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無心で鉄削り

部活の思い出話を。

ぼくが学生時代に入部していた部活は

中学生・・・卓球部

高校生・・・機械工作部

卓球部はどこの高等学校にもある部活ですが、機械工作部は工業系の高等学校にしかない文化部です。

中学生時期は兄が卓球部だった事もありそのまま同じ部活へ入部。

入部時期に運動部に入るように母に念を押されたのもあり、迷わず卓球部に入部しました。

この頃から女子卓球で有名な福原愛選手が活躍されていて、彼女の得意とするサーブ“王子サーブ“を部員みんなで真似してました。失敗して失点するのが落ちでしたけど。

当時は練習はするけど試合の2回戦進出で止まるぐらいの実力で、どちらかと言えば温泉卓球のような感じでみんなでワイワイ楽しんでいた部員でした。映画のピンポンが流行り主人公ペコを演じる窪塚洋介が大人気な当時、気持ちはI can flyでしたね。

そして工業高校へ進学。
入部したのが文化部である“機械工作部“。

高校にも卓球部はありましたが、入部者は選択の余地なく坊主にされるという掟を聞いて入部しませんでした。ピンポンでいうところの海王学園みたいなイメージがあって嫌だったのを覚えています。

高校進学後、3ヶ月間ぐらいは部活に入らず速攻で帰宅してテレビゲームばかりしていました。この頃にキングダムハーツが発売されて夢中でプレイしていました。
宇多田ヒカルを好きになったきっかけはモチのロンでキンハーの「光」です。

キンハーを終えて何をするか迷っていた時に入部決断をしたのが入学してから3か月たったある日。

機械工作部に入部するきっかけになったのが授業で学んだ旋盤でした。

旋盤とは何かというと

旋盤(せんばん、英: lathe)は被切削物を回転させ、固定されているバイトと呼ばれる工具で切削加工をする工作機械の一つである。

とウィキぺに載っていますが、おそらく分かるのは工業系の仕事に携わる人くらいでしょう。

きっかけとなったこの旋盤という切削機械で、鋼材を削る授業でのこと。

どうしても思い通りに作業が進まない時、後ろの席にいた、機械工作部のHくんがお手本を見せてくれました。

彼の迷いのない手捌き、今でも覚えています。
機械のハンドルを握り締めてカチカチっとギアを設定し回転数を上げて、荒削りから仕上げ削り加工した面の綺麗な仕上がり具合!

衝撃的でした。

そのH君が入部していたのが機械工作部だったのです。

彼から機械工作部とは何をする部活なのか、普段どういう活動をしているのかを聞いた翌週に入部届を提出しました。

部員はわずか5名しかおらず、驚くことにみんな同じクラスの同級生しかいませんでした。

2年生と、3年生は?

と思いましたが部員全員が楽しそうな感じだったので小さいことは気にしませんでした。この後3年間、クラスであまり話すことすらなかった5名と機械工作部を通じて仲良くなれた?のかはわかりませんが、みんながそれぞれ個性的過ぎて退屈はしませんでした。

さて部活内容はといいますと、ただひたすらに旋盤で鋼材を切削するという鬼畜の所業に感じるものでした。最初のイメージがそんな感じで一旦入部を辞めようかと思ったぐらいです。

しかしこれが思ったほどに自分に合っていてやればやるほど、旋盤の面白さにハマっていきました。
加工する鋼材は、工業高校なので倉庫からあるだけ使うことが出来て種類もいろいろ。
硬い鋼材や柔らかい鋳鉄など、いろんな材質を旋盤で加工していくとその素材ごとに回転数や加工速度を調節し、工夫する必要がありました。それがまた醍醐味でもあり面白く感じる要素でした。

一般的意見を述べれば「何が楽しくてそんなことをするの?」といわれると思いますが、ぼくを含め機械工作部の面々は面白いと感じるのです。類は友を呼ぶってやつです。

決められた寸法に削ってキレイに磨き、出来上がりをマイククロメーターやノギスで計測した時の寸分互わぬ寸法になった瞬間の感動たるや最高なのです!

今思えば、理美容師も職人であり髪を切ることに通じるものがあると感じます。求められる仕上がりに完成させること。失敗したときはどこがいけなかったのか。次はどうすればいいのか。このPDCA思考は機械工作部を通じて学んだといっても過言ではありません。

就職した後も工業人として工場に勤め、よりよい製品づくりにあくせくしたあの時代があったからこそ、脱サラしても過去の体験を無駄にせず今の糧になっているのでしょう。

やりたい仕事には一貫性があるはずです。
その人が好きなものであれば尚更です。一見遠回りだと思ってもやりたいことを続けていると結果は重なります。振り返ってみて毎日旋盤に向かっていた日々は今につながっていると断言できます。

やりたいことを突き詰めていくと、意外と学生の頃から無意識に行っていたことや無意識に好きだったことが出てくるものです。

それは自分の感情に嘘をつくことをまだ覚えていない、若き自分が見ていた景色が見えるかどうかなのです。



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