『孟子』万章上145ー孟子と万章の対話(8) 尭舜革命の真相 支那・中国古典シンプル全訳 2021年8月12日 09:05 *今回は弟子の万章との対話です。万章は言った。「尭は、天下を舜に与えたといわれますが、これは事実なのでしょうか。」孟子は言った。「いや、天子(てんし)が天下を人に与えることはできないよ。」万章はあらためてたずねた。「そうであれば、舜が天下を保ったというのは…、誰が、舜に与えたのですか。」孟子は言った。「天が舜に与えたのだ。」万章はさらにたずねた。「天が舜に与えたというのは…、天が懇切丁寧に、舜に命令をあたえたということなのでしょうか。」孟子は言った。「いや。天がなにかを言うことはないよ。その人の行いと、その結果によって、天下を与えるかどうかを示すだけだ。」万章は言った。「その人の行いと、その結果によって、天下を与えるかどうかを示す…、それは、どういうことなのでしょうか。」孟子は言った。「天子は、天に対して人物を推薦することができる。しかしながら、天子の方から、天の力で、推薦した人物に天下を与えてもらうとことはできない。諸侯は、天子に対して人物を推薦することができる。しかしながら、諸侯の方から、天子の力で、諸侯の地位を与えることはできない。大夫は、諸侯に対して、人物を推薦することができる。しかしながら、諸侯の力によって大夫の地位を与えることはできない。昔、尭が舜を天にむかって推薦すると、天もこれを受け入れた。そして、舜の実力を民にあらわにしたうえで、民が彼を受け入れたのだ。だから言うのだ。〈天は語らず。その人の行いと結果によってのみ、天下を与えるかどうか、示すのだ。〉…とね。」万章は言った。「ぜひとも質問をおゆるしいただきたいのですが…、尭が舜を天に推薦して、天がこれを受け入れたのですよね。そして、天は、舜を民の上に現して民も舜を受け入れた…。と、おっしゃられますが、これはどういうことなのでしょうか。」孟子は言った。「尭は、舜に祭りを主催させると、多くの神々がその祭りを受け入れた。これは、天が舜の祭りを受け入れたと言うことだ。さらに、舜にさまざまな事業を管理させると、その事業はうまく治まった。そして、多くの民たちがその恩恵に安心した。これは、民が舜の事業を受け入れたということだ。つまり、天が舜に天下を与え、人々が舜に天下を与えたということだ。だから言うのだ。〈天子は天下を人に与えることはできない。〉さて、舜は、尭の宰相として二十八年をすごした。これは人ができるようなことではない。天のお力なのだ。尭が崩御すると、三年の喪を終えて、尭の子に遠慮して、南河(なんが)の南方に身を隠した。ところがだ…、天下の諸侯で、天子に朝見した者は、尭の子ではなく、舜のもとに集まるようになったのだ。また、訴訟を起こした者もやはり、尭の子のもとではなく、舜のもとに向かった。それに、歌を謳う者は、尭の子をたたえる歌を謳(うた)わず、舜の歌を謳ったのだ。だがら、天のお力と言うのである。このような情勢のなかで、舜は、ようやく中国に戻り、天子の位についたのだ。これがたとえば、もし舜が、尭の宮廷に居座り、尭の子を脅迫したというのであれば、これは簒奪(さんだつ)である。天のお力によるものではない。『尚書』の太誓篇にはこのようにある。〈天が見ている。我が民の目にしたがおう。天が聴いている。我が民の耳にしたがおう。〉これはそういうことなのだ。」*以上、『孟子』万章上145ー孟子と万章の対話(8) 尭舜革命の真相◆全訳はこちら↓ 孟子 もうし ―全訳―(支那・中国古典シンプル全訳シリーズ) www.amazon.co.jp 1,250円 (2022年03月04日 17:00時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する ◆音声で聴きたい方はこちら↓(制作途中) ダウンロード copy #哲学 #古典 #中国思想 #諸子百家 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? 記事をサポート