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【AI】生成AIの社内ガイドラインのポイント

生成AIを企業で利用するにあたって、社内ガイドラインや社内規則を作ろうという動きが活発化しています。
「ビジネス法務」2023年11月号でも「生成AIの法的ポイントと内部規約を検討する」という特集が組まれています。

私も「ユースケースにみるAIコンテンツ生成に対する内部規約の要点」というタイトルで執筆させていただきました。
また、10月5日に刊行される拙著「生成AIの法的リスクと対策」にも268頁以下でも解説しています。

社内ガイドライン作成の留意点

社内ガイドライン(・社内規約)を作成するにあたって、どのような点を気をつければ良いのでしょうか?

社内ガイドラインの内容は企業の規模や業務内容などによってシンプルなものから詳細なものまで幅広く考えられます。
他社が作成していることを理由に漫然とガイドラインの策定を検討するのではなく、まずは、そもそも社内ガイドラインは必要なのか否かを検討することが重要です。
また、内容についても「ひな形や他社事例を適当にコピペして使おう」というのは、会社のAI利用に長期的に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。
社内ガイドラインの内容によっては、従業員による生成AIの自由な利用を妨げたり、萎縮効果を生じさせたりする可能性があります。
今後、会社において生成AIの利用は、生産性や創造性に大きく影響をあたえることになるので、その作成には十分な検討が必要と思います。

なお、生成AIの利用を積極的に後押しするのも、そのリスクに鑑みて禁止するのも、それは企業の判断であり、現時点では、どちらが正解というものではなく、よく考えて選択するということが重要でしょう。ただ、今後は色々な所に生成 AIが入り込んでくるので、何らかの対応は必要になるでしょう。

参考になる社内ガイドライン

社内ガイドラインを作成するのに参考になるものとして、

があります。
 東京都のガイドラインは企業向けではないですが、わかりやすいデザインや構成などが参考になります。また、随時更新されているようで、本稿執筆時にはVer1.2になっていました。

東京都デジタルサービス局の「文章生成AI利活用ガイドライン Version1.2」(2023年8月)

JDLAの生成AIの利用ガイドラインの項目は以下の通りとなっています。

1 本ガイドラインの目的
2 本ガイドラインが対象とする生成AI
3 生成AIの利用が禁止される用途
4 本ガイドラインの構成
5 データ入力に際して注意すべき事項
(1)第三者が著作権を有しているデータ(他人が作成した文章等)  (2)登録商標・意匠(ロゴやデザイン)
(3)著名人の顔写真や氏名
(4)個人情報
(5)他社から秘密保持義務を課されて開示された秘密情報
(6)自組織の機密情報
6 生成物を利用するに際して注意すべき事項  
(1)生成物の内容に虚偽が含まれている可能性がある  
(2)生成物を利用する行為が誰かの既存の権利を侵害する可能性がある  (3)生成物について著作権が発生しない可能性がある  
(4)生成物を商用利用できない可能性がある  
(5)生成AIのポリシー上の制限に注意する

社内ガイドラインの項目

社内ガイドラインの項目として以下の項目が考えられます。もっとも、全てを含める必要はなく、ケースバイケースです。JDLA のガイドラインも下記項目の全部をカバーしていないように、私の経験上、これらを全てを網羅しているガイドラインは珍しく、チェックリストとして利用していただければと思います。

 ・生成AI[に対する基本方針
 ・生成AIの利用目的
 ・ガイドラインの対象者
 ・ガイドラインの対象行為
 ・誤情報への注意喚起
 ・機密情報の取り扱い
 ・知的財産権への対応
 ・個人情報・パーソナルデータの取り扱い
 ・不適切利用の禁止
 ・倫理的な利用
 ・生成AIの利用制限
 ・利用する生成AIやデータの利用規約の遵守
 ・透明性と説明責任
 ・セキュリティ
 ・学習データの正確性
 ・対象会社の範囲
 ・利用の手続
 ・問い合わせ先・相談窓口

グローバル企業における対応

日本に本社におけるグローバル企業の場合、生成AIガイドラインを作成した場合、各国のグループ会社に同じものを利用できるのか、どのようなローカライズが必要かが問題となります。これは、社内ガイドラインの抽象度や内容にもよりけりでケースバイケースとなります。
詳細なガイドラインの場合や著作権・個人情報保護法に関連する規定がある場合、その国の法制度に大きく影響を受けるので、相当なローカライズが必要となります。

タイトルの写真は、Canvaで生成した画像です。確かに生成AIは便利ですね。

文中で紹介した拙著「生成AIの法的リスクと対策」は10月5日発売ですので、ご興味ある方は手に取っていただけると幸いです。

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