデタラメ書かれた経験も ( 2023.03.15, 高橋洋一 )
https://www.zakzak.co.jp/article/20230315-DNE4FETGBRMJTFSGKJO7K6S6RA/

(*6) 行政文書の管理に関するガイドライン
平成27年3月13日一部改正
https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/guideline/kanri-gl270313.pdf

(*7) 行政文書の管理に関するガイドライン
平成29年12月26日一部改正
https://www8.cao.go.jp/chosei/koubun/hourei/guideline/kanri-gl291226.pdf

(*8) 森友 文書改ざん 「すべて佐川理財局長の指示です」自殺職員 手記 | 注目の発言集 | NHK政治マガジン   https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/32066.html

(*9) 全記録・証人喚問で佐川氏は何を語ったか 財務省決裁文書改ざん|NHK NEWS WEB 財務省の決裁文書改ざん問題で行われた佐川前国税庁長官の証人喚問をチャット風に掲載。全文ダウンロードも
https://www3.nhk.or.jp/news/special/sagawa_testimony/

(*10) エネ庁の虚偽文書問題、不正の報告は過去約3年で初めて:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASN467RHQN46ULFA01T.html




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