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219、コクランはニューヨークタイムズのコラムニストの圧力に屈したか?マスクに関するレビュー続報

216、コクランの編集長がどう言おうが、このレビューの内容に誤りはない!|天乃川シン|note

上記は「マスクの効果は認められなかった」とするコクランレビューの筆頭著者トム・ジェファーソン氏に対するインタビュー記事を邦訳したものだが、ジェファーソン氏ら著者たちの意向とは全く関係ないところで、コクラン・ライブラリーの編集長が「誤解を招いた」としてレビューの内容について勝手に謝罪・訂正してしまったという諸々(ゴタゴタ)について紹介している。

詳しくは私の記事をご覧いただければと思うのだが、コクラン側がジェファーソン氏ら著者を無視した行為に及んでしまったのは、どうもニューヨークタイムズのコラムニストからの圧力が原因だった可能性があるようだ。

また、コクランはこれまでも外部の圧力に屈してトラブルを起こしてきた事実もあるようだ。

以下、医学系の記者でリウマチ学の博士号を持つマリアンヌ・デマシ氏による記事を邦訳して紹介する。

BREAKING: Did Cochrane sacrifice its researchers to appease critics? (substack.com)


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速報:コクランは研究者を犠牲にして批判の声を鎮めたのだろうか?

コクランの最新レビューの著者たちは、批判者の圧力に屈したコクランの姿勢に怒り心頭

Maryanne Demasi, PhD
Mar 15


フェイスマスクを含む物理的介入に関する最近のコクラン・レビューと、それに続く筆頭著者トム・ジェファーソン氏とのインタビューは、控えめに言っても少し羽目を外してしまったようです。

このレビューは現在、コクラン・ライブラリーで最もダウンロードされたレビューであり、コクランの歴史上最も高い評価を得ているものです。

このレビューでは、地域社会でのマスク着用はインフルエンザ様疾患やコビド19様疾患の感染にほとんど影響を与えないだろうと結論付けています。

簡単に言うとジェファーソン氏は、「マスクが何らかの違いをもたらすという証拠はない」と言っています。

この発言は、長年マスクを支持してきたニューヨークタイムズのコラムニスト、ゼイネップ・トゥフェクチの怒りを買うのに十分なもので、彼女は最近のオピニオン記事「マスクが有効であることが科学的に明らかな理由はこれだ」においてジェファーソン氏の発言に対する反論を発表しています。

トゥフェクチは質の高いデータがないにもかかわらず、乏しい証拠に基づいてマスクは効果があると結論づけることができると主張しました。

トゥフェクチはコクランにもコメントを求め、おそらくはコクランに圧力をかけて、ウェブサイトに声明を発表させました。

コクラン・ライブラリーの編集長であるカーラ・ソアレス・ワイザー氏は、声明の中で、研究に関してコメンテーターたちが「不正確で誤解を招く」とクレームをつけたことに対し、レビューの要約の表現が「誤解を招く可能性があり、それに対し我々は謝罪する」と述べています。

コクランの声明は「謝罪」として広く解釈され、ツイッターではレビューが「撤回」されたと考える者もいました。

ソアレス・ワイザー氏は、コクランが研究の著者と関わり、「マスク着用を促進するための介入が呼吸器ウイルスの拡散を遅らせるのに役立つかどうかを検討したレビューであるということを明確にする 」ために表現を修正したと発表しています。

ジェファーソン氏の反応


コクラン声明文の発表は突然のことだった。

ジェファーソン氏にコメントを求めたところ、コクランが声明を発表する前に「できる限りの事前通告」を受け、著者たちは声明がどのような内容になるのか、発表前には全く分からなかったと言います。

「それは狼狽しました」とジェファーソン氏は言いました。「コクランは、自分たちの研究者をまたもやバスの下敷きにしたのです。コクランが出した謝罪はソアレス・ワイザーによるもので、レビューの著者たちによるものではありません」。

