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数独2

「これ、この前やったやつだよ。またするの?」
 腰が痛いけどねという修一さんにまた会っている。腰は徐々に痛みを増していて今日はややいい日だと自分にいい聞かせるようにいう。
「うん。今日はできそうな気がする」
 以前、隠れ家のような場末のホテルのロビーにあった地元のフリーペーパーの中にある数独のページを開きボールペンを取り出した。
 この場末のホテルは、いま地元でみている現場から近い。なので自動的にここへくるようになった。
「そう」
 いやいやそれかなり難易度が高いよといおうとしたら、これかなり難易度高いぞといわれて、わかってるじゃねーかと心の中で毒を吐く。
 なんとなく以前書いた文字が浮かんでくるわたしと修一さんは、なんとなくわかった、あーみえたぁといいつつ数字をうめていく。が、しかしある程度まで来ると
「ダメ。やめていい?」
 ボールペンを持つ手が止まる。そしてわたしと目があい、クスクスと笑い合う。
「いいよ」
 数独仲間じゃないしねといいながらまた笑った。
 腰が痛いと嘆くので、しないとおもっていたけれど、流れでついベッドで裸になり、抱かれた。死んでもいい……。殺してぇ……。修一さんのそれはもうわたしにとって毒だ。依存だし執着だ。修一さんはけれど決して悪いことをしているなどとおもってなどはいない。
 わたしとあい遊んでいるだけ。あるいは数独をしているだけ。そんな感じだ。不倫をしているのにちっとも悪いとおもっていない。まあわたしもだけれど。
「腰はいいの?」
 終わってそう訊いてみる。
「あ、そういえば忘れてた」
 へへへと笑う。無我夢中。どうして男と女になると頭の中が空っぽになるのだろう。そのときだけ誰がが乗り移るのかもしれない。信じられないくらい彼は変貌をするのだ。
 そうそう。となにかをおもいだしたかのようちょっとだけ笑いながら話しをしだす。なになに? わたし先を促す。
 現場によくブラジルの女性がきて『コレナニデキルノ?』とか『アナタノクルマキタナイネ』とかくだらないことを話しかけられるという。
「監督さん、あの女性と知り合いかい?」
 などといわれるらしい。
「参っちゃうよ」
 ほんとうに参っているようで髪の毛を撫でつけた。わたしは、なにそれー笑えるしといいお腹を抱えてケラケラと笑った。修一さんはわたしがお腹を抱えて笑うと喜んでまた笑わせようと面白いことをいいだす。
 わたしもまた誇張をしつつ笑うので余計に笑わせたいのだろう。
 いつまでたっても好きだし飽きることはない。けれどいつかは終わる。いや終わりにしないとならない。
 わたしと修一さんはお互い共依存なのだ。彼はわかっているのだろうか。
 サービスドリンクについてきた小袋に入ったキャラメルコーンを開けて一緒に食べる。たまに食べるとうめーなぁといいながら。
 『たまに』だからね。わたしもうなずく。
 『いつも』ならいらないでしょ? 甘いから。お菓子だから。
 クスクス笑うと、なに笑ってんの? そんな顔をされたからわたしはなんでもないよという顔をしてキャラメルコーンに手を伸ばす。

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