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『孟子』11―梁恵王下―孟子と斉の宣王の対話(5)賢者の旅〈3〉

*前回の孟子の話に出てくる、晏子の言葉はつづく

……。ですが、今はそうではありません。
軍を動員すれば、糧食を徴発するため、飢える者は食がなく、労役に従う者は休むこもできません。
なのに、王たちは民を睨みつけて彼らの怠慢を非難するのです。
ですから、民は悪事をはたらくようになりました。
今の王たちは、古の王たちの教えに逆らい、民を虐待しながら、自分の飲み食いするものは流れるままに取り上げてしまう。
しかも、遊び呆けて肉体を壊し、諸侯の悩みの種となっているのです。

さて、川の流れに從って下り、帰るのを忘れること。
これを流と言います。
そして、川の流れに従って上り、帰るのを忘れること。
これを連と言います。
獣を追いかけ回して飽きもせず夢中になること。
これを荒と言います。
酒を楽しんで飽きもせずに呑み過ぎること。
これを亡と言います。

古の王たちには、この流や連のような楽しみ方や、荒や亡のような行いをする者は、おりませんでした。
さて、今の王と古の王、どちらの流儀に従われるか。
それは、ただ貴方様次第です。〉

*ここまでは晏子の言葉である。

景公は、晏子の話を聞くと、喜んで大々的に国に布告を出し、宮中から出て郊外に宿泊されました。
こうして初めて民を思いやる政策を行い、民に足りないものがあれば補ってまわられました。

景公は、宮中の音楽を担当する大師を召し出して言いました。
〈私のために、君主と臣下が互いに喜んでいる音楽を作ってくれ。〉

思うにこれが今に伝わる〈徵招〉と〈角招〉と呼ばれる曲です。
その歌詞にはこうあります。

〈わが君を止めて、なぜか咎められず。わが君を止めたのは、わが君を愛していたから。〉」

*以上、『孟子』11―梁恵王下―孟子と斉の宣王の対話(5)賢者の旅〈3〉

【原文】
……。今也不然。師行而糧食、飢者弗食、勞者弗息。睊睊胥讒、民乃作慝。方命虐民、飲食若流。流連荒亡、為諸侯憂。從流下而忘反謂之流、從流上而忘反謂之連、從獸無厭謂之荒、樂酒無厭謂之亡。先王無流連之樂、荒亡之行。惟君所行也。〉景公說、大戒於國、出舍於郊。於是始興發補不足。召大師曰。〈為我作君臣相說之樂。〉蓋徵招角招是也。其詩曰。〈畜君何尤。畜君者、好君也。〉」

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*ヘッダー画像:Wikipedia「孟子」
*ヘッダー題辞:©順淵

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