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リフレ派に関する連載ウォッチ

すごいタイトルの連載が始まるようです。マクロ経済をウォッチする一般人として注目しています。

武田 真彦 オーストラリア国立大学名誉教授による12回の連載です。
以下は予告編だそうです。

(*1)[予告]リフレ派は誤りを認め、改めるべきは改めよ https://business.nikkei.com/atcl/seminar/20/00039/021900001/?n_cid=nbponb_twbn

第二次安倍政権で実現した「大胆な金融緩和」は、リフレーション政策が軸になっていたと考えています。その金融政策の効果は、就業者数増加と失業率低下など雇用環境を大きく改善(384万人増,*2)させ、長らく低迷していた名目GDPを大きく成長(約66兆円増,*2)させました。
財政政策の拡大規模は決して大きいとは言えず、民自公の三党合意により決められた二度の消費増税がなされたにも関わらず、です。


ここからは、武田真彦教授という経済の専門家が、予告記事内で書かれたことで、気になった点についてコメントします。

武田氏“ わが国の経済問題は金融政策によって解消できる「貨幣的現象」ではなく、構造改革等の供給サイドの改善策を必要とすると主張する「反リフレ派」も存在し、リフレ派との間で論争が繰り広げられてきた。QQEの導入は、この論争にリフレ派が勝利し、彼らの長年にわたるキャンペーンが現実の政策に結実したものである。”(*1)

武田氏はリフレ派が「論争」に勝利したとしています。この点には違和感を感じます。「論争に勝利」の定義は定かではありませんが、QQE導入は、安倍晋三議員が自民党総裁選の公約にデフレ脱却を掲げて勝利し、総理大臣になり、日銀の正副総裁に大胆な金融政策を立案・実行出来る人事案を通すという、極めて「政治的」なものであると考えます。
安倍晋三総理(当時)は、過去の日銀の失政を目の当たりにして、リフレ派の考えに傾いたと、国会で次のように述べておられます。

「山本幸三議員が、いわばリフレ派としてさまざまな主張をしてこられた。その中において、安倍政権の二〇〇六年、二〇〇七年時に、一つの考えるきっかけとしては、あのとき、三月に量的緩和を解除した。その後、経済はよくなってはいくんですが、しかし、そのことが、やはりデフレからの脱却においては足を引っ張っていたのは事実でございまして、安倍政権のときに官邸にいました嘉悦大学の高橋洋一教授からも、いろいろなそのときの話を聞きました。
 その中において、これは山本幸三議員が主張している政策は正しいのではないかという中において、浜田教授からもいろいろなお手紙をいただいて、その中において、最終的には渡辺喜美説が正しいと、そちらの方に傾いていったわけでございまして、考え方も髪型も変えたんですが、渡辺代表もちょっと髪型を変えられたようでありますが、この金融政策においても変わったということでございます。」(*3)

リフレ派の主張とそれに反する「反リフレ」の「論争」という意味では、日本では「反リフレ」が「主流派」のままでした。
大手メディアや学者、エコノミストの多くは、世界で多くの先進国が導入しているインフレ目標や金融政策によるデフレ脱却の効果を否定したり、大規模な金融緩和をすれば、(デフレから物価目標2%にインフレ率の引上げを出来ないと批判している同じ口で)インフレ率が高騰する、国債が暴落する、などの残念で事実と異なる主張がなされていました。

この「論争」について、僕の評価は「作られた論争であり、決着済み」というものです。
なぜなら、論より証拠で、いくつも結果が出ていたからです。
例えば、他の先進国や過去の日本の実績です。
1:他の先進国が物価目標を導入し、日本よりも良好な経済成長率、物価上昇率を達成している
2:“ 「インフレターゲットをめぐる論争は、すでに70年前に戦わされてきた論争のくりかえし…[中略]…結末は…[中略]…金輸出再禁止と…[中略]…日銀による国債引き受けという二段階のリフレ政策の実施によってデフレからの脱出が達成され、小数派であったリフレ派の勝利に終わった”(書籍: 平成大停滞と昭和恐慌)


頭痛(デフレ)に良く効くジェネリック薬(インフレ目標などの金融政策)があるのに、その効果を否定しつつ、「頭痛になったのは頭痛になりやすい国民性が原因だ」「グローバル化が頭痛の原因だ」というような医者が居たとしたら、「ヤブ医者」と思われても仕方ありません。
その「ヤブ医者」にもメンツや商売もありますので、それを潰されては困ります。そのメンツを保つためには「論争」があるように一般人向けに見せておく、ということも一つの「処方箋」と言えます。(「論争」に振り回される側は、たまったものではないですが)

武田氏は“ それをもってリフレ派が免罪されるわけではないというのが、本連載の結論である。それはリフレ派が、「この実験から学ぶところ」を正面から受け止めておらず、QQE前に主張したことの誤りを認めてそれを改めたり、日銀や反リフレ派に対して行った傍若無人な批判や誹謗(ひぼう)中傷を反省したりする姿勢を全く見せていないためである。「過ちて改めざる 是を過ちと謂(い)う」。リフレ派は孔子のこの教えをかみしめ、自らを処す必要があるだろう。“(*1)、と力強く結ばれています。

岩田規久男元日銀副総裁の著書「日銀日記」(*4)の中で、

“ 古舘氏は「デフレ脱却できなければ、消費税は上げないということですね」と何度も念を押す。これに対して、安倍総裁候補は「そういうことです」ときっぱりイエスと答え、「デフレ脱却が前提ですから、その前にデフレ脱却の政策を総動員しなければならない」と述べている。”(*4)
(この時のやり取りは、今でも動画(*5)として残っているそうです。)

と、安倍晋三自民党総裁選候補者(当時)の言葉を紹介され、大胆な金融緩和による物価目標2%達成は、消費増税はしないことを前提としていたことを述べられています。

批判されることが多いリフレ派ですが、その主張を部分的に取り入れた大胆な金融政策(QQEなど)の実施以降、就業者数は大きく増加、労働需要だけでなく労働供給も大きく改善しました。

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消費増税により、水をさされてしまったデフレ脱却ですが、金融政策の効果の大きさを実感しました。

消費増税の影響を抜きにした議論になっていないか?歴史や現実、海外の先進国で当たり前に議論や実施されている経済政策と照らして妥当な議論になっているか?などの視点を持って、武田氏の連載を拝読していきます。

以下は武田氏の記事以外の出典をまとめています。応援下さる方、出典にご興味がある方はご覧ください。

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