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《欠けた記憶》

 カイは頭痛で目を覚ました。二日酔いのようなだるさが体を襲う。カイは朝食の準備をするために重い体を起こして、台所へと向かった。台所に入った時、自分の目に映った光景に頭を抱えた。テーブルの上にはお酒の缶が転がっており、ゴミが散乱していた。
「はぁ、またか」
こんなことは初めてじゃない。カイは元々お酒をそんなに飲まないし、常に部屋が片付いてないと落ち着かない性格なのだが、朝起きると部屋が汚れているということが最近起きている。少なくとも週に一回起き、かれこれ三ヶ月となる。その日の前夜のことが思い出せないことがほとんどで、朝起きた時に知らない女性が隣で寝ていることもあれば、怪我をしていたこともあった。その度に何度もお酒をやめようと考えていたが、いつの間にかお酒に手を出しているのだ。

───ある日の夜
一人の男が道を歩いていた。それに関しては何ら不思議なことは無いのだ。言っている独り言に問題があるのだ。
「んだよ、しけた財布だな。金はこれっぽっちしかないのかよ。これが社会人の財布なんかね」
決して盗んだわけてばない。そこに入っている免許証の写真は本人そのものである。ただ彼も彼で朝と昼の記憶がないのである。
「ミシロ カイねぇ…名前は違うけど顔が一緒なら大丈夫か」
彼はお酒を買うためにコンビニへと向かった。

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