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『江戸川乱歩の美女シリーズ』からみる名詞、形容詞、形容動詞

江戸川乱歩の美女シリーズ』(えどがわらんぽのびじょシリーズ)は、1977年から1994年までテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で17年間放送されたテレビドラマシリーズである。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%88%B8%E5%B7%9D%E4%B9%B1%E6%AD%A9%E3%81%AE%E7%BE%8E%E5%A5%B3%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA

 かつて天知茂氏や北大路欣也氏が名探偵明智小五郎を演じて人気を博したこのシリーズは全話のタイトルが「◯◯の美女」で統一されているのが特徴だ。

 だが「◯◯」には「氷柱」のようにシンプルな名詞が入る事もあれば、「妖しい傷あと」のように形容詞+名詞の場合もある。

 今回はこれを分類分けしてどのパターンが最も多いか確認する運びとなった。

まずは天知茂版から

Aタイプ:「『名詞』の美女」型

  • 氷柱の美女

  • 浴室の美女

  • 死刑台の美女

  • 黒水仙の美女

  • 妖精の美女

  • 宝石の美女

  • 大時計の美女

  • エマニエルの美女

  • 五重塔の美女

  • 鏡地獄の美女

  • 化粧台の美女

  • 湖底の美女

  • 黒真珠の美女

 記念すべき第1作は「氷柱の美女」、2作目は「浴室の美女」。
 シリーズの初期だからか、簡潔な単語がチョイスされている。
 それ以降も、「エマニエル」「鏡地獄」など日常生活では使わないような単語から、「宝石」「化粧台」「湖底」など通常生活する上で違和感のない単語までタイトルに使用されている。

Bタイプ:「『形容詞』+『名詞』の美女」型

  • 白い人魚の美女

  • 赤いさそりの美女

  • 白い乳房の美女

  • 白い素肌の美女

  • 妖しい傷あとの美女

 このパターンの形容詞は殆ど色、しかも白が使われている。
 「白い乳房」≒「白い素肌」な気もするし、「白い人魚」の「白い」部分はおそらく「魚」ではなく「人」の部分な気がするので、やはりこちらも「白い人魚」≒「白い素肌」な気がする。
 色といえばAタイプで「黒水仙」と「黒真珠」がある。「黒真珠」は固有名詞として存在するものの、「黒水仙」は存在しないため、「黒い水仙の美女」でも良かったのでは無いか。または「白人魚の美女」「白乳房の美女」でもいいのではないか。
 もっとも、「黒水仙」という映画が1947年にあったらしく、「黒水仙」という固有名詞が存在しない、というのはやや語弊がある。
 それに「白人魚」だとなんか下半身がヒラメなのかな、とか思ってしまって非常によろしくないし。

Cタイプ:「『名詞』『助詞』『名詞』の美女」型

  • 桜の国の美女

  • 天国と地獄の美女

  • 天使と悪魔の美女

  • 禁断の実の美女

  • 炎の中の美女

 Cタイプと一括りにしたが「の」という格助詞を使ったものと、「と」という並列助詞を使ったものが混ざっている。正直、分けようかとも思ったが、まあ良いだろうと思って一緒にした。

Dタイプ:「『名詞』『助詞』『助動詞』美女」型

  • 悪魔のような美女

 これほどわかりやすいタイトルはない。少なくとも、今回のストーリーのヒロインの性格がすこぶる悪いことは明らかである。

Eタイプ:「『動詞』『助動詞』美女」型

  • 魅せられた美女

 「◯◯の美女」で「の」がないのはこの作品と前述した「悪魔のような美女」だけである。
 それにしても、実に思い切ったタイトルである。「氷柱」「大時計」「五重塔」など物語のフックとなりそうなものがタイトルになることが多い中での「魅せられた」という美女の「状態」をタイトルにしたのだから。
 果たして美女は「何に」魅せられているのか、タイトルからは一切明らかになっていないのに魅力的な表題になっているのだ。

続いて北大路欣也版から

Aタイプ:「『名詞』の美女」型

  • 日時計館の美女

  • 神戸六甲まぼろしの美女

 シンプルな単語が多かった天知茂版から一転、えらく限定的な単語になった、北大路版。一つ目は「日時計館」という場所にいるんだな、と思うし、二つ目はよく分からないけど神戸六甲が舞台なんだな、というのが分かる。
 ただ単語を限定的な場所にしたせいで、なんか急に美女じゃない気がする。なんというか中学生までは神童と近所から呼ばれていました感が醸し出されてしまっているのだ。

Bタイプ:「『形容詞』+『名詞』の美女」型

  • 妖しいメロディの美女

  • 黒い仮面の美女

  • 赤い乗馬服の美女

  • 妖しい稲妻の美女

色2、妖しい2、しかも天知茂版ではBタイプのメインだった白が0という驚きの結果となった。
 しかし、この美女シリーズはどこか妖艶な雰囲気があってそこが魅力なのだが、自分で「妖しい」を言ってしまう(しかも比較的短期間に2回も)のはどうなんだろうか。確かに「メロディ」や「稲妻」は「五重塔」「浴室」なんかと比べると単語自体の妖艶さは欠けるかもしれないが。
 あとここにきて「黒」が初めて形容詞にになりました。「黒仮面」だとなんかプロレスラーっぽいもんね。形容詞にした方が摩訶不思議な雰囲気が演出されるもんね。

最後に西郷輝彦版

Aタイプ:「『名詞』の美女」型

  • からくり人形の美女

天知茂版ほどではないものの、北大路欣也版と比べて遙かにシンプルな単語である「からくり人形」。ちなみに原作は「吸血鬼」という作品で、「氷柱の美女」と同じ。

Fタイプ:「『形容動詞』『名詞』の美女」型

  • みだらな喪服の美女

 ここにきて新しいパターン。しかも「みだらな」という直接的に妖艶な単語に「喪服」というこれまた乱歩っぽい単語。
 少し過剰演出にも思えるかも知れないが、「喪服の美女」はもう開拓されきっているので致し方ないのだろう。


 今回は江戸川乱歩の美女シリーズのタイトルを品詞分解した。
 そして、タイプ別に分けた結果がこちらだ。

回数

グラフにするとこのようになっている。

Aタイプが半分を占めている

やはり美女にワンポイント足すならシンプルイズザベストということなのかもしれない。




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