大人になる

子供の頃は、形に残るモノが欲しかった。
それが一生変わらない確かなものだと思っていたから。
お気に入りのおもちゃでも、シャーペンでも、服でも。
モノが絶対的な価値で、その価値で自分を守れると信じていた。

でもモノは遅かれ早かれいつかは朽ちる、色褪せる、買った時のワクワクももはや残っていない。
自分がそれらに期待していた価値は永久的なものじゃなかったんだと気づいた。

その代わりに、ずっと変わらないものは自分の経験や記憶だったのだとわかった。
自分が何を考えて、何を見て、何を話して、何に挑戦して、失敗して、誰のために何をしてあげられたのか。
それが自分の存在価値を守る唯一の確かな武器。
自分が確かにこの世界に存在したことを、あなたと私の記憶の中で証明するもの。

おじいちゃんになったら全部忘れちゃうかもしれないけどね。
変わらねえなんて嘘じゃん、と思う日が来るのかな。
まあでも、その意味はその時の自分がまた気づいてくれるでしょう。

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