TikTokをやめる勇気
皆さん、お疲れ様です。
2022年11月まで3年間、某企業で公式TikTokの企画・運用を担当していた SHIN🇯🇵です。
今回はTikTokクリエイターの立場から退いて半年、俯瞰からプラットフォームを観察して思ったことを書きました。
当時は特にデジタルマーケ界隈でショート動画の優位性が広まっていた影響もあり、このアプリを良いツールとして受け止め、常にバズる方法を模索していました。
しかし運用担当としての関わり方を絶った今、私の考えは変化しています。
TikTokは当初、確かに発明だった
TikTokはショート動画サービスで、その優秀なアルゴリズムと独自のユーザインタフェースにより、2018年ごろから加速度的にユーザ数を伸ばしていったSNSです。
まずアプリを開くと、いきなりおすすめ動画が再生されます。
これが発明で、従来の検索窓を経由して欲しい情報に辿り着くサーチ型のプラットフォーム時代にとってかわり、まず一旦ユーザに動画を見させるという画期的なUIでショート動画時代を築きました。
TikTokを先駆けとして、現在のYouTubeショートやIGリールなどのショート動画機能が、多方面のSNSで実装されていくことになります。
もう一つは、レコメンド(おすすめする動画)の正確性が挙げられます。動画の離脱率や試聴時間のスコアを計測し、ユーザと相性のいい(ユーザが潜在的に求めている)動画をおすすめフィードに表示させます。そのレコメンド精度は先述のサービスと比較してもダントツでTikTokが優秀です。これが1つ目のUIの特徴と相乗効果を発揮し、ユーザを動画漬けにできます。
今やTikTokは私にとって、手間なく一瞬で・気持ちよくなれるもの出してくれる、まるで実家の食卓のようなサービスになっています。
その頃から流行り出した差別用語「Z世代」も、このTikTokを起点として爆発的に認知が広まった印象です。
なんとなく多様性という言葉に集約されるであろうダンスや音楽に合わせた動画は、最初は「何してるんだこいつ」って感じで恥ずかしかったけど、慣れてくると、意味もなく延々と見ていられる。
そんな合理性のない時間を含めTikTokは当時、確かになんか新しい感じがしたんです。
しかし一方で、そんなTikTokの実態はとても悲惨なものだと考えています。
TikTokは欲望を取り込み、無法地帯と化した
ここからTikTokの問題点を挙げます。
1つ目は、運営がほぼ全ての著作権侵害をスルーしていることです。地上波番組の切り抜きは完全にアウトなはずです。なのに普通におすすめに出てくるし、コメント欄にそれを指摘する声もありません。ユーザのリテラシーの低さが伺えます。でも、見てしまう。
2つ目は、エロ系ギリギリコンテンツです。承認欲求を満たすためにカラダを露出したり、胸を強調したり、腰を振ったりする女性。一般人の参入障壁が低く年齢制限もないので、中学生でそんな動画を投稿している子も沢山います。その仕組みが社会の役に立っているのか、些か疑問です。
エロ系の動画はユーザを釘付けにすること以上に、影響を受けた小さい子供たちが、不健全な承認欲求に侵されてエロ系の配信者になってしまうことがとても危険だと感じています。
「フォロワー0からでもバスれるSNS」とは、言い得て妙ですね。
3つ目は、ユーザがそんな動画を見続ける負の連鎖に陥ってしまうことです。人間は欲求に対しては弱い生き物です。見たいと思った動画は、たとえ違法であれ、不健全であれ、見たいのです。
これは著作権違反だから見ちゃいけない。この女の子の動画を見ても何も生まれない。そう頭では思いつつも、TikTokの魔の手はリテラシーを飛び越えてあなたの心を蝕みます。
そうしてTikTokは大衆の欲望を取り込み、レコメンド機能を用いて人間の欲望を増大させ、社会性に欠けるコンテンツは見て見ぬふりをして、なんとなく「新時代」と称して野放しにしてしまっているのです。
これはメディアをはじめとした悪い大人たちの責任です。
TikTokのバズと世間のバズにある差
デジタルマーケ界隈で賑わいを見せているTikTokですが、他のSNSと比べて、いいね数や再生数などの指標が簡単に伸ばせるアプリです。
