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深夜にて

 深夜にヒカルくんからLINE電話が来てびっくりして電話に出ると開口一番に
『あいたいです。あやさん』
 甘ったるい声が耳に届きあたしは戸惑ってしまう。もう精神安定剤を飲んでしまったからわりときていたのだ。
『俺、スッゲー酔ってます』
 だろうなとおもったけれどだろうという気配の方が上回っていた。でなきゃ電話などしてこない。本当に困惑をしていて行こうとしているあたしといやいや薬飲んじゃったしまずいってという自分対自分のせめぎ合いに右往左往しやや無言の中、たまに聞こえてくるため息があたしの理性を崩壊させる。それはかき氷の上にかけたイチゴシロップが徐々に溶けてゆく感覚に似ている。
『……ね、え、あやさん。待ってるから来て……」
 ああ、もうだめだという諦観の元あたしは車の鍵を握りしめよしまだ大丈夫だというよくわからない確認をした上で彼のアパートに車を走らせた。幸いにも車で10分とかからない。
「おじゃまします」
 深夜の1時半を回っていたからとても控えめに挨拶をしドアノブを捻る。チャイムを鳴らしても彼は決して出てこない。勝手に入っていいよと以前からいわれている。奥の部屋。彼の寝室に彼は裸で寝そべっていた。
「あ、きたんだぁ。来るとおもった」
 その口調は酔っていてもしっかりしていてけれど約10歳も年下の男のいいなりになっているあたりあたしはもう笑うしかなく、きたよと素直に認めてしまう。
「脱いで」
 シャワーはしておりあたしはすぐに洋服を脱ぐ。上下ユニクロのスエットだ。脱いで彼の裸の上に重なる。彼は、そんなに俺のあそこが良くてあいにきてくれたの? 嬉しいともうなんだこの甘ったるい声はという声でささやくからあたしはもうすでにぐちゃぐちゃだった。彼のそびえ立つものを咥え彼の乱れた呼吸が下に溢れて来るともう身震いがし我慢ができずそのまま上から腰をおろした。うっ、だったか、あっ、だったかよくわからない声はどちらが発したかわからずに彼は腰を突き上げてきてあたしの腰を持ち上げた。気持ちいの? あやさん、ねぇ。あたしは首を横にふる。聞かないでそんなこと。あたりまえでしょ。とてもいうような視線を彼の目の中に落とす。彼の目は充血しておりそれにそれはやはり酔っている証なのだろうと納得をする。シラフの時になどそんな、気持ちいい? なんてことなどいったことなどもないのに。
 彼のものはあたしの奥の中に入り込んでなんじゃこれはという感覚にさせまさに中毒性がありだから厄介なのだ。最後は彼が騎乗位になり渾身の力を込めてあたしの股を割り箸のように割り、イクと控えめな声をあげ果てた。それでも呼吸はさほど乱れてはいない。若さかと若さを逆に突きつけらて一瞬悲観的になってしまう。
「眠いなぁ」
「うん」
 帰らないといけないなぁと頭の中はそうおもっているのにどうしても体がゆうことを聞かず結局朝を迎えてしまい、えっ? あやさん? なんて彼があたしを認めたあとぎょっとした声を出し、ああそういえば俺酔ってて電話しちゃったんだねと自分の頭をなぜた。まだ裸だったので彼は朝またあたしを抱いた。やや明るい部屋の中ではあたしはとても恥ずかしくなるべく顔を背けた。年上だしなぁとかシワとかシミがぁとか。邪な思考は快楽の妨げになる。だからセックスは暗い方がいいのだ。
「じゃあ、あたしいくね」
 彼は10時出勤なので先に出る。うん、じゃあねと彼は手を振った。彼は一体あたしをどう見てるのだろう。まあセフレだろうだけれどモテるはずなのに。あたしはきっとめんどくさくない部類なのだ。実際めんどくさくないけど。
 彼にギュと抱きつく。そして好きとつぶやいた。
「ふふ。ありがとうございます!」
 彼はやはり元気だしげんきんな奴だ。
 おもては非常に明るく秋晴れだった。腹が減っていたので彼のうちから3分の吉牛に入った。何年ぶりだろう。朝定食を頼むと安定の朝飯が出てきてわっと声をあげる。味噌汁がまあなんというかもう泣けるレベルで美味しかった。実際泣いていた。他にお客さんはおじさんらしき人2人だけ閑散としていた。
 窓の外に目を向ける。朝から国道にはたくさんの車が走っていて忙しない。あたしは結局ご飯粒には手を出さなかった。吐きそうだった。
 午後から仕事に行こうと決めその前にシャワーをしてと頭の中でスケジュールを立て吉牛から踵を返す。

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