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【本】消費税10%後の日本経済

安達 誠司さんの消費税10%後の日本経済 (2019.10.10) https://amzn.to/2MtL6S1
Kindle版 https://amzn.to/2VVh7pb

定量的な分析と演繹的な記事(現代ビジネス)を参考にしているエコノミストの安達誠司さんの新著です。

日本経済と世界経済の現状分析(貿易減、内需は雇用改善が下支えも…)したうえで、金融政策の効果を忘れてはいけない、と指摘されています。
「御意」×100 です。
第二次安倍政権以降の財政金融政策で、拡張的なものといえば、アベノミクス 第一の矢の金融政策、2013年度の約5.5兆円の補正予算くらいです。その結果、雇用環境は大きく改善(失業率低下、有効求人倍率上昇、雇用者報酬増加など)し、大企業だけでなく中小企業の利益もバブル期以上という事実。これを金融政策抜きで説明することができるのでしょうか?(1990年台に100兆円を超える財政を出しても大した効果がなかったのに約5.5兆円の財政が急に効果を発揮?!)

安達誠司さんは続いて財政再建論の転換について触れられます。世界の潮流は拡張的な財政を支持する流れが出来つつあるそうです。
緊縮財政を推進する学者などが根拠としていたラインハートとロゴフの論文が実はExcelの集計範囲のミス(悪意?善意?)があった(*1)ことを取り上げています。詳しくは安達誠司さんご自身が解説されている動画(*2)をご覧ください。

財政政策については、FTPLとMMTについても触れています。ご興味のある方はご参照下さい。
MMTは最近見聞きしますが、左派の経済アイデアだそうです(*3)。
Modern Money Theory の略だそうです。
ステファニー・ケルトン氏によれば、真ん中のMはMonetaryだったり、Fiscal などの意見もあるそうです。
ECBのドラギ総裁もMMTのような財政について言及したそうです(*4)。オープンエンドの量的緩和など金融緩和の強化策を示したECBのセントラルバンカーとして、経済安定化のために財政に注文をつけるのは理解できます。

三章、四章以降は消費税の影響と税制のあり方について整理されています。消費税だけがクローズアップされがちなテレビや新聞からは得ることが難しい学びを得ることが出来ます。

「消費税10%でリーマンショック級がー」というような極論とは対極にある冷静な論調に好感が持てます。

ディビジア指数による金融政策の分析、財政政策に対する議論の変化、消費税率10%の影響など、今後の日本経済を見るうえで知っておくべき「考え方の軸」を提供してくれる良書です。

ぜひ、ご一読を^_^

(*1) 「国家は破綻する」著者らが誤り認める、米研究者らの指摘受け(2013.04.18, ロイター)
https://jp.reuters.com/article/tk8373247-global-economy-debt-idJPTYE93H04720130418

(*2) 消費税10%後の日本経済~デフレが進み雇用が悪化!? 安達誠司のマーケットニュース 江崎道朗【チャンネルくらら】 https://youtu.be/MD6R4YK16Ls

(*3) A very detailed walkthrough of Modern Monetary Theory, the big new left economic idea
https://www.vox.com/future-perfect/2019/4/16/18251646/modern-monetary-theory-new-moment-explained

(*4) Draghi Says ECB Should Examine New Ideas Like MMT
https://www.bloomberg.com/amp/news/articles/2019-09-23/draghi-says-ecb-should-examine-new-ideas-like-mmt?__twitter_impression=true

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