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前立腺癌4 術後編

 前立腺がんシリーズの最後は、手術後の話をまとめてみました。
 腹腔鏡下 ロボット支援 前立腺全摘徐術を行ったあとの、入院中、退院後の様子です。

10日間の入院生活

 手術後10日間、体調回復のために入院しました。前立腺癌手術の場合の標準のようです。今どき、入院期間が短くなっていると聞きますので、まあまあ大手術なのかなと勝手に考えています。

自然治癒・手当て・呼吸

 お腹の表面や骨盤の中の臓器をあちこち切ったり縫ったりしているので、手術後の回復は、基本的に自然治癒力に頼るんですね。擦り傷が自然に治るのと同じです。
 医療用麻薬や痛み止めなどを徐々に減らしながら、自然と傷口が塞がるのを待つ感じです。
 これって、当然の話かもしれませんが、個人的にはちょっと意表をつかれました。回復を促進するための治療や投薬がもっとあるのかと勝手に思い込んでいました。
 もちろん、手術の技術そのものが、ダメージが少なくて、より回復しやすい方法に進歩しているし、重篤な合併症(例えば大量出血、感染症)を回避するための措置、監視は医療スタッフ総出で万全に対応してくれます。
 ただ、結局のところ、傷を治す根本の力は、自分の体力なんだな、というふうにひしひしと感じました。

◯傷口の痛みを和らげる方法
 "手当て"と"呼吸"がとても役に立ちました。
 治療することを手当てすると言いますが、本当に、手を当てるだけで痛みが緩和するんでね。不思議です。
 また、深くゆっくりした呼吸も痛み緩和にとても有効です。気のせいかもしれませんが、とにかく実際に役に立った技です。
 漫画"北斗の拳"のなかで、ケンシロウの兄トキが手のひらを傷口にかざして治療するシーンや、漫画"鬼滅の刃"で描かれている、傷口を塞ぐシーンの呼吸法を思い出しながら、リアルにわくわくしながら試していました。

◯回復を促進するために
 "歩く"、体を動かす。
 看護師さんからは、とにかく歩きなさい、体を動かしなさいと言われます。
 術後初日はベッドから起きるだけでやっとな状態でしたが、なんとか50メートルほど廊下を歩き、その翌日から徐々に距離を伸ばしていきました。体に管が繋がったまま歩くのは大変でしたが、自分でも、たくさん歩いた方が良いことが体で理解できたので、点滴に使うコロコロ支柱と一緒に結構頑張って歩きました。
 歩いた方が良い理由は、おそらくこんなところかと。
・全身麻酔で停滞している臓器の目を覚まさせる。
・手術時に腹の中に充満したCO2をより早く体外にだ出す。
・足腰の筋肉の衰えを回復させる。
・血液循環や排便・排尿の活力を促し、腸や膀胱の活量をふやしてあげる。
・エコノミー症候群(血栓)にならないようにする。

膀胱留置の尿道カテーテル

 膀胱と尿道を一旦切除して縫合しているので、繋がるまでの期間は、このカテーテル(細い管)を使って排尿します。
 1週間ほどそのままなので、抜けないように、膀胱の中では管の先に風船のようなものが付いているそうです。
 管は、膀胱の中から尿道の中を通って、おチンチンの先っぽから出た後、尿を溜める透明な袋まで繋がっています。入院中は、水やお茶をどんどん飲めと言われます。一日に500ccを3本飲めと。なので、どんどん尿袋に尿が溜まり、看護スタッフさんがしょっちゅう取り替えにきてくれます。初めのうちは恥ずかしかったけど、尿の量や色を診てくれる大事な健康診断だ、と思えば、そのうち慣れてきます。

 それよりも、おチンチンの先に管が刺さっているという、なんとも言えない違和感は付き纏います。
 挿入するのは全身麻酔時なので状況がわかりません。管が入っている間は、痛みはほとんどないけれど、精神的には情け無い気持ちになります。歩く際は微妙に管が動くのでモゾモゾします。おしっこが出る時は尿道部分が少し嫌な感触です。お風呂も管や尿袋が繋がったまま一緒にシャワーします。

 尿道カテーテルが取れたのは、手術後7日目で、最後の最後でした。看護師さんと二人でレントゲン室に移りベッドに寝ます。お医者さんが膀胱と尿道の縫合部分を画像でチェックしながら、カテーテルを抜いてくれます。この時はオチンチンの内部に中程度の痛みが一瞬と嫌な鈍痛がしばらく残りました。そして、仰向けで寝たまま、看護師さんが紙オムツを履かせてくれます。なんとも情け無い気持ちですが、自分で履く余裕もなく、ただ、まな板の鯉です。

骨盤に溜まった血液を出すドレーン

 腹の中をあちこち切っているので、しばらくはどうしても出血したり滲み出てきます。その血液が骨盤に溜まるので、それを外に出すための管が、6箇所の穴のうちの一つ、右側の穴から出ていて、透明の袋に繋がっています。これで体内の出血状況がわかります。
 出血量は大したことはありませんが、なんせ真っ赤な血なので、気持ちの良いものではありません。

 このドレーンは、手術後3日目に取れました。ベッドまでお医者さんがきて、管をヌルッと抜くだけです。麻酔も何もありません。痛くはないですが、腹の中の臓器をヌルッと触られているようで気持ち悪いです。が、これで右半身の管がなくなり、随分と動きが楽になりました。

手術の3日後

点滴

 左手の甲に針を刺して、管から鎮痛薬などを点滴します。手術の翌日までは医療用麻薬と呼ばれる強い鎮痛薬も一緒に点滴してました。
 手術後2日目には取れて、鎮痛薬は飲み薬に替わりました。退院まで、カロナールを毎食時に服用しました。

便秘・くしゃみ・咳

 個人的には、便秘が一番苦しかったです。
 下腹部が痛くて力めないのと、腸の働き自体が鈍るらしく、なかなか便が出なくて、お腹が張ってきます。すると、傷口に痛みが走ります。漢方薬だけでは辛かったので下剤をだしていただき、なんとかやり過ごしていました。
 排便の大切さが身に沁みました。
 今回、一番の激痛は、くしゃみをしてしまった時です。乾燥のためか、喉がガラガラしてきて、廊下を歩く最中に、思わずくしゃみが出てしまい、刹那、下腹部に電撃の激痛が。立ってられなくてしゃがみ込んでしまい、看護師さんたちが慌てて介抱してくれました。くしゃみや咳は、下腹部を手でしっかり押さえてすべきです。すっかり油断してました!

