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『孟子』69滕文公上―孟子と陳相の対話(4)許行批判~聖人の悩みと農夫の悩み

*前回の、孟子の言葉はさらに続きます。

…………。
尭は、舜のような人物を得られないことに悩みました。
そして、舜は、禹や皋陶(こうよう)のような人物を得られないことに悩みました。
*皋陶は、舜の時代に公平な裁判を行ったと言われる伝説的な人物です。

ですから、百畝の田畑を管理できないことに悩む、というのは、それは農夫の悩みなのです。

さて、人に財産を分け与えることを、恵と言います。
人に善を教えることを、忠と言います。
そして、天下のためにふさわしい人物を得ることを、仁と言います。

なるほど、天下を人に明け渡すだけならば、簡単なことです。
ですが、この恵、忠、仁をふまえたうえで、天下のためにふさわしい人物を得るとなると、それは難しいことなのです。

孔子は言っております。
〈偉大ではないか。尭が君臨することよ。
ただ天のみが偉大なるもの。
ただ尭だけが天を理解する。
あまりの偉大さに、民も、どう言いあらわせばよいかわからなかった。
君臨せし舜よ。そびえたつように、天下をたもち、それでいて自らは手を下さなかった。〉

尭や舜が、天下を治めたとき、どうして自身の心をくだかなかったと言えるでしょうか。
ただそれは、田畑を耕すという行為によってではなかった、というだけの話なのです。
……。

*孟子の言葉は、まだつづきます。

*以上、『孟子』69滕文公上―孟子と陳相の対話(4)許行批判~聖人の悩みと農夫の悩み
*『孟子』について詳しく知りたい方はこちら

【原文】
……。堯以不得舜為己憂、舜以不得禹、皋陶為己憂。夫以百畝之不易為己憂者、農夫也。分人以財謂之惠、教人以善謂之忠、為天下得人者謂之仁。是故以天下與人易、為天下得人難。孔子曰、〈大哉堯之為君。惟天為大、惟堯則之、蕩蕩乎民無能名焉。君哉舜也。巍巍乎有天下而不與焉。〉堯舜之治天下、豈無所用其心哉。亦不用於耕耳。……。

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