今日、レビューの著者たちとの緊急会議が開かれ、対応策について話し合われました。彼らは 「全員が合意に達した 」と聞いています。

「私たちはコクラン指導部に手紙を出し、今回の対応に苦言を呈すことにしました。私たちはコクランのウェブページで、コメントエディターを通じてコメントに答えることにしています。これは、批判を取り扱うための方法としては、試行錯誤の結果です」と、ジェファーソン氏は述べています。

「今回の件でソアレス・ワイザー氏は、通常の手順を踏まず、レビューの著者と何の相談もなく決定を下しました。受け入れがたいことです 」と彼は付け加えました。

「私は、例えば、私がBrownstone Instituteの社員であると虚偽の報道をしたForbesなど、メディアで語られた嘘についても対処するつもりです 」。

「トゥフェクチが自分のプラットフォームを利用して私の信頼性を傷つけた記事についても、New York Timesに問い合わせるつもりです。コクランのレビューには複数の著者がいるにもかかわらず、彼女は記事の中で私の名前を6回も挙げています。彼女は急性呼吸器疾患に関する独自の研究を発表した実績がなく、レビューの内容が気に入らなければ、科学者たちに対して公然と攻撃を加えるような人物です」とジェファーソン氏は述べています。

コクランの著者たちは、コクランの首脳陣の圧力に屈することはないだろうと言います。

「私たちはレビューの著作権者ですから、レビューに何を載せるか載せないかは私たちが決めます。 私たちは、メディアが何を望むかによってレビューを変更することはありません」と、著者たちを代表してジェファーソン氏は述べました。

「ソアレス・ワイザーは、とんでもない間違いを犯したと思います。コクランは記者たちから圧力を受けてレビューを変えることができる、というメッセージを送っているのです。コクランのレビューが自分の信条と矛盾しているとして気に入らない場合、コクランのレビューを変更するよう強制できると人々は考えるかもしれません。危険な前例になってしまった」とジェファーソン氏は付け加えました。

ソアレス・ワイザー氏にインタビューを申し込みましたが回答はありませんでした。

私はまた、科学的記録の完全性に関する問題について、査読付きジャーナルの編集者が議論する場である出版倫理委員会(COPE)にも連絡しました。

コクランが最新のレビューに関する苦情にどう対処しているか問い合わせましたが、出版期限までに回答はありませんでした。出版後の批評の取り扱いに関するCOPEのガイドラインを読むと、コクランがガイドラインに違反していることが示唆されます。それにはこう書かれています:

学術誌は、編集者への手紙や外部のモデレーター付きサイトを通じて、出版後のディスカッションを許可しなければならない。出版後の議論は、通常、学術誌が以前に出版した論文に対する読者の批評から始まる。学術誌に正式に投稿された場合、このような批評は一般に「編集者への手紙」「解説」「コメント」またはその他のタイプの「通信」として知られている。

歴史は繰り返される


コクランは、組織内の研究者が議論を呼ぶような科学的結論を下すと、それに圧力をかけて屈服させてきた過去があります。

2018年には、デンマークのピーター・ゴッチェ教授がコクランの運営委員会から解任されました。

マンモグラフィー検診や精神科治療薬の過剰使用に関する批判でコクランの指導部と揉めましたが、2018年のコクランのHPVワクチンレビューに対する批判が、最後のとどめを刺したのです。

ゴッチェ氏は、ジェファーソン氏と別の研究者と共に、コクランのHPVワクチンレビューに対する率直な批判を発表し、関連する試験のほぼ半分を除外し、特定の有害事象と安全シグナルを評価しきれていないと述べました。

彼らはこう結論づけました:

コクラン共同計画のモットーの一つは、『信頼できるエビデンス』である。コクランHPVワクチンレビューは、報告バイアスや偏った試験デザインの影響を受けているため、『信頼できるエビデンス』とは言えない。コクランレビューは、コクランレビューの基準や、コクランレビューを参照する市民や医療従事者が『情報に基づいた意思決定』を行うためのニーズを満たしていないと考える。

