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《遊び·冗談·ネタって言うけどどこまで?》

《注意》
こちらの小説は少しグロテスクな表現が含まれています。

 ピロンッ
「よしっ!」
今日もいい動画が撮れた。題名は「知らないカップルの修羅場を撮影してみた」だ。他人の不幸を撮影してそれをSNSに流すのが俺のネタ投稿。これがよくバズるんだわ。批判的なコメントもあるが、ネタだから本気にすんなよな。みっともない。
 俺は帰宅するために来た道を引き返した。動画を撮影した日はなるべく人が少ない道を選ぶ。少しでも身バレを防ぐために。すると…
ドスッ
頭に鈍痛が走り、俺は意識を失った。

 気がつくと俺は暗い部屋の中にいた。椅子に座らされて、手足を椅子にくくりつけられているみたいだ。目の前には赤いライトが点滅していた。…あぁ、タダのライトじゃない。録画を意味するビデオカメラのライトだ。俺は誘拐されたのか?誰に?身代金はいくら位だろうか。そんなことを考えていたら部屋の電気がついた。床·天井·壁全てがむき出しのコンクリの部屋だった。どこかの地下室かな。
「やぁやぁ、起きたかな?」
視界に入ってきたのは、仮面をつけた男。道化師を連想させる見た目をしていて、不気味だ。
「……ッ!?」
誰だと聞きたかったが、口にテープが貼られており、声が出せないことに今気がついた。
「お前は誰だと言おうとしたのかな?気にしなくていいよ。これは『遊び』なのだから」
心が読まれたようで腹が立つ。
「おっと、そんな怖い顔しないでくれよ。冗談じゃないか。…実はだね、以前君が投稿した動画の人、個人が特定され、誹謗中傷を受けすぎたせいで妻と子を残してこの世を去ったそうだ。以前なんて言ってもやりすぎて誰か分からないよね?いいんだよ、分からなくても。誰かなんて関係ないからさ。関係するのは『君のせいでその人は死んだ』ってこと。それで君が生きてるなんて、フェアじゃないよなぁ」
すると背後から取り出した斧を俺の足に目掛けて振り下ろしてきた。何度も何度も。
「グアッ…!」
口からは声にならない音が漏れた。
「どうした?痛みを感じられて生きてるって気分だろう。そうだろう。そうだろう。死んだら痛みなんて感じられないものなぁ!ハハハッ!」
こいつは狂っている。なんなんだ一体…。痛みと共にこいつに殺されるのかという恐怖が心の底から湧き上がってきた。
「ほらほら、次は腕行くぞー!オラッ!」
気づいたら視界は涙で見えなくなっていた。
「見てごらんよ!血が流れているよ!綺麗な赤色をしているじゃないか!宝石のようだね!…おや?涙で見えなかったかい。すぐに見えるようにしてあげるからね?」
ドスッ…どうやら最後が顔だったようだ。顔から出た血なら…見えるだろ?ってか。ふざけ…やがっ…て。
「そんなに泣くなよ。これはネタ動画なんだから」
そう言って道化師の男は俺が死んだのを確認して、カメラを止めた。

この作品に込めた思いは、最近のSNSやニュースで広められている出来事などで、「こういうのはネタだから」や「遊びだよ」「冗談じゃん」といったコメントなどを数多く見てきて、この人たちのネタ·遊び·冗談ってどこまでが冗談なのだろうと感じた所から生まれた小説です。
この道化師も道化師にやられた男もどちらも「ネタ」としてやっていました。
これらは「ネタ」で済まされることなのでしょうか?

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