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 年下の彼にあう。たまたまLINEをしたらたまたまいいよという返信がきてたまたま近くにいたのでうきうきして彼のアパートにいった。
 偶然が度重なった場合だけこうやってあうことが出来る。あたしは年甲斐もなくはしゃいでいた。彼のこときっと好きだ。あまりにも年下だけれど。 とにかく暑い。日傘をさしていても背中に不快すぎる汗をかく。彼のアパートに着きチャイムをおす。いくどか鳴らしてもうんともすんともいわないので勝手に入る。おじゃましますと小声でいいながら。お風呂場から音がしてがらりとドアをあける。
「あ、風呂入ってたんだ」彼は後ろを向いていたから後ろを振り返り一瞥してああうんそうといいまたシャワーに取りかかっていた。あたしは勝手に部屋にはいり手持ち無沙汰だからなんとなくスマホのニュースを見ている。スマホではゲームもしないしむろんSNSなどもしていない。時計と電話とメールだけが主だ。とゆうか使いこなせていないというのが本音だけれど。   彼はしかし風呂が長い。あまり時間がないというのにとにかく長い。あたしは時間ばっかり気にしてしまう。でた、と声がして振り返ると彼がバスタオル1枚で立っている。
「しゃわーしてきていい?」とゆうかもうほとんど脱いでいたけれど彼に聞いてからシャワーをしにいった。汗が流れてゆく。なんとなくほっとしているあたしはああまたここでシャワーをしてるんだなとぼんやりと考える。ツクツクボウシが鳴いている。  

「あまり時間がないけど大丈夫かな」「うん大丈夫」あたしがは仰臥の彼の上に跨がりキスをする。なんだかこの人キスとかうまいな慣れてるなという女がコロッといってしまいそうなキスでそれだけであたしは嬉しくなる。キスってこんなによかったっけということをこの彼が思い起こさせてくれた。彼の全身を舐める。上から悦の声がぽろぽろと容赦なく降ってきてあたしの体中を濡らす。悦の声をよける傘などを持ち合わせていないあたしは濡れるがまま彼のものをつかんで自分の中にゆっくりと挿れる。 

「うう」彼の声とあたしの声が重なる。やばいなもうこれは中毒じゃんかというくらい全身が震える。あいたくてあいたくて震える〜の西野かなの歌ってこうゆう意味なのかもしれないなぁと別脳でまた考える。いつの間にかあたしが下になっていて彼が腰を振りキスがまた降ってきて彼の決壊の声とともにいまとても幸せだしなんならもう死んでもいいとさえまた思う。セックスの最中に死ねたらどれだけ幸せかわからない。死ぬときって笑気麻酔をしたような感覚になるらしいとネットに書いてあった。

「時間まで寝かして」終わって彼はだいたいそういう。タイマーを掛けて眠る。のび太のように直ぐに意識が落ちる。些細な休憩時間なのにごめんなさいという罪悪感が拭えない。あたしはしたいの。といえば、光栄ですね、とはにかみ笑う彼は本当にかわいいしなんか泣けてくる。年下の男の子に恋をしたあたしはなんだか滑稽かもしれない。まあ別に彼がどう思っていようが一向に構わない。あたしだけが好きでもいいじゃないか。

『ピピピ』とタイマーが鳴り彼が、ああとため息を吐き立ち上がる。「もういくけど……」彼の支度など一分とかからない。あたしはまだ出れないといった。

「鍵置いておく。またポストに」うん。彼は鍵の束からアパートの鍵を抜き玄関にちょこんと置いた。いくわ。とドアを開ける。夕日がドアから入ってきて眩しくて目を細めた。いってらっしゃい〜。と手を振る。うん。彼はうなずいた。あちゃあたし裸だったわ。まいっか。夕日の中に立つ彼のシルエットがとても奇麗だったことが脳裏に焼き付いている。ツクツクボウシが鳴いている。殺人的な猛暑でも秋の気配はややあってあたしはそっと鍵を手にとりじっと見つめる。

 台所にあるジャガイモの芽がやけに伸びていた。けれど玉ねぎもあってへえと心の中でつぶやく。このままジャガイモの芽は育つのかなとふと思い立ちスマホを手にしてググってみた。鍵はなくさないよう元の位置に戻しておく。さっきよりもツクツクボウシの声がうるさい。

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