『孟子』万章下157ー孟子と万章の対話(14) 贈り物をもらったら―交際の作法

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万章は質問して言った。

「ぜひとも質問をおゆるしください。
交際とは、どのような心がまえで行うものなのでしょうか。」

孟子は言った。

「恭(うやうや)しくあることだ。」

万章は言った。

「では、なにか贈り物をいただいたとします。すると、それをお断りする理由があって、断ったのに…、恭しくないことである、とされています。
なぜなのでしょうか。」

孟子は言った。

「目上の者からそれを賜(たまわ)ったときに、このように言ったとする。

〈その、私が受け取ろうとしているモノは、義にかなっているモノでしょうか。
それとも義にもとるモノでしょうか。〉

そして返答次第で、その賜ったモノを受けとったり、あるいは受け取らなかったりするのだ。
こんなこと…、恭しいとは言えないだろう。
だから、目上の者から賜ったモノは、とにかくお断りしないようにすることだ。」

万章は言った。

「ではどうかお教えください。
理由を述べたうえでお断りするのではなく、まず、心のうちで〈その贈り物は、民から取り上げた義にもとるモノではないか〉と考えます。そして、お断りするときに、遠回しな言葉で受け取らないようにするのです。
いかがでしょう。」

孟子は言った。

「その交際が道にしたがっており、その接し方が礼にかなっているのであれば、孔子も、その贈りものを受け取られるだろうね。」

万章は言った。

「今、都の城門の外で、人を追いはぎしている者がいたとします。
それですと、その追いはぎが、交際は道にしたがっており、その接し方が礼にかなっているのであれば、その追いはぎしたモノであっても、受け取って良い、ということになってしまうのではないでしょうか。」

孟子は言った。

「それはダメだ。『尚書』の康誥(こうこく)篇には、このようにある。

〈財貨のために人を殺し、凶暴で死を恐れないようなやつは、誰であろうと憎まないものはいない。〉

そんなものは、命令されるまでもなく誅殺しても構わない。
殷王朝は、夏王朝を受けついだ。そして、周王朝は、殷王朝を受けついだ。いずれも辞令を必要としなかった。今においても燃え盛るような明らかな法なのだ。
どうして、追いはぎしたモノなど、受け取れようか。」

*以上、『孟子』万章下157ー孟子と万章の対話(14) 贈り物をもらったら―交際の作法

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