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経済対策2023

岸田文雄総理大臣が経済対策について検討するよう、指示を出したそうです。

令和5年9月25日 経済対策についての会見 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/statement/2023/0925kaiken.html

令和5年10月の段階で、得られる情報を基に、今必要な経済政策を考えてみます。
政府による経済対策が議論されていますが、それは、選挙対策なのでしょうか?
何かしらの「課題」があるからこそ、経済対策が必要になるのだと思います。

ただ、問題発見力が無ければ、重要な問題自体を見つけ、その中から課題を設定し、経済対策を立案する、ということは出来ません。
また、立場や価値観によって、何を問題と捉えるのか、ということは変わってきます。

岩田規久男元日銀副総裁の著書「経済学の道しるべ」( P.183, 夕日書房 )には、次のように書かれています。

"経済学の基本的課題は、マクロ経済の安定化を政策的に図りつつ、希少資源をいかに価格機構と市場の失敗を修正する課徴金や補助金などを組み合わせて有効に活用して、人びとの生活を豊かにするかです。"

経済学の道しるべ (夕日書房)


マクロ経済が安定しているのか?
対応すべき問題と割当する政策は何か?
という観点から、僕の考えを整理します。

僕の現状認識は次通りです。
1️⃣完全雇用になっておらず、政府・財務省・日銀の政策対応必要
2️⃣賃金上昇を伴い普通に経済成長出来る国になるか否かの分水嶺

気になるポイントは以下の通りです。


経済政策のポイント
1. 物価高
2. 鈍い賃金上昇
3. 弱い消費

1.コストプッシュの面が強い物価上昇には、財政政策で対応すべき。エネルギーコスト引下げには原発再稼働含めた対応必要、という認識です。

2.賃金上昇は鈍く、新型コロナ禍前の労働需給が引き締まった状況にキャッチアップ出来ておらず、GDPギャップが仮にプラスだとしても、経済安定化政策が必要、という認識です。

3.弱い消費は、新型コロナ禍前の2019年10月の消費増税より始まっており、実質消費は弱いままで、可処分所得を単発で増やす財政政策では不充分、という認識です。

(追記)
無責任野党は好き勝手言えますが、政権与党と、それを目指す野党には規模を示したうえで経済対策を議論して欲しいです。
政策にする時、法案出す時、必ず必要なので。これを言わない政治家や政党は、素人か悪意のある玄人です。

1.物価高

政府の経済対策で、話題になるのが、物価高騰です。

低所得者に手厚い現金給付を課税所得扱いで全国民に一律給付する、という対策が良いと考えます。

月例経済報告資料(2023.09.26, *1)
から消費者物価指数の図表を2つ引用します。(日本単独、日米欧英)

日本は「生鮮食品を除く食料」(緑色)が物価上昇の大きな割合を占めています。(図①)

米欧英と比較すると、日本政府・日銀の対応結果は「悪くない」と思われます。(図②)

しかしながら、賃金と関連が強いサービスに関する伸びは、米国のそれと比べてかなり弱い、とも取れます。(図③)

輸入物価下落(足下原油価格高騰が再燃していますが)はラグを伴って、消費者物価指数を下押しすることが観測されており、日銀や民間の物価見通しでは、上昇幅が縮小していく見通しです。(図④)

日本のコストプッシュ面が強い物価高は、低所得者ほど影響が大きいと考えられます。(図⑤)

①図表出典(*1)
②図表出典(*1)
③図表出典(*3)
④図表出典(*2)
⑤図表出典(*2)


2.鈍い賃金上昇

賃上した企業を税制優遇することや補助金では、期待したほど大きな成果は出ないと考えます。

短期的には総需要を拡大し、労働需給を逼迫させるようなマクロ経済安定化政策を先ずはやり、有効求人倍率を新型コロナ禍前の水準に戻すことを目指して欲しいと思います。
その後、セーフティネットを作ったうえで、労働市場の様々な規制改革に取り組んで欲しいと考えます。

推計値であるGDPギャップがプラスになっても、未だ労働面の指標が弱いのは、完全雇用になっていないことを示唆しています。

円安環境下での企業収益の増加や、物価高もあり、連合によると賃上幅は30年ぶりと言われるほど大きいものになったそうです。(図⑥)

日本の物価と賃金の長期の関係を見ると、デフレ下よりもインフレ下の方が賃上幅は大きいことが分かります。(図⑦)
ベースアップはインフレ下の時だけ発生するイベントのようにも見えます。

非自発的失業者数が上昇傾向、かつ、新規求人数(遅効指数と言われる雇用関連の指標の中では景気動向に早く反応する)の減少傾向なのも気になります。(図⑧)

雇用者報酬で見ても、実質は残念な水準です。(図⑨)

⑥図表出典(*2)
⑦図表出典:日銀講演資料
⑧図表出典:Pwcレポート
⑨図表出典(*2)

3.弱い消費

新型コロナ禍に関連した行動制限が緩和されたにも関わらず、消費は弱いままです。

実質可処分所得を足下で増加させるとともに、将来に渡って、実質可処分所得が増加する、という予想働くような政策が必要だと考えます。

ワンショットの政策では、消費が余り上向かないのは、将来の負担増や不安定な賃金を懸念してのことだと思われます。

物価高で可処分所得が減り、家計調査が顕著ですが、実質消費が減少しています。(図⑩)
家計の可処分所得と家計貯蓄の推移のグラフを参考に貼っておきます。(図11)

また、GDPの個人消費の伸び率は、消費税率が引き上げられる度に、鈍化してきました。

⑩図表出典(*1)
11図表出典:内閣府

4.僕が重要視すること

僕が重視するのは、当たり前に経済成長して賃金が上がり、景気が悪くなれば、政府・財務省・日銀がマクロ経済安定化動く、普通の先進国です。

安倍晋三元総理は金融政策を国民に取り戻しました。
今度は財政政策を取り戻す番です。

少しばかり、見慣れない経済指標の数値が出たからといって、ここで経済対策を誤っては、クルーグマ批判する「臆病の罠」にはまったも同然です。


政府与党だけでなく、野党側にも、マクロ経済政策を立案出来る政党や政治家が、情報発信しています。

今後も経済の話題に注目していきます。

追記:
「GDPギャップがプラスなのに減税が必要なの?」という方は、次の記事を読むことをオススメします。

需給ギャップがプラスでも、減税が必要な理由:「冷温経済」から「適温経済」へ

https://www.pwc.com/jp/ja/services/consulting/intelligence/assets/pdf/weekly-macro-economic-insights20231003.pdf

参考資料

(*1) 月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(2023.09.26, 内閣府)

https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2023/09kaigi.pdf

(*2) 経済財政諮問会議
マクロ経済運営関係資料(2023.09.26, 内閣府)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2023/0926/shiryo_03.pdf

(*3) 月例経済報告等に関する関係閣僚会議資料(2023.08.28, 内閣府)
https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/2023/08kaigi.pdf

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