この批判によってHPVワクチンの接種率が低下し、何千人もの死者が出るという国際的な騒動に直面したソアレス・ワイザー氏は、当時の編集長であるデビッド・トビー氏と共同で30ページの反論を作成し、ゴッチェ氏とジェファーソン氏は「不当な主張」「批判を大幅に誇張」したとコクランのウェブサイトに掲載しました。

当時、内部関係者は、HPVワクチンの使用を世界的に広く推進しているビル&メリンダ・ゲイツ財団から115万ドルの助成を受けたコクランが、資金提供者をなだめるために動いたと推測していました。

民主的な選挙で選ばれたゴッチェ氏のコクラン会員資格を剥奪するという物議を醸す決定により、他の4人の理事が直ちに辞任することになりました。スペインとラテンアメリカのコクランセンター長 31 名全員が、このスキャンダルに関する独立した調査を求めました。

コクラン・ワークの編集者であるヨス・フェルビークをはじめとする著名な科学者たちは、理事会全員の辞任を求め、独立した選挙を行うよう要求しました。

しかし、コクランは拒否し続けました。コクランは、かつて有名だったデンマークの北欧コクランセンターの代表として、25年以上にわたって築き上げた遺産を剥奪されたのです。 私は、BMJ-Evidence Based Medicine誌に「コクラン:沈没船か」と題する記事を掲載し、この出来事を詳しく説明しました。

コクランは、このパンデミックの間、その存在意義を保つのに苦労し、財政難を経験しました。皮肉なことに、ジェファーソン氏と同僚の最新のコクランレビューは、コクランを再び世界中に知らしめることとなりました。コクランは、レビューがダウンロードされるたびに、出版社であるワイリー社から少額の手数料を支払われています。

2021年8月、コクランの主要な財政支援者である国立保健研究所(NIHR)は、英国のすべてのコクランレビューグループに提供していたインフラ資金を撤回すると発表しました。

2023年3月31日に資金提供が終了すると、コクランレビューを出版までサポートするグループの編集基盤がなくなる可能性があり、コクランは現在、活動の大きな変化に対応するためにデスクを入れ替えています。

これが、かつて壮大だったこの組織の沈没につながるのでしょうか。それは時間が解決してくれるでしょう。

** UPDATE:COPEは、私のメディアへの問い合わせに回答してくれました。声明でこう書かれています:

論文の内容は著者の責任であり、そのため、内容の変更は著者の意見と承認を得て行われるべきです。もちろん、表面的な変更(コピーエディット)は、根本的な内容の解釈を変えるものではないので、大きな問題にはなりませんが、解釈や結論の変更は、著者との相談なしに行われるべきではありません。


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以上だ。

いかがだったろうか? トム・ジェファーソン氏らのレビューはコクラン側が訂正・謝罪しようがその内容とは全く無関係であり、コクラン側にそのような行為を働かせたのはニューヨークタイムズのコラムニストによる一方的な圧力による可能性が高く、コクランはレビューの著者らに対して圧力をかけて屈服させてきた過去がある――ということがお分かりいただけたかと思う。

やはり大事なことは、権威ある側が何を言おうが、とにかく自分の頭で考えて判断することなのだろう。ただコクランの編集長が訂正・謝罪したからといって、それをそのまま鵜呑みにしていたら今回の真実を見誤ることとなるだろう。

それと、HPVワクチン――こいつはなんだか怪しげな感じがするから警戒心を抱いておいたほうが良いだろうな。手を洗うナントカが激推ししているものでもあるし、注意深く眺めておくのが無難だと感じた次第だ。


Maryanne Demasi, author of the Brownstone Institute

Zeynep Tufekci - Wikipedia

Introducing Karla Soares-Weiser, Editor in Chief of the Cochrane Library | Cochrane

Brownstone Institute ⋆ Freedom, Economics, Science, Health

COPE: Committee on Publication Ethics | Promoting integrity in scholarly research and its publication


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