【本紹介】Brain 一流の頭脳①
本書の著者は、スウェーデンの精神科医Anders Hansen氏。ノーベル生理学・医学賞の選考委員会がある名門カロリンスカ研究所にて医学を、ストックホルム商科大学でMBA(経営学修士)を取得修めている。本書は、一般読者を対象に、極めて平易な文章で書かれているが、記述の裏づけ(参考文献、参考研究)はしっかりしており、何の論拠もない自己啓発本ではない事を最初にお断りしたい。論拠を深く知りたい場合には本書巻末に記載されている各文献に直接当たってみよう
見るべきものを即座に選んで焦点を合わせ、残りの情報を遮断するこれを"選択的注意"と言う。意識を集中するには欠かせない能力であり、現代社会においてこの能力が高い事は、大いに強みになる。
ウォーキングをしたグループはテスト課題をうまくこなし、選択的注意力が改善するとともに前頭葉と頭頂葉が活発化していた。運動によって選択的注意力と集中力が改善することがわかった。
運動したことで、前頭葉の細胞同士のつながりの数が増えた。そのおかげで脳が外からの情報を扱いきれなくなったときに、前頭葉の機能を簡単にパワーアップできるようになった。
運動で脳の動きが活発になると可塑性が促進され、周囲の環境に対する注意能力が高まる。
・側坐核について
おいしいものを食べたり社会と交流したり、また運動や性行為などをすると、側坐核でドーパミンの分泌量が増える。ドーパミンがたっぷり放出されると、ポジティブな気分になりその行動を繰り返したくなる。脳がまた同じことをしろと催促するのだ。では、なぜ脳はあなたに食事や人との交友運動性行為をさせたがるのか。進化の見地ではそういった行動が生存確率を上げ、遺伝子を次の世代へ手渡すことになるからだ。人生における純粋な生物学的欲動とは、生存して遺伝子を残すこと、つまり子供を作ることである。そして脳は、それを指針とするようにプログラムされている。
側坐核は、四六時中休むことなく働いている。今あなたが行っている事は続ける価値があるかどうかを判断し、その情報を他の領域に伝えている。あなたの即座核がテレビ番組から十分な刺激を受けない、つまりあまりドーパミンが分泌されないとあなたの注意力が散漫になり、もっとドーパミンが放出されそうなあらゆるものに目がいってしまう。例えばスマホからもっと刺激が得られるかも、というように。
報酬中枢でドーパミンが放出されて快感を得るためには、細胞膜の表面にある受容体とドーパミンが結合しなくてはならない。ドーパミンが受容体に取り込まれると、脳細胞がそれに反応して快感が引き起こされるのである。
周囲のざわめきは聞こえていないが、脳には入ってきている。誰かにあなたの名前を呼ばれ、あなたは自発的には聞いてなかったのに、その声に反応する。(誰でも経験があるはず) 知覚してなくても脳の一部が反応していたのである。その反応は、無意識のうちに起こっている。私たちが気づかないうちに、おびただしい数の情報を処理し、重要だとみなしたものだけを知らせて注意を促している。これが脳の驚くべき力だ。
・ランニングの効用
体に与える負荷が大きいほど、ドーパミンの分泌量も増えるようだ。ドーパミンを増やすにはウォーキングよりランニングが適している。初めてランニングをして気分が良くならなかったからといって諦めてはいけない。ドーパミンは運動の時間が長くなるにつれて増えていく。脳は徐々にドーパミンの量を増やしていくと考えられている。回数を増やせば増やすほどドーパミンがたっぷり放出される。運動は集中力の改善に優れた効き目を発揮する、副作用の全くない薬だ。20分ぐらい運動を続けるとゾーンのような状態に入るこれはその理由だ。
・マシュマロ実験
この実験で観察された集中力と自制心は、「認知制御」ともいわれる実行機能で、ウォルターミシェルの言葉を借りれば、脳のクールシステムの1つだと言う。カーネマンはこれをシステム2(時間をかけて熟考する脳のシステム)と考えている。それは高次の思考によって衝動を抑えこむ働きであり、目の前の状況に集中するべく前頭葉と前頭前皮質がつかさどっている能力である。この働きも運動によって強化することができる
集中力の違いは遺伝子や環境ではなく、生活習慣による。
運動そのものが意欲を育てる
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