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【神社の世界】#59 上色見熊野座神社

2022年7月11日
 久しぶりの神社参拝です。
 熊本県 南阿蘇 高森に鎮座する
   上色見熊野座神社
 かみしきみ くまのざ じんじゃ

 苔むした参道の両側に沢山の灯籠が深山にひっそりと立ち並ぶ神社です。この光景が"異世界"と呼ばれて、SNS上で時々取り挙げられているで、一度は訪れてみようと思っていました。元々は、"蛍火の杜へ"という漫画・アニメの舞台として話題となったようです。

上色見熊野座神社

参道・灯籠

 イザナギ、イザナミの神様が祀られている山奥の小さな神社です。
 入口は、国道265号沿道の鳥居ですが、一見、農村によくあるごく普通の神社です。
 参道はひたすら真っ直ぐの階段で、山を直登します。参道を数分歩くと杉林に囲まれた薄暗い空間で、趣のある苔むした灯籠が良い演出をしてくれます。

神社の入り口
苔むした灯籠が美しい
参道途中の二の鳥居
すっかり森の中
振り返ると
美しい苔がいっぱい

社殿

 灯籠、階段の先に小さな社殿がひっそりとありました。常駐の神職はいらっしゃいませんが、とても手入れが行き届いた清楚な社殿です。

拝殿
左奥が本殿

穿戸岩(うげといわ)

 社殿の左側には、更に山を登る道が続いています。ここを5分ほど登ると、尾根の頂上にとても不自然に置かれている巨大な岩石が現れます。この大岩は、奥行き(厚さ)が5メートル程度の壁状の岩盤で、下部には縦横10メートル程の大穴が空いています。写真ではうまく表現できませんが、どうみても不自然なのです。一枚岩でできたアーチ橋のようです。

 この場に立つと、一瞬でぞぞぞっと身震いがします。明らかに人知を超えた力を感じます。そして、この大岩が、熊野座神社の御神体であることを確信します。古の人々がこの大岩を祀ったのが神社の始まりなんでしょう。

 解説看板などは現地に何もありませんが、この大岩は、"穿戸岩"(うげといわ)と言うそうで、阿蘇火山の神さま健磐竜命(阿蘇神社祭神)の従者"鬼八法師"(阿蘇霜神社祭神)が蹴破ったという伝説が残されているそうです。
 戸を穿(うがつ)つ岩ですね。

何やら大岩らしきものが・・
? もしかして穴が ?
大岩のトンネル?
結構薄い。岩盤の壁、アーチ橋
大穴
幣で結界が張られています。
尾根部なので、穴の向こうは崖落ち


 穿戸岩は、阿蘇火山から噴出した砕屑物が堆積した"火砕岩"のうち、塊・礫を含んだ火山灰主体の"凝灰角礫岩"という岩石でできています。なので、表面は結構、ゴツゴツとした粗い岩石です。

高森玄武岩質凝灰角礫岩
ゴツゴツした凝灰角礫岩

阿蘇の成り立ち

 阿蘇火山は、4回の大規模な火砕流噴火によって形成されたもので、最大のaso-4の火砕流は、なんと島原や山口まで広がっていると言います。このaso-4噴火により大規模な陥没が起きて、現在みられる世界最大のカルデラができあがりました。そして、カルデラの真ん中にある阿蘇五岳(涅槃像)もこの時できたものです。
 ただし、涅槃像の頭部分に位置する"根子岳"だけは、年代が古いようで、15万年前のaso-3の生残りだそうです。稜線が凸凹した歪な山で、麓から見上げるヘンテコな山を眺めると、なるほどと思います。

 根子岳の南麓に広がる高森は、学生時代にすき焼大会をやっていた鍋の平、河川工学の勉強で訪れていた白川水源がある地域なので、個人的に親しみがある土地です。

 阿蘇の特徴的な地形については、たくさんの伝承が残されています。例えば、阿蘇の神様が外輪山を蹴破ったのが立野で、そこから阿蘇の溜まり水が流れ出したのが白川。そして阿蘇の大ナマズが流された先が熊本市内の鯰地区。こんな昔話は、小さな頃から自然と知っている伝承です。

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