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Geographical Psychologyのレジュメ:Introduction

Rentfrow, P.J. (2014). Introduction. In P. J. Rentfrow (Ed.), Geographical psychology: Exploring the interaction of environment and behavior (pp. 3–11). Washington DC: American Psychological Association.

この記事はRentfrow編 「Geographical Psychology : Exploring the Interaction of Environment and Behavior」の章のレジュメを記したものです。記事の流れは原著に合わせておりますが,解説の都合上,私の解釈や言い回しも交えています。ご了承ください。

はじめに

・我々の住む町や場所は,どのように我々の心の形成に寄与しているのか?
・地理学はいくつかの社会科学や行動科学の基礎となっている。経済地理学,社会疫学,政治地理学など。
・本書では,地理学的観点を導入することで,心理学的現象やそれらの空間的な構築の理解が進むということを述べていきたい。
・心理学のなかで場所や空間が重要とされるのは,文化心理学環境心理学の2つである。
文化心理学は,文化が人の認知や行動を形成すること自体に関心はあるが,社会的地理(人口構造など)や物理的地理(気候など)が与える影響については関心がない。
環境心理学は,環境の物理的特徴が人間の行動にもたらす影響や関連を明らかにしてきたが,身近な環境(オフィスや家,公的場所など)の方に着目しており,より広い環境(近隣,町,地域など)には着目していない。
地理心理学(Geographical psychology)は,心理学的現象やそれらのプロセスを説明するメカニズムについての,空間的な組織構造や地理的な様相を研究することで,心理学領域やその他の分野の架け橋になろうとしている。

Overview of this volume

・本書は3部から構成される。
Part 1は地域差のメカニズムについて検討する:”どのようにして思考,感情,行動の地域差は生じるのだろうか”
- Chapter 1:気候や経済が地域差にもたらす影響に着目する。
- Chapter 2:物理的な地形が価値観やパーソナリティの地域差にもたらすものについて取り上げる。
- Chapter 3:心理的特徴の地域差は,部分的に,感染病の流布という生態的な分散によるものであるということについて取り上げる。
- Chapter 4:選択的移住がパーソナリティや行動の地域差に寄与する過程に着目する。
- Chapter 5:パーソナリティと人間以外の動物における空間生態学との関連に着目する。

Part 2は社会的指標における地域差の検証に着目する:”個々の心理的特徴は地理的分析においてどのように表出されるだろうか”
- Chapter 6:アメリカにおけるパーソナリティの地域差と地域指標との関連について検討する。
- Chapter 7:心理学的観点から,アメリカにおける政治的,経済的,社会的保守傾向の地域差について理解していく。
- Chapter 8:主観的well-beingの地域差に関するエビデンスについて取り上げる。
- Chapter 9:心理的強みとwell-beingの地域差について着目する。
- Chapter 10:自己報告ではない形式による,心理的価値と個人的事柄の地域差のエビデンスについて取り上げる。

Part 3は人×環境の相互作用がテーマである:”個々の心理的特徴は居住地の環境の特徴とどのよう関連しているのか” 
- Chapter 11:居住地流動性が自己概念や集団サポート,well-beingに影響することを論じる。
- Chapter 12:個々人の特徴,場所の特徴,文化の相互作用が援助行動に影響を与える過程を検討する。
- Chapter 13:創造性と開放性に関する人-環境の相互作用(person-environment interactions)について議論する。
- Chapter 14:地域的アイデンティティと,場所とアイデンティティの関連に着目する。
- Chapter 15:近隣の経済的特徴が居住者の思考や感情,行動にどのように影響してくるか検討する。

Conclusion

・本書をまとめた目的は,地理学的観点が心理学における理論や研究に対してどのように貢献できるかを心理学者に教示すること,またこの新たな研究の方向性に取り掛かれるように研究者を促すことである。
・本書の各章では,人と居住地の関連性についての仮説を検討・検証する上での確固たる基盤を提供する。
・さらに本書は,地理学や経済学,生物学,疫学,政治学との繋がりについて論じることで,社会科学や自然科学内における心理学の中心的な位置づけに関する更なるエビデンスを提供にする。

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