『孟子』万章下160ー孟子と万章の対話(16) 士は君主と距離を置く
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*今回は、万章との対話です。
万章は言った。
「士が諸侯に身を託さないのは、どういうことなのでしょうか。」
孟子は言った。
「あえて、そうしないのだよ。
諸侯が国を失って、それから、ほかの諸侯のもとに身を寄せるのは、礼にかなっている。だが、士が諸侯のもとに身を寄せるのは、礼にかなっていないのだ。」
万章は言った。
「君主が、士に食糧を届けにきた場合には、これを受け取ってもよいのでしょうか。」
孟子は言った。
「それは受け取るよ。」
万章は言った。
「それには、どのような義(ぎ)があるのでしょうか。」
孟子は言った。
「君主は、そもそも亡命してきた民を救わなければならない立場にあるからね。」
万章は言った。
「救ってくれるときには、食料を受け取るということですよね。
では、贈られたときには受け取らない、ということですか。
どういうことなのでしょうか。」
孟子は言った。
「あえてそうはしないのだ。」
万章は言った。
「ぜひとも質問をおゆるしください。
〈あえてそうはしない〉というのは、どういうことなのでしょうか。」
孟子は言った。
「たとえば、門番や夜間警備をする者は、日常の職分があって、それで上から俸禄をもらっているだろう。
だが、日常の職分もないのに、上から俸禄を賜(たまわ)るというのであれば、恭(うやうや)しいとは言えないな。」
*以上、『孟子』万章下159ー孟子と万章の対話(16) 士は君主と距離を置く
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