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2月27日 3キロ

 出血を止めるために飲んでいる中用量ピルのおかげ? いやいやそのせいで(本当は運動不足)ななんと10日で3キロも肥えもともとぽっちゃりがさらにパワーをアップさせひとまわり大きくなったしおっぱいも尻もでかくなった。
 副作用で『太る・浮腫む・吐き気・倦怠感・性欲減退・乳首痛』などの記載があったけれどまあそんなことないだろうし何せもともとヤク中だしまああたしは絶対に大丈夫という変な確信があって過信をしていた。おっぱいがぁ……。でかくなった。けれど痛い。特に乳首が。『吸って』と気軽にいえない。

「原稿を取りに来た」
 昨夜徹夜だったので(仕事で)起きたら午後の1時だった。
「ごめん。遅くまで悪いね」
 いやいやキリがつかなくて。と殊勝の言葉をいい、てゆうか眠いぞまだと内心で毒づく。
「はい。次の原稿」とまた新しい原稿を渡され顔をしかめる。
 もう何年もしてきたことだけれど在宅でするのはなんかとても新鮮でいい。いつやってもいいし出来てさせいればいいしあと身支度をする手前もなくいつも同じ格好でもいい。無口でもいいし好きな時に飯が食えるしまいちゃんの夕飯を必ず作っておくことができる。それにまいちゃんが帰ってくるのがますます楽しみになっている。まいちゃんらぶ。
 もともとは在宅希望だった。だから何年かごしやっと願いが叶ったわけで。
「あまり無理しないでね」
「はぁ」
 おいおい待てよ。今まで無理をさせあたしをココまで追い詰めたんんじゃねーのか? ともいえず、はいがんばります。とこたえる。

「そうそう、宮司がさ、」
 クライアント先の宮司さん(寺の広告をいただいている)のお話になる。
「なんかあなたを気に入ったみたいでさ」
「へー」
 夏に一度だけあっている。宮司さんは未婚の70歳。いや71歳か。
「なんでかな」
 眠い頭で訊いてみる。風がビュービューで窓がガタガタいっている。おじさんはクスクスと笑いつつつづける。
「初恋の女の子に似てるんだってさ」
 はぁ? 出た出た。常套句が。宮司さんだけどまんこが舐めたいんじゃねーの? なんなら相手してもいいよ。えー? おじさんはサーっと顔色を変えじゃあ俺としてよ。したいなぁ。溜まってるから。なにぃ? 溜まってる? てゆうかあたしいまさめっちゃ体調が悪いんだけれどわかる? 
 あたしは座っているおじさんの背中を思い切り蹴った。蹴ったとき前かがみになったおじさんの頭が以前にも増して禿げていてそれを見たらサザエさんの波平を思い出しああ波平の大事な一本の隠毛のような毛を抜いてみたい衝動にかられつつおじさんの心もとない髪の毛に手を添えわしづかみにし一気に引っ張る。プチプチとギシギシという嫌な濁音があたしの耳の中に侵入しキャとつい声を上げる。手の中にはおじさんの白髪と黒毛が混じった陰毛みたいな毛が纏わりついていた。きもっ。溜まってるとかいうな。きもっ。傍らにあった裁縫用のハサミでおじさんの頭のてっぺんを刺す。グニュという感覚があたしを高揚させそのまま温泉が出てこないかなぁとボーリングをしてゆく。マダァ? うん。マダァ。出ないねぇ? 本当に温泉でるの? もっと深くしてみて。おじさんの顔が血まみれになっていてその顔を一度パンチしたら今度は鼻から血が出てそのあと温泉が湧き出たと喜んでいたらキタねー鼻水でまたグーでパンチをした。おじさん? 声をかけるけれど全く反応がない。ポーリングはハサミでは限界だったのでえの長いほうきを持ってきてさらに奥に進む。けれど無理だった。おじさんはなんか死んだみたい。

「じゃあ、帰るね、出来たらLINEして」
「はい。えっと、」
 ん? おじさんは窓の外を眺め目を細める。タバコが吸いたいのだろう。
「温泉行きたいな」
「お、いいよ」
 やったぁ。あたしは手をあげて喜ぶ。けれど結果的に温泉はどこを掘っても出ないんだよ。とおじさんに今度教えてあげようと思う。
 乳首が痛いなぁ。あたしはノーブラで過ごす。痩せたいなぁでもなんかでもどうでもいいなぁとの狭間で揺れて夕食は餃子を食べた。まいちゃんと。

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