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『孟子』34公孫丑上―孟子の言葉(3)天下無敵の五条件


孟子は言った。

「賢者を尊敬し、才能ある人を使う。
そして、優秀な傑物たちがふさわしい地位にあるのであれば、天下の士は、誰もが喜んでその朝廷に立ちたいと願うだろう。

市場では、店ごとに税をかけて、商品には税を課さない。
もしくは、市場には、法を定めるだけにとどめ、税を課さない。
そうすれば、天下の商人は、誰もがその市場に商品を置きたいと願うだろう。

関所は、監視をするだけで税を取らないようにする。
そうすれば、天下の旅人は誰もが喜んでその道を通りたいと願うだろう。

農民には、古の井田法(せいでんほう)で定められた収穫のみを納めて、他に税を課さないようにする。
そうすれば、天下の農民は誰もが喜んでその土地を耕したいと願うだろう。

住宅については、定職がない者に課される税(夫布)や、自宅で桑や麻を育てていない者に課される税(里布)をやめる。
そうすれば、天下の民は、誰もが喜んで、その地の民になりたいと願うだろう。

この五つのことを実際に行うことができれば、隣国の民もこの国の君主を父母として仰ぎ見るようになるだろう。

そうなれば、隣国が、その子弟を率いて、この国を攻撃しようとしても、もはや彼らの父母となっているこの国の君主を攻撃できるはずもない。この世に民が生まれて以来、子弟を率いて彼らの父母を攻撃して成功した例など存在しない。

つまりこのような状態になれば、天下では無敵ということになる。天下に無敵である者は、天吏、つまり天の使いである。
そのような人物が王者でなかった例など、いまだに存在しないのである。」

*以上、『孟子』34公孫丑上―孟子の言葉(3)天下無敵の五条件

【原文】
孟子曰、「尊賢使能、俊傑在位、則天下之士皆悅而願立於其朝矣。市廛而不征、法而不廛、則天下之商皆悅而願藏於其市矣。關譏而不征、則天下之旅皆悅而願出於其路矣。耕者助而不稅、則天下之農皆悅而願耕於其野矣。廛無夫里之布、則天下之民皆悅而願為之氓矣。信能行此五者、則鄰國之民仰之若父母矣。率其子弟、攻其父母、自生民以來、未有能濟者也。如此、則無敵於天下。無敵於天下者、天吏也。然而不王者、未之有也。」

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*この記事の訳は、原則として趙岐注の解釈にしたがっています
*ヘッダー画像:Wikipedia「孟子」
*ヘッダー題辞:©順淵

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