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91、オミクロン株による南アフリカのダメージは大したことなかった! 論文を見てみよう

オミクロ騒ぎが始まった南アフリカ。報道を見ている限りでは多くの人が感染して大混乱しているような印象を持ったかと思うが、実際は今までの変異株よりも影響は少なかったようだ。

「JAMA Network」の「以前の波と比較したCOVID-19オミクロン株における南アフリカの入院患者の特徴と結果」という論文から、南アフリカの実際を紹介しよう。

まず、南アフリカでの感染流行の波を理解しておこう。

南アフリカでは第1波が2020年6月~8月(アルファ株?)、第2波が2020年11月~2021年1月(ベータ株)、第3波が2021年5月~9月(デルタ株)、んでもって第4波のオミクロン株騒ぎが2021年11月から続いている(?)――というような状況だ。

さて、この研究によって何が分かったかを以下に列挙していこう。

①、入院して治療を受けた患者の割合

第1波 67.8%
第2波 69.0%
第3波 69.3%
第4波 41.3%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より少ない。

②、入院患者の年齢中央値

第1波 53歳
第2波 54歳
第3波 59歳
第4波 36歳

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より低年齢化している。

③、女性患者の割合

第1波 50.9%
第2波 51.8%
第3波 46.3%
第4波 60.7%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より女性の割合が高くなっている。

④、入院患者の基礎疾患保有率

第1波 56.0%
第2波 58.4%
第3波 52.5%
第4波 23.3%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より基礎疾患保有率が低い。

⑤、入院時に呼吸逼迫状態だった患者の割合

第1波 72.6%
第2波 87.0%
第3波 91.2%
第4波 31.6%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より呼吸逼迫状態だった患者の割合が有意に低い。

⑥、入院患者のうち酸素療法を受けた患者の割合

第1波 80.3%
第2波 82.0%
第3波 74.0%
第4波 17.6%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より酸素療法を受けた患者の割合が有意に低い。

⑦、機械的換気が必要となった患者の割合

第1波 16.4%
第2波 8.0%
第3波 12.4%
第4波 1.6%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より機械的換気が必要になる割合が有意に低い。

⑧、ICUに入院した患者の割合

第1波 42.0%
第2波 36.6%
第3波 29.9%
第4波 18.5%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時よりICUに入院した患者の割合が低い。

⑨、患者の入院日数中央値

第1波 8.0日
第2波 7.8日
第3波 7.0日
第4波 3.0日

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より入院日数が短い。

⑩、入院患者の死亡率

第1波 19.7%
第2波 25.5%
第3波 29.1%
第4波 2.7%

第4波の入院患者は今までの変異株流行時より死亡率が有意に低い。

――以上だ。
(※ちなみに、第4波の入院患者は971人。ワクチン接種者の割合は24.2%。未接種者66.4%。不明9.4%)

……さて、感想を述べる前に南アフリカの人口構成等を紹介しておこう。各国にはそれぞれの特徴があるだろうから、それを無視して数字だけで全てを判断するのは早計だろうからね。

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これは南アフリカの男女別の人口ピラミッドだ(2019年)。一見して分かる通り、南アフリカは若い人が非常に多い。最も人口の多い年代は5~9歳というのだから、日本とは大きく異なっている。日本は高齢者が多いからね。

まぁ、言い方を変えると、南アフリカは日本のように平均寿命が長くないと言えるかもしれない。南アフリカでは50歳以上って高齢者的な感じなんじゃないかな。ただ、女性の平均寿命の方が長いみたいだから、そこは日本と同じようだ。

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南アフリカでは年少人口の割合が「29.0%」。生産年齢人口はなんと「65.6%」。高齢者人口はたったの「5.4%」だ。

※南アフリカのデータは以下のサイトを参照させていただいた。
GraphToChart

このように、南アフリカは日本と全く人口構成が異なっているのだ。この事実をよく押さえながら南アフリカにおけるオミクロン株の影響を見てみよう。

南アフリカではオミクロン株による入院患者の年齢中央値が「36歳」と今までよりも低年齢化していて、基礎疾患保有率も「23.3%」と今までより低くなっている。女性の患者の割合も「60.7%」と以前より高くなっている。

しかし、入院時に呼吸逼迫状態だった割合、酸素療法を受けた患者の割合、機械的換気が必要となった患者の割合、ICUに入院した患者の割合、患者の入院日数、そして患者の死亡率は明らかに低下しているのがよく分かる。患者の死亡率に関しては「2.7%」と、今までの流行時と比べて激減している。

人と接する機会が多い現役世代の感染者が増えていて、入院が必要となる若い人も増えたようだが(なかには幼い子供もいるだろう)、それはある意味で仕方のないことだ。オミクロン株はデルタ株までとは違って「糞口感染」ではなく「上気道感染」だ。人と接する機会が多ければ多いほど感染する確率が高くなるのは当然だ。

だからといって、「感染を防ぐ為に人との接触を減らすのだ!」という考え方は誤っている。感染しても大した症状がないのならば、むしろ多くの人が感染してさっさと集団免疫を作って終了させるのが得策だ。

……少し話しが脱線した。

南アフリカではオミクロン株によって若い患者の割合が増えたというが、それは相対的な話しでもあって高齢者の患者が減った結果でもあるだろうから、言うなれば朗報だとすら言えるだろう。だって、高齢者が重症化しづらくなっているのだからね。

ちなみに、南アフリカの国立伝染病研究所(NICD)によると、4歳以下の子供の入院率はデルタ株流行時に比べて「49%」高いとの事だが、入院している4歳以下の子供の全てがオミクロン株に感染しているのかどうか疑問だ。

というのは、NICDは昨年11月14~28日にコロナに感染して入院した452人のうち2歳未満の子供は「52人」と、どの年代のグループよりも多いとしたのだが、南アフリカでは遺伝子解析能力が限られている為、その2歳未満の子供たちが実際にオミクロン株に感染しているかどうかよく分からないのだそうだ。このデータに含まれる乳幼児全員が検査を受けているわけではないからだそうだ。

また、11月14~28日に入院していた子供の患者の一部は、オミクロン株出現前から入院していたそうだ。

前述したように南アフリカでは子供の数がメッチャ多い。5~9歳の人口が一番多い。そうであるならば、例え4歳未満の子供のオミクロン患者数が実際に増えたのだとしても、分母自体が大きければ感染して入院が必要となる子供がそれなりに増えていくのは、むしろ当たり前だ。他の年代より数が多いんだからね。

それらを総合的に考えてみると、私は南アフリカにおける子供の患者数等に過敏に反応する必要はないように思う。

さて、論文の内容に話しを戻そう。

南アフリカで女性患者の割合が増えたとの事だが、この原因がよく分からない。南アフリカでは指導的な地位を占める女性の割合は30%、女性国会議員の割合は40%と聞いたことがあるから(あくまで伝聞)、女性の社会進出が進んでいることが、女性の(おそらく若い人なのだろう)患者が増えた原因かもしれない。

いずれにしても、世界で最初にオミクロン株の感染が急拡大した南アフリカの状況を精査してみたら、非常に楽観的な気持ちになれる結果が見てとれたというワケだ。

もちろん、南アフリカの感染状況をそのまま日本の未来にあてはめることは出来ないだろうが、しかし、オミクロン株はマスコミの馬鹿野郎どもが煽り散らしているような恐怖のウイルスでないと明白ではないだろうか?

全く、オミクロン株ごときで騒ぐなよ。


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