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Falcon 180Bのライセンス条件について解説する 

Falcon 180Bは、UAEのテクノロジー・イノベーション研究所(TII)によって開発され、1800億のパラメータと3.5兆のトークンでトレーニングされたLLMです。OSS(Open Source Software)として、Haggingfaceで公開されています。
OSSは無償で比較的自由に利用できますが、ライセンス条件を守る必要があります。特に、商用利用する際には注意が必要です。
そこで、本記事では、Falcon 180Bのライセンス条件(FALCON 180B TII LICENSE VERSION 1.0 September 2023。以下「Falconライセンス条件」)について解説します。Falconライセンス条件は、Haggingfaceに掲載されており、下記のURLに掲載されています↓。

Falconライセンス条件のベース

Falconライセンス条件は、OSSでよく用いられているライセンス条件のApache License Version 2.0に基づいていますが、これに一部変更が加えられています。
OSSを利用する際に主に確認すべき点としては、知的財産権の取扱いと、制限事項となりますので、Falconライセンス条件についても主にその観点から解説します。
なお、定義が若干ややこしく、「派生著作物」「貢献」「貢献者」「ホスティングサービス」についてはよく読んでおく必要があります。貢献者とは、Falcon 180Bの著作権者と、Falcon 180Bに改変を加えて著作権者に提出した者を意味します。

知的財産の取扱い

1. 著作権の取扱い

  • Falcon 180B及びその派生物の著作権については、ユーザには、複製、派生物の作成、公表、公の場での実演、サブライセンス、再配布するための、永続的、世界的、非独占的、取り消し不能なライセンスが付与されます(Falconライセンス条件2.1)。

  • 著作権のライセンス料は、ホスティングサービスをする場合除き、無償です(Falconライセンス条件2.2)。

Falconライセンス条件には、商用利用を禁止する規定はありません。ユーザが、Falcon 180Bを、商用目的であっても、複製、派生物の作成、公表、公の場での実演、サブライセンス、再配布することが認められています。

2.特許権の取扱い

  • 貢献者は、その保有する特許について、ユーザに対して、Falcon 180B及びその派生物の利用・改変等のために侵害が不可避な部分について、Falcon 180B及びその派生物の作成、使用、販売、譲渡等についての永続的、世界的、非独占的、取り消し不能なライセンスを付与します(Falconライセンス条件3.1)。

  • 特許のライセンス料は無償です(Falconライセンス条件3.2)。

なお、当然のことですが、無償ライセンスされるのは貢献者の保有する特許に限られますので、後見者以外の特許の非侵害が保証されているわけではありません。

3. 再配布

ユーザは、以下の条件を満たすことにより、Falcon 180B及びその派生物(自らが改変したものを含む。)を、あらゆるメディアで複製・再配布することが可能です(Falconライセンス条件4.1)。

  1. ライセンス条件は、再配布先がFalconライセンス条件を遵守する内容を含んでいること

  2. Falconライセンス条件のコピーを再配布先に交付すること

  3. 変更されたファイルについては変更されたことを明確に表示すること

  4. 派生物を再配布する場合には、派生元の著作権、特許権、商標、帰属に関する通知を維持すること

  5. Falcon 180B及びその派生物の配布物の一部に「NOTICE」テキストファイルが含まれている場合には、特定の場所に当該ファイルを含めること

  6. Falcon 180B及びその派生物の改変部分に自らの著作権に関する記述を含めることができるが、Falconライセンス条件に従っていなければならないこと

4.ホスティング利用

Falcon 180B及びその派生物のホスティング利用については別途ライセンス契約を締結する必要がある(Falconライセンス条件9.1)。
もっとも、バックグラウンドでFalcon 180B及びその派生物を利用するアプリケーション及び統合されたエンドユーザー製品の提供はホスティング利用にはあたらないとされています(Falconライセンス条件9.2)。
ホスティング利用とは、Falcon 180B及びその派生物に基づく共有インスタンスまたはマネージドサービスを推論またはファインチューニングAPI形式で第三者に提供することと定義されています(Falconライセンス条件9.1)。

制限事項

Falcon 180B及びその派生物は、「Acceptable Use Policy」に従って利用する必要があります(Falconライセンス条件5.1)。Acceptable Use Policyでは、以下の利用が禁じられています。

  1. 適用される国、連邦、州、地方、または国際的な法律または規制に違反する方法

  2. 未成年者及び/または生物を搾取し、危害を加え、または何らかの方法で搾取もしくは危害を加えようとする目的

  3. 他者に危害を加える目的で、検証可能な虚偽の情報を作成または流布すること

  4. 他人を誹謗、中傷、その他嫌がらせすること

上記の禁止事項は常識的な内容ですが、Falcon 180Bの利用が上記の禁止事項にあたらないように注意する必要があります。

また、Falcon 180B及びその派生物からの出力を利用して、Acceptable Use Policyに違反するFalcon 180B及びその派生物を作成することは禁じられています(Falconライセンス条件5.2)。

準拠法・裁判管轄

Falconライセンス条件には準拠法・裁判管轄の定めはありません(これはOSSでは一般的にみられることです)。
したがって、裁判管轄の有無は訴訟が提起された裁判所に適用される法により判断されます。また、準拠法は、原則としては、裁判が提起された国における国際私法のルールに従って決定されます。日本で訴訟が提起された場合には、「法の適用に関する通則法」に従って決定されることになります。

おわりに

このように、Falcon 180Bは、OSSとして、無償で商用利用が可能なLLMであり、利用に関する制限が大きくないライセンス条件であると評価できます。ただし、ホスティング利用をする場合には別途ライセンス契約が必要です。

拙著の「生成 AIの法的リスクと対策」の最後の方にOSSの取扱について記載していますので興味のある方はご覧ください。

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