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【映画】今まさに考えるべき問題がここにある~「沈黙の艦隊」鑑賞記②

【以下はネタバレ内容を含んでおります。ご鑑賞前の方はその点をご留意ください。】

映画を観たのは少し前になりますが、それからずっと頭の片隅に残っていたのがこの作品です。その後、イスラエルでハマスによるテロがあり、玉突き状態で日本の近海も「きな臭い」状況になってきました。これほど今に通じる内容が30年前に発表されていたとは驚きです。今日は映画「沈黙の艦隊」について考察していきたいと思います。ちなみにお恥ずかしい話、原作を未読のため、原作ファンの方々におかれましてはところどころ意味不明な点があるかもしれませんが、そのあたり何卒ご容赦いただければと思います。

海江田艦長の意図、「やらなければいけない」こととは?

映画では非常にいいところでエンディングを迎えています。映画を観ていて「えー!これからなのに・・・」と思ったのは私だけではないはず。ぜひとも続編を期待しています。そういう状況で書き進めていくと、海江田艦長の本当の意図がどこにあるのかが謎のまま終了しています。もともとは日本の海上自衛隊屈指の名艦長であり、きっと母国への思いを人一倍お持ちの方であると推察します。だからこそ、掟を破ってまで米軍と一戦を交えたとしても、潜水艦の乗組員たちが一糸乱れず艦長についていくんだと思います。おそらくは「日本よ目覚めろ!」という強い危機感ゆえの行動だったではと勝手に思っています。

一方の政府側の動きは・・・案の定というべきか・・・

とはいえ、単なるステレオタイプな「弱腰政府」という描き方ではなかった点が良かったと思います。もちろん総理大臣は今から30年前だと・・・「○○さんかな?」とか勝手に想像してしまうところはありましたが、外交関係を気にする外務大臣、実は密かに原子力潜水艦を手に入れることを画策する防衛大臣、そして事実上日本を動かすフィクサー・・・とそれぞれが自分たちの思惑で動いていく。これもまた日本(というか民主政治)の現状。しかし後半、一種の操り人形だった総理大臣が、わずかではありますが「イエスマン」を脱して、日本のために、国民のために、と提案を行うシーンなどはこれまでにない描写のように思いました。それにしても、この先どうなるんだろう?と、陸上での動きも気になります。

驚く米軍!飼い犬に手を噛まれるとはこのことか!?

痛快(といってはなんですが・・・)だったのが、米軍を原潜一隻で翻弄してしまう海江田艦長率いるシーバットの強さ!米政府の混乱とマッチョ思想に偏る米軍の制服組。遠く離れた大陸からは「沈めろ」という指令が出ますが、現場は戸惑うー「もし、本当にシーバットが核兵器を積んでいたら?」と。本部は「いや、そんなことはありえないから、いいからやれ」の一辺倒。しかし、現場は「本当に100%ないといえるのか?もし、間違っていたとしたら、この近海一帯が死の海になる」としてGOを出し切れない。このあたり非常にリアルだったと思います。判官贔屓の私としては、どうしても現場目線に同情してしまいました。もし私が空母のトップだとしたら、部下たちをそんな目に遭わせたくない、と同じ行動(上からは叱られたり、降格になったとしても)をとるだろうな、と思いました。

もし、これが本当に起きたとしたら・・・?

この作品は一見「荒唐無稽」なシチュエーションに見えますが、原作開始から30年たった今、こうして映像を見ていると、「もしかしたら、近い将来あるかも」と思える内容になっているのです。誰がこの時代に武力を使って他国に侵攻すると思ったでしょうか?911のアメリカ同時多発テロから20年近く経ち、未だにテロとの戦いには終止符が打たれることなく、いや、当時よりも状況は悪化の一途をたどっています。そして先日からのイスラエルのテロ。核兵器という、もし誰か、どこかの国が使ったら、地球に甚大な被害をもたらす最悪の兵器を持つことこそが、逆に安全につながる、というこの大きなパラドックス。このあたり、私もまだまだ勉強不足のため、あまり深い話を語れないことが残念ですが、そんな私でもこのくらいまでのことなら理解できます。もし、そうしたことがあったとき、我が国は一体どうなるのだろうか?そんな怖さを感じましたね。

即、「じゃ、日本もそうしよう!」ということではないが・・・

もちろん短絡的に、では日本もいち早く準備に取りかかろう、というような話ではありませんが、とはいえ、逃げることなく検討する、つまりは議題に挙げて討議することはしてもいいのではないかと思います。おそらくすでに軍事研究界ではそうした議論はされているでしょうし、戦略・戦術を研究されている機関もあると思います。そうしたところで多角的に研究し、議論を深め、これからの時代、どうやって国を守っていくべきなのかについて、しっかりと方向性を示してほしいと思います。これぞまさに海江田艦長のメッセージなのかなと思いました。

映画は一流のエンターテイメント作品に仕上がっています

潜水艦が舞台・・・ということは、当然海の中が中心になります。すると意見単調な感じがするかもしれませんが、いやいやいい意味で期待を裏切る見所あるアクションシーンが満載です。しかも海江田艦長が強い!(笑)。シーバットが強いんですよ、本当に。そして負けじと深町艦長率いる<たつなみ>もまた、性能は当然シーバットに劣りますが、それでも大奮闘。二隻が米軍を翻弄するシーンは痛快。ところどころに人間ドラマが挟み込まれ、同時に日米両政府のドタバタなどもリアルに描かれています。

ここが・・・個人的には「もう一息!」

あくまでも個人的な意見ですからね、これで炎上にならないと良いのですが・・・。というのが、エンディング。大人気歌手Adoさんのテーマソングが流れるのですが、往年のハリウッド映画ファンとしては、ここはオーケストラによる正統派オリジナルスコアが聴きたかった!というのが本音です。イメージとしては「クリムゾンタイド」ファン的には、ハンス・ジマー風の重厚なイカツイ系のエンディングですかね。Adoさんの曲ももちろんいい曲なんですよ、B'zのお二人が楽曲を提供していることもありますので。しかし、今回は(私的には)「ちょっと違うんだよな・・・」と思ってしまいました。

次回作に期待!(アマゾンプライムかな?)

と、いろいろ思いつくままに書いていきましたが、現代情勢を考えながら、そしてさらには「原作が書かれたのが30年前だった」という事実を併せて鑑賞すると、原作者のかわぐちかいじ先生の予知能力の精巧さに驚くばかりです。そしてそんな原作に惚れ込んだ大沢たかおさんが自らプロデューサーも兼ねて取り組んだ本作。ぜひとも続きを見たいと思います。どうなんだろう?「ミステリというなかれ」が強すぎて、映画ランキングではトップに立てませんでしたが、まずまずのヒットなのでしょうか?ぜひともスクリーンで見たいですし、もしそうでなければなんとかアマプラで続編をお願いしたいところです!

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