これを一日3回飲みます
病院食 結構美味しいです

退院後

 退院後は、安静にしていれば傷の痛みはほとんどなくなりました。ただ、電車通勤や長時間打合せには難儀しています。

体力低下

 想定外だったのは、体力の低下です。坂道を歩くだけで息が上がるし、満員電車で揉まれるのは立ってられないくらい疲れます。ノードパソコンを入れた通勤カバンが重くて疲れます。
 ただ、これは運動して体力をつけるしかないと思うので、リバビリ散歩の距離を徐々に伸ばしていくことで、退院後1ヶ月程でだいぶ体力はついてきました。

尿漏れ

 尿漏れは初めて体験しました。
 予めの想像では、じゃあじゃあとおねしょの様に漏れるのかと思ってましたが、そうではなく、何かの拍子にチョロっと漏れます。失禁とは別ですね。くしゃみや咳をした時、立ち座り時、酒を飲んだ時などです。
 医者からは、数ヶ月単位で回復していく、大概は3ヶ月程度は後遺症が残る、と言われています。
(対策)尿取りパッド
 おそらく私の場合は、とても順調に回復しているようほうで、尿漏れはそれほど気になっていません。長時間の外出時や酒を飲む時に、男性用の尿取りパッドを使っていますが、その頻度も少ないので、そんなにストレスは感じません。
 ただ、尿取りパッドを買ったり使ったりことについては、ちょっと恥ずかしいという気持ちがあります。ドラッグストアの売り場は、介護用品か生理用品のコーナーにあるので、おじさんが一人で買い物するのに、他人の目が気になってしまいます。今後、慣れていくかな。
 尿取りパッドは、色々なタイプがあるのですが、私は最も小さなサイズで大丈夫です。初めは使い方も何もかもわからなかったのですが、最初、病院の売店で購入した時に、売店の店員さんが親切に使い方や種類の説明をしてくれたのでとても助かりました。
 パンツの内側にペタッと貼るだけですが、注意点はパンツのタイプです。一度、ブリーフタイプのパンツに貼り付けて外出したら、歩いているうちにパンツから外れてズレ落ちてきたことがあります。パンツはポクサータイプのように、タイトなタイプが無難です。
(リハビリ)
 尿漏れの原因は、骨盤底筋という筋肉がうまく機能していないことです。なので、骨盤底筋運動なる筋トレを日々行って、回復を目指します。入院中、看護師さんから骨盤底筋運動の指導を受けますが、YouTubeなどにもたくさん紹介されてます。簡単に言うと、肛門周りの筋肉を緩めたり締めたりする運動です。

膀胱、肛門周りの嫌な圧迫感

 椅子に座ると、膀胱から肛門にかけて嫌な圧迫感があって、連続30分でもきついです。痔のときに便利な丸い座布団を買って使ってますが、とても助かってます。
 前立腺がなくなった後にできた空間はどうなっているんだろう、尿道が何センチか短くなったはずだけど、などとお腹の中を想像したりします。
 ただ、この違和感も、時間と共に良くなる気配があるので、それほど心配はしてません。

便意、尿意を我慢できる時間

 便意、尿意を感じてから我慢できるまでの時間が短くなりまった気がします。通勤途中でもトイレに寄って用を足したりしています。これから元に戻るのでしょうかね。あまり我慢すると、腹の奥がピリッと痛みます。

 以上が、退院後約2ヶ月目の体の状態です。
 もう少し時間が経てば、もっと体調は良くなる気がします。

今の気持ち

 健康診断のPSA検査から始まり、各種検査を経て、手術を終えた今、感じていることを整理してみました。
 今回、癌を患って、今思うこと。

癌は特別

 今は医療技術が進んで、癌も治る病と言われたりしますが、実際にがんセンターに入院して周りの治療の様子をみると、癌は他の病気と違うことつくづく感じました。
・放置していても治らない
・放置すると転移して命を奪う
・治療も命懸け
 治療方針などは、素人が安易に判断するものではないと感じる一方、決めるのは素人の自分に任される。当たり前だけど、判断が難しい病だなと感じています。

感謝

 今回、癌を患ってみたら、親族はもちろんのこと、職場の人々が、様々に温かな励みの言葉をかけて頂きました。入院中などはこれらの一言一言が不思議と思い浮かんで、ちゃんと治療しよう、社会復帰しよう、健康になろう、という気を持つ原動力になりました。
 職場復帰の際も、お祝い会を開いてくれたりして、本当に有り難いです。

悔いのない生き方

 身体が元気なうちに人生を楽しまないと!
と、妻と話しています。
 別に贅沢したいというわけではないのですが、やりたいことはちゃんと楽しみたい。
 子供の成長や親の介護と重なって、思い通りにならないことありますが、自分の人生をもう少し大切にしようと思うようになりました。
 まずは、プチ温泉旅行の予定を立てるところから始めています。

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