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ベルリンのノロバたち。

 みなさん、おはこんばんにちは。本日のお題は、3種類のノロバ(野驢馬)の仲間たちを見てきたというお話です。ぜひ最後までお付き合いしていただければと存じます。

1.アフリカノロバ。

 ロバが家畜化された地は約6000年前のアフリカ大陸北部といわれていますが、そこに棲息しているのがアフリカノロバです。

 主にアフリカ大陸北西部に分布するアトラスノロバ、スーダン北部やエジプト等に分布するヌビアノロバ、エチオピア北部あたりに分布するソマリノロバの3亜種が存在しています。

 しかしながら、アトラスノロバはすでに消え去り、ヌビアノロバもほぼほぼ絶滅が確定状態、残るソマリノロバも絶滅の崖っぷちという状況下に置かれています。家畜との水場をめぐる競合や、食肉・薬用目的の密猟等が激減の大きな原因とされています。

脚に縞模様があるのが、ソマリノロバをも含めたアフリカノロバの特徴です。

 ベルリン動物公園では、北の方のヒマラヤエリア出入り口やサル館に近いあたりにソマリノロバの展示場があります。

ソマリノロバの群れ。野生で存在する個体数はおよそ250頭未満といわれています。

2.アジアノロバ。

 モンゴルやインド北部、イラン等といった、主にアジアの乾燥地に広く棲息する。それがアジアノロバです。

 現生する亜種としては、ゴビ砂漠に分布するモウコノロバ(チゲタイ/ジゲタイ)、インド北西部に分布するインドノロバ、イラン北部に分布するペルシャノロバ(オナガー)、トルクメニスタンあたりに分布するクーランが挙げられ、絶滅した亜種としては、シリアやその周辺あたりに棲んでいたシリアノロバが挙げられます。

 棲息適地が開発で狭められたり、家畜と水場や餌場を巡っての競合に負けたりして減少しましたが、現在は一度いなくなった地域への再導入が行われる等保全活動が推し進められているため、(狭義の)絶滅危惧種ではなくなっています。

亜種クーランは、一度は野生下では絶滅したと考えられていたことがありました。

 今回のベルリン動物公園訪問で見たのは、クーランです。園内の北西部、ジャコウウシやモウコノウマの近くあたりに展示場があります。訪問時には、子供の姿を見ることができました。

クーランの一団。真ん中手前にいるのが子供です。

3.チベットノロバ。

 3種類のノロバの中では大型で、その名が示すが如くチベット高原を中心に棲息する。それがチベットノロバ(キャン)です。

 かつてはアジアノロバの亜種とされたことがありましたが、現在は別種とされています。IUCNのRL上では、奇蹄目(ウマ目)の中では最も絶滅の危険度が低い種とされています。

アジアノロバに比べて、体色は濃いめの焦茶色をしています。

 園内北部にあるヒマラヤエリアの一角に、キャンの展示場があります。群れでも存分に駆け回ることができるほど広く、あたかもチベット高原に入り込んだかのようでした。

キャンの群れ。野生下では、稀にユキヒョウに狙われることもあります。

4.ロバの仲間な者たち、番外編。

 和名にはロバとついていないながらも、ロバの仲間である動物たちが、ベルリン動物公園には2種がいます。

 園内東部にあるサバンナエリアにその2種はいて、何れも絶滅の危機に瀕しています。それはシマウマの仲間たち。立った鬣や尻尾の房毛の生え方等、ロバ的な要素が少なくありません。また、系統的にもウマよりロバに近縁とされています。

アフリカ東部の乾燥したサバンナやブッシュに棲むグレビーシマウマ。鳴き声はロバのそれに似るそうです。お食事中の皆さん、申し訳ありません。ご覧になる際はご注意を。
アフリカ大陸南西部の乾燥した高地に棲む、ハートマンヤマシマウマ。シマウマはスワヒリ語ではPunda milia=ロバ、縞のあるという意味になります(写真の種はスワヒリ語が話される地域の原産ではない)。

5.感想。

 過去には、日本でも野生のロバたちを見ることができ、私も実際に見たことがありました。
名古屋の東山動物園にいたソマリノロバ、そして横浜のズーラシアにいたモウコノロバ(チゲタイ/ジゲタイ)です。

ソマリノロバのメス、サクラ。写真は亡くなる1ヶ月ほど前に撮ったものです。
モウコノロバ(チゲタイ/ジゲタイ)のオス、ミンミン。28歳の高齢で亡くなりましたが、彼の死を以て日本でノロバは見られなくなりました。

 しかし、両者とも今は見られない種となってしまっています。元々貴重な存在である彼ら、この先導入されるか、再び見られるようになるかすら不透明です。それ故に、先月のベルリン旅にて、美しきノロバたち3種類を全て見ることができたのは非常に印象に残りました。

 今回は以上とさせていただきます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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