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『孟子』告子下208ー孟子の言葉(77)苦難こそ人を錬磨する

◆全訳はこちら↓

孟子は言った。

「舜(しゅん)は、田畑の作業の中で見出された。
傅説(ふえつ)は建設作業の中で推挙された。
膠鬲(こうかく)は、魚や塩の仕事の中で推挙された。
管夷吾(かんいご)は、士の身分から推挙された。
孫叔敖(そんしゅくごう)は、海辺で推挙された。
百里奚(ひゃくりけい)は、市井の中で推挙された。
さて、彼らのように、天が大任を、その人物に下されようとしているときに起きることがある。
必ず、その人の心や志を苦しめる。
そして、その人の肉体を疲労させる。
さらに、その人の身の上を貧困にあえがせ、なにか行動を起こせば、あらぬ混乱をもたらすのである。
心を動揺させることで、その人の性質を忍耐強くきたえあげ、それまで成し得なかったことができるように、力を増大させるためである。

人間は、常に間違いがあって、それから改めるものだ。
心に苦しみ、溢れんばかりの思いにふさぎ込み、それから立ち上げあるものなのだ。
そして、もはやかくしきれず、表情に現れ、声に出てしまったとき、それから悟るのである。

国内では、法を遵守する代々の臣下や、輔弼の士がいなくなる。
そして、国外では、敵国や外患がいなくなる。
こうなれば、その国家は、まず滅亡する。

そうしてみると、悩みや苦しみによって生かされ、安楽によって死がもたらされることを、理解できるのである。」

*傅説(ふえつ)は、殷王朝の中興期を築き上げた武丁(ぶてい)に仕えたとされる名臣です。
膠鬲(こうかく)は、殷の紂王に仕え、末期の王朝を支えた名臣とされています。
管夷吾(かんいご)は、これまで何度か登場してきた管仲です。斉の桓公を覇者に押し上げた名宰相です。
孫叔敖(そんしゅくごう)は、春秋時代の楚の荘王(そうおう)と、その強大化を支えた宰相です。
百里奚(ひゃくりけい)は、あらためて紹介すると、春秋時代の秦の穆公に仕え、その強勢を支えた人物です。

*以上、『孟子』告子下208ー孟子の言葉(77)苦難こそ人を錬磨する


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