ユーザはおすすめフィードから動画を見るので、興味のない再生も1回とカウントされます。また、動画の尺も短いので、1再生の重みはYouTubeと比べてかなり劣ります。個人的な感覚では20:1(TikTokの20万再生はYouTube換算で1万再生)ほどかと。
とはいえ数字には出やすいので、プレゼン時のインパクトは大きく、YouTubeは見るけどTikTokは…みたいな年齢層の人に対しては、この客観的指標を用いて「100万回再生!?TikTokってこんな簡単に認知を広げられるんだ!」と簡単に騙すことができるでしょう。
成功例もあるとは思うのですが、そもそもTikTokユーザは、TikTokをやるためにTikTokをやっているんだから、そこにビジネスチャンスなんてないと思います。再生数やいいねなどの客観的指標が表れやすい仕組みを広告代理店が利用して、企業にTikTokを広めるために「今の時代は」「Z世代のクリエイティビティは」と言葉巧みに、効果を誇張しながらポジショントークをしている雰囲気は否定できないと思います。
昨今のマーケ界隈では、まるで新興宗教かのような勢いでショート動画の優位性を語っている方々が多くいらっしゃいますが、その方々はTikTokが広まると儲かる人たちということを忘れてはいけません。ユーザが得るものは刹那的な快楽のみであり、そこに文化的なものは存在しないのです。
あと、若者は金がないってよく言われてますよね。なのにメインユーザの若年層にリーチしたら購買が増える。これ、個人的には矛盾していると思うのですがどうでしょう。ちなみに私の周りは真面目に働いている人ほどTikTokをやってない割合が高いです。
この部分に関しては皆さんのご意見を伺いたいところです。
TikTokを論理的に否定できる大人であれ
今回noteに書いた問題点はおそらく「TikTok」を「インターネット」に置き換えても成立すると思います。しかし私が提起したかった問題は、インターネット全体と比較してTikTokは違法コンテンツへの敷居が著しく低いという点です。正しく使えるかどうかのリテラシーが求められつつも、意思に関係なく一方的に違法コンテンツが提供されてしまうのです。その機能に対し危険性を呈するため、執筆に至りました。
健全な楽しみ方ができている人も中にはいらっしゃるかもしれませんが、おそらく相当数は少ないはずです。※主観
私の職業はデザイナーなので、著作権侵害については特にプライドを持って否定しなければなりません。そうでなくとも、ひとりの大人として否定しなければならない空間が、そこには確実に存在しています。
TikTokは違法動画の巣窟で、未成年の健全な精神発達を阻むコンテンツで溢れています。優秀なレコメンド機能がゆえ、違法不健全動画の沼にハマったが最後、次々とおすすめに類似の動画が登場します。それが常態化すると人生つまんなくなりますし、何も与えられない人間になっちゃいます。
たとえ実家の食卓でも、好きなものばかりでなく、ちゃんと嫌いなものも食べなきゃ不健康です。
もしあなたの周りにTikTokで違法動画、不健全動画を見ている友人・子供がいたら(このnoteを材料にして)いかに精神的に稚拙かを説いた上で、閲覧を辞めるよう促すことを強くお勧めします。
TikTokをやめる勇気
TikTokの問題まとめ
●著作権違反の動画が多く、取り締まりもかなり甘い
●エロ系動画は配信者とユーザ、どちらも狂わせる
●汚染コンテンツとレコメンドのアルゴリズムが組み合わさると地獄
●汚染コンテンツへの敷居が低く、それは一方的に提供される
●「TikTokアツい」は代理店により若干誇張されている可能性
以上の理由から、最近の私はTikTokに対して否定的なスタンスをとっています。
今回は私のプライベートからTikTokを完全に抹消するために執筆に至ったわけですが、ここまで書いてようやく、iPhoneからTikTokを削除しました。
スッキリとした気分です。TikTokにかけた時間はなんだったんだろう。禁煙に似てます(できたことないけど)。
さあ、あなたも勇気をもってTikTokを削除しましょう。
こんなものは偽りです。我々の生活に必要ありません。
さよなら、TikTok!
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