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英語力を伸ばせる人・伸ばせない人

 英語の原著を読むと、ふわっと大意は取れる。

 けれども、本当に正確な和訳かどうかは自信が持てない。著者の主張を正確に読み取っているか自信がない、という人も多いのではないだろうか?

何を隠そう、私もそんな一人である。

だが、『英語の読み方』(北村一真 著)のおかげで、正確に読む技術を知り、その技術を実践していく方法を少しずつ発見しつつある、と感じている。

外国語習得には、Speaking, Listening, Writing, Readingのセクションがある。その中で、最も基盤となるのが、Reading (読解)。読解が出来なければ、聞き取れないし(Listening)、話せないし(Speaking), 書けない(Writing)。Readingを伸ばせれば、英語力は飛躍的に伸びる。その意味で、Readingに焦点を当てた本書をマスターする意義は高い。

 まず、著者は冒頭で、なぜ日本人は英語が話せないといわれるか、その背後にある理由をズバリ説く。

 英語話者の読解スピードと言われる一分間に200語(センター試験のすべての英文を20分強で、語数の増加が話題になった共通テストの英文でも約30分で読み終えるスピード)と言う基準から見ると、大半の人はおそらく半分以下のスピードでしか読めてないと思います。
 日本人の読めるけど話せないと言う主張は、「日本人はネイティブのスピードの半分以下の速度なら読めるけど、ネイティブスピードで会話はできない(聞けない、話せない)」という、いたって当たり前のことを言ってるに過ぎないのです。


 現代は、英語学習の素材がネット上に溢れている時代だ。Wikipedia/Youtubeを始めとして、ネイティブの英語