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『孟子』79滕文公下―孟子と戴不勝の対話 まわりの大切さ

*戴不勝(たいふしょう)は、宋(そう)の臣下です。彼は、宋王の側近である薛居州(せつきょしゅう)という人物を高く評価していました。
今回は、宋王と薛居州をめぐる、孟子と戴不勝との対話です。

孟子は戴不勝に語って言った。

「あなたは、ご自身の王に善であって欲しいと思っていますか。
ならば私は、あなたにはっきりと申し上げなければなりません。

ある楚(そ)の大夫が、ここにいるとしましょう。
その大夫は、自分の子どもに、斉(せい)の言葉を話せるようになって欲しいと思っています。

さて、そうだとすると彼は、斉の人を家庭教師として、自分の子どもに言葉を教えさせるでしょうか。
それとも、楚の人を家庭教師として、言葉を教えさせるでしょうか。」

戴不勝は言った。

「斉の人を家庭教師にするでしょうね。」

孟子は言った。

「ある斉の人が、その子に斉の言葉を教えたとしましょう。
ですが、楚の人々が、周りでガヤガヤとうるさくしていたとしましょう。
毎日のようにムチを打って斉の言葉をこなせるように、きびしく躾(しつ)けたとしても、できるものではありませんよね。

逆に、この子を引っぱって行って、荘(そう)や嶽(がく)といった、斉の街や里の中に置いて、数年も経てば、毎日のようにムチ打って楚の言葉を話すように言っても、できなくなるでしょう。

さて、あなたは、薛居州(せつきょしゅう)を、善い士だと言っていますね。
そして、彼を宋王のそばに置かせています。

なるほど、王のそばにいる者が、年長者から幼児まで、そして、身分の高い者から低い者まで、誰もが薛居州のようであれば…、
王が、誰とともに善からぬことをできるでしょう。

ですが一人、薛居州だけでは…、
一人だけで宋王に、何ができるというのですか。」

*『孟子』79滕文公下―孟子と戴不勝の対話 まわりの大切さ


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【原文】
孟子謂戴不勝曰、「子欲子之王之善與。我明告子。有楚大夫於此、欲其子之齊語也、則使齊人傅諸。使楚人傅諸。」
曰、「使齊人傅之。」
曰、「一齊人傅之、衆楚人咻之、雖日撻而求其齊也、不可得矣。引而置之莊嶽之間數年、雖日撻而求其楚、亦不可得矣。子謂薛居州、善士也。使之居於王所。在於王所者、長幼卑尊、皆薛居州也、王誰與為不善。在王所者、長幼卑尊、皆非薛居州也、王誰與為善。一薛居州、獨如宋王何。」

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