皮膚から血中のCO2が測れる機器
今回は経皮的CO2(二酸化炭素)モニタについて書いていこうと思う。
この医療機器は、皮膚にセンサを装着し、経皮的(皮膚から)に拡散(広がっていくという意味。液体では濃度を均一にしようする働き)する血液ガスを測定することができる。
つまり、非侵襲的(身体の外から)で、連続的に皮膚からCO2モニタを測定できる。
血液ガスを測定するので、酸素も測定できるのだが、今回はCO2に絞って書いていこうと思う。
*簡単な概要を書いています。ニュアンスや解釈が異なる場合もありますので参考程度に見ていただけると助かります。
説明に使われる用語
以下に簡単な用語の説明をしておく。
SPO2 経皮的動脈血酸素飽和度(皮膚から血中に酸素がどれだけ含まれているかを表す。)
PCO2 動脈血二酸化炭素分圧(血中の二酸化炭素の分圧【 多成分からなる混合気体において、ある1つの成分が混合気体と同じ体積を単独で占めたときの圧力】)
PcCO2=PtcCO2=tcPCO2 経皮的炭酸ガス分圧(皮膚から測った二酸化炭素の分圧【 多成分からなる混合気体において、ある1つの成分が混合気体と同じ体積を単独で占めたときの圧力】)
etCO2 呼気終末二酸化炭素分圧 息を吐いた時の最終的な二酸化炭素の分圧【 多成分からなる混合気体において、ある1つの成分が混合気体と同じ体積を単独で占めたときの圧力】)
原理
厳密にはもっと複雑なのだが、簡単に書くと皮膚を加熱することにより皮膚直下の末梢の毛細血管を拡張させ、動脈血と同じ組成にする方法が考案された。
一般的に最初、45℃程度加温して15分後に42℃にすれば12時間ぐらいの連続測定が可能である。
なぜ、経皮的CO2モニタなのか
新生児の換気状態の評価は難しい点がある。しかし、NICU(新生児特定集中治療室)に入院している新生児では高頻度でPaCO2の変動がある。
異常なPaCO2値は、新生児の脳に有害な影響を与える可能性があるため、正常なPaCO2値の範囲を保つことが重要である。
しかし、回数が多い採血(動脈血中ガスのサンプル採取)は、その採血した一場面のピンポイントでの換気状態の評価となる。
さらに、採血による疼痛(痛み)や貧血のリスクを伴う。
呼気終末二酸化炭素分圧 (etCO2)モニタリングでは
1回換気量が少ない低体重新生児や、HFOモード(呼吸器の設定の一つ)を使用している場合は、測定できないことがある。
SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)のみの測定では、多呼吸や呼吸減少による換気低下を検知(気づく)するには不十分で、動脈のCO2レベルの変化は検知(気づく)できない。
経皮CO2モニタは非侵襲的(身体の外から)であり精度も高く、連続的な測定も可能で、新生児にとって不必要な検査(採血回数等)を減らしながら注意深くモニタリングすることができる。
経皮的PCO2の限界
次の臨床状況や要因によって、tcPCO2と動脈CO2分圧(PaCO2)の値の相
関性に影響が起こる場合がある。
• よる測定部位の低灌流(簡単に言えば血液の循環が悪い)、ショック時(重症)、循環上の集中化((簡単に言えば1部分に血液が集まっている状況)、低体温、血管作用薬、測定部位への物理的圧力等
• 測定部位及び/又は患者の皮膚及び皮下組織の状態が適切でない(大きな表在静脈又は皮膚損傷又は浮腫上への設置)
• センサと患者皮膚の接触が不十分なために、皮膚から発散するCO2が大気と混合します
血液ガスの測定方法
そもそもの話になってくるが、血液ガスの測定方法には主に以下の3種類がある。簡単に長所と短所を述べる。
血液ガス分析装置
長所
ゴールドスタンダード(血液ガス測定といえばこれという意味)
多くのパラメータ(電解質、ヘモグロビン、血糖等)を同時測定できる。
短所
侵襲的(血管に針などを刺す必要がある)
患者の痛みを伴う
大掛かりな装置
メンテナンス必要
連続測定不可
経皮的CO2モニタ
長所
非侵襲的(身体の外から)
カプノメータより精度が高い
連続測定可能
肺の状態(血流欠損【血管が閉塞したり狭くなっている】、シャント【血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態のこと】)があった場合も測定可能
欠点
メンテナンスが必要
低温熱傷のリスク(ただし、42℃で測定可能)=低温火傷は44℃~60℃(日本形成外科学会ホームページ参照)
安定までに時間が必要
カプノメータ
長所
非侵襲的(身体の外から)
設定が簡単
呼吸状態をいち早くモニタリングすることが可能である。
欠点
肺の状態(血流欠損【血管が閉塞したり狭くなっている】、シャント【血液が本来通るべき血管と別のルートを流れる状態のこと】)の影響を受けやすい。
マスクを使った人工呼吸器では外気と混ざってしまうため、精度高い測定はできないor測定不可能である。
以上、経皮的CO2モニタについて書かせていただいた。
小児だけでなく、夜間のCOPDの患者様の二酸化炭素が溜まっていないか等の測定に使われており使い方は様々なので、興味がある方は調べてみるとおもしろいと思います。
この記事を読んでいただきありがとうございました。
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