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「なにをしてほしい?」
 彼がバックからしているときに、どうしてほしいかいえと息を切らしながら耳もとでささやいた。
「……、」
 交わっているときってわたしはわたしではなくなり彼は彼ではなくなりじゃなかったらじゃあだれなの? ってことになるけれどやっぱりわたしでもなく彼でもないわたしと彼が白くまの交尾のような格好をして会話をしている。会話といっても彼だけがなにかぶつぶつとささやいて興奮を煽っているようにしかおもえないからひどく滑稽でちょっとだけ涙がでた。
 ブルっと体を震わせて、く、首を……、といかにも生クリームを絞るような切なげな小声でつぶやくと、えっ、首をなに? 腰をぐんといっかい突き上げながらそう訊き返してきた。
「く、首を、お願い、か、噛んでぇ……、」
 横向きになっており、わたしの視線は常に水面のような波打った真っ白なシーツでなぜならバックだからうつ伏せの体制だしおしりを突き上げるとなると顔は常に下をみる格好になる。側からみたらバカみたいな体制だ。ヨガスクールじゃあるまいし。
「ああっ、」
 耳元にあった気配がなくなり首の辺りに熱気ともる。ガブといった感じで彼はわたしの首を噛みつき痛みが体中を駆け巡った瞬間わたしの中がブルっとまた震えだし、仰反るような快感とともに果ててしまった。もっと噛んで。わたしは目を潤ませながら彼に懇願をする。わかった。とでもいうように彼はさっきと同じ場所ではなく違うところを容赦なく噛んでいった。そのうち噛むだけでは足りず肉を引きちぎり食べてしまうのではないだろうかとおもうほどきつく噛んではやめて噛んではやめてを何度も繰り返しそのつどでわたしは果てた。
「すげーぬるぬるだね」
 結合部分を指さきで彼は触りながらすげーなぁと感心をしている。そしてまた腰をぐわんと突き上げてきて子宮がわなないた。ついでにわたしも泣いている。痛いのが快感なのだから。もっと、もっと痛くしてくれたら快感が得られるのではないのだろうか。快感がほしい。ほしいの。その言葉を聞き彼がわたしのお腹を持ち上げくるんと仰向けにし、じっと顔をのぞき込んだ。
「どうしたらいいの? なんでもするから」
 薄暗くてあまり顔はみえないけれど、部屋に入ったときはあかるかったし何度も昼間の下で顔をみているので輪郭だけでもその容姿などはわかる。輪郭だけでもいいな。輪郭イケメンじゃん。わたし余計なことを考える。
「じゃあ、足の指、こ、小指を舐めてほしいの」
 わかったとは声にださないけれど彼はわたしの上から降りていきそのまま下に這い降りてわたしの右足を持ち上げて、何度か下見をしたあと、ゆっくりと右足の小指を舐めはじめた。ああ、こうしてキスをしているんだなぁと小指を通じてわかる。
 舌の使い方が如実に伝わってくるのが小指なんだよね。とヘルス仲間のナオちゃんがいっていた。ナオの脚が好きな客がいてさ、まあ脚ばっか舐めるわけ。特に指先をさ、舐めるわけ。でもさ、気がついたんだよね。足の指を舐められるのがいちばん感じるってことにね。へへへ。ナオちゃんはとてもブスだけれど脚だけはきれいで脚フェチの客がよくつく。へーそうなんだ。わたしはあまり関心のないふりをしつつも今こうしてみるとなるほど感じるかもしれないなとおもう。
 わたしの好きな男がわたしの足の指を舐めている。それだけでいろいろと頭の中がおかしくなりそうになっていて、ぬるぬるだったところがもっとぬるぬるになっていくのがわかる。ジュルジュルと音をたてて舐めている彼はいったい今なにをおもいなにを考えなにに向かっているのだろう。別にこんなことしなくても生きていけるのに。
「じゃあ、そのまま小指を噛んで噛みちぎって……」
 どうせならもっと感じたかったし、小指ならなくなっても特に差し支えないとおもった。こんなに感じるのだしじゃあもっと痛くされたら。そう考えるだけでまた子宮が震えだし体から熱気と魂があふれだす。
 わたしは自分で自分の乳首をつまみ、小指が徐々になくなっていく快感を味わう。ああっ、もっともっと。痛さが快楽を連れてくる。がりっという音がし、ふと足元をみると彼が仕事で使うナイフ持ち小指を切断してしまっていた。
 真っ白だったはずのシーツが真っ黒になっていてその上に彼がいて小指をわたしにみせながら白い歯をみせてほほ笑んでいるのがなんとなくわかる。目が暗闇に慣れてきたのだろう。血がバカみたいにあふれだし、けれど彼もわたしも一歩も動けないでいる。
 何分か何十分かわからないくらいの時間を過ごすとまた彼がわたしの上に乗ってきて股を割り箸のように割り、その屹立をわたしの内臓にぐさっと突き刺す。彼はひどく感じているようだったけれど、わたしはなんだか目がチカチカして天井が回るしふらふらするし酔ってもないのにグラングランでけれど腰が動くたびにあんあんと艶めいた声をあげ血だらけの彼の背中に腕を回しながら、もっともっとと叫んでバカみたいな声をあげた。
 ふと、薄目を開けると、豆みたいなものが落ちていて、なんだろうとじっとみつめるとそれは小さい頃こたつの板が落ちてきて爪が生えてこなくなったわたしにとって一番欠落をしている右足の小指だった。
 彼はまだ必死に腰を振っている。血だらけの中で。

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