見出し画像

9月21日

 同じ時間に2人の男から『会いたい』というメールがきてなんでこんな同じタイミングでという驚きの中なんとかして2人に会いたく時間を計算機で計算し会うことにした。
 あたしが会いたいときには無視をする男どもなのに自分が会いたいとゆうかセックスしたくなれば本能のまま連絡をよこしてくる。都合のいい女であるあたしはけれどそれを決して無下にはできずホイホイとゴキブリのように着いていき罠にはまっている。
 既婚の彼とはもう別れよう別れようと決めているのにメールが来るとやはり舞がってしまいバカなのでつい返信をしてしまう。
 年下の子とは15時に約束をしていたので既婚の彼と会ったのは13時くらいだったからまあ間に合うだろうと踏んでいたけれど今日に限って彼は妙に情熱的にあたしを抱いた。
「なんかどうしたの?」
 いつもと感じが違うから質問の形をとると
「いや、ほら、下着だったからなんか興奮した。俺さ、もしかして下着フェチかもしれない。なんなら脱がないでいいかもしれんな」
 一瞬言葉に戸惑いがあったけれど、あっ、そうなんだ! といいじゃあ今度から下着もっとかわいいのにするねとなぜかあたしも調子に乗った。彼の目が爛々に輝き、うんうんそうして! とまるで子どもが鬼滅の刃のお菓子でいいシールが当たったような笑顔を見せるからはははと薄く笑った。今頃いう? それ? 性癖を? とも思ったけれど過去を振り返ってみると下着フェチだったことを公言したことがあったような気がしないでもないようなけれど彼だったっけか? という確信がなかったのでそんなに驚きはしなかった。
 今日はシャワーをしないで急に押し倒されたのだ。変な下着じゃなくてよかったと内心ホッとしたのはまああたしだけじゃないだろう。
「Tバックにしてよ」
 そんなもの持ってないしといおうとしたら、なんてねと舌を出した彼がとてもかわいく見えて泣きそうになった。かわいいじゃんかよ。おいおい。普段は大人然としている彼はたまに子どものような振る舞いを見せるのは果たして意図的なのか故意的なのかさっぱりわかならない。男は総じて子どもなのだ。やっぱり。あたしの方が年下だけれど精神年齢はすっかり敬老の日に当てはまるくらいの年齢である。
 ごめんあまり時間がないんだよねと言葉にした時にはすでに15時半を過ぎていた。まずい。そうおもっているとタイミングよく彼がもう行くかといってくれホットするもすでに時間が過ぎているし年下の彼とはもう時間的に会えないなと諦めていたけれど、今から向かうというLINEをし彼の職場近くのコンビニで待ってみた。
 案の定既読にならずしばし車の中で待つ。彼は繁華街で飲食店の雇われ店長をしているため休みという休みが15時から16時過ぎまでしかなくその合間を縫って今まで会ってきた。
 彼に会いたい。顔だけでも見たい。彼のお店の前まで行きLINE電話をかけると繋がり
『ごめんなさい。遅くなって』
 開口一番で謝る。
『いや、いいっすよ。もう時間ないしまたで』
 眠たそうな声だった。眠っていたのだろう。ごめんなさい、あたしはまた謝る。
 やや沈黙があり
『実はね、今お店の前にいるの』
『え? まじっ?』
 そのやりとりの後電話が切れお店のシャッターが開き彼がやはり眠たそうな顔をして出てきた。
「ごめんなさい、なんか」
「いやいや、だからいいですって」
 あたしは人がたくさん歩いている中彼に抱きついた。おおう。彼は焦るもさほど否定もなくなすがままになっている。
「顔が見れてよかった」
 バックから抱きしめていたので顔は見えない。奥にはバイトらしい男の子がぼーっとつ立っていた。
 やんわりと体を離されて
「この辺りの人皆顔見知りだから……」
 恥ずかしそうにつぶやく彼がまたかわいくて泣きそうになった。ごめんなさい。で、またあたしは謝る。
「いいっすよ」
 彼はにっこりと笑いあたしの顔をじっと見つめた。
「蠅みたいですよ」
「ん? はえ? とは?」
 まあ、いいっす。なんでもないっす。と彼はまたいい、クスクスと笑っている。
「じゃあ、これ受け取って」
 あたしは彼の手に千円札を置いた。おこずかい? いや時間を守らなかったおわび? 子どもにおこずかいをあげるお母さんにでもなった気分だった。
「わーい。ありがとうございます!」
 クッソー。かわいいすぎるーとまた泣きそうになるも『蠅みたい』の意味がわからなくてなんとなくめまいがした。腹が減っているのかもしれない。
「また連絡してね」
「はーい」
 彼は気だるいく雑な返事で店内に戻っていった。奥にいたバイトが一部始終見ていたから『店長なんですか? 愛人やってんすか? ツバメ?』あたりのことを聞かれたかもしれない。彼はきっと『そうツバメ』というとおもう。まあ千円しかあげてないけれど。
 空はすっかり西日のシャワーになっていてけれどあまり眩しくないことに気がつき、はっとなってサングラスを外した。
 急に明るくなった世界にあたしはまためまいを感じて急いで車に乗り込んだ。
 なるほど。サングラスが黒いし服装も黒っぽかったから『蠅』に例えたのだろう。
 ふふふと笑いが胸の奥から笑いが込み上げてきて薄気味悪く笑うとさらに空腹を意識しちょうど目の前にあったファミマでタマゴサンドとカフェラテとファミチキを買って手を消毒しムシャムシャと食べた。
 最近食欲がなくああ栄養失調かもしれないなんておもってはいたものの人間はそうも簡単に栄養失調などにはならないし死なないことを知っている。
 栄養失調で死ぬのは嫌だなとまた死にたいと考えるあたしはタマゴサンドがあまりにも美味しいし綺麗な夕焼け空の中、もう少し生きることにしようとまた懲りずに考えて泣きながら食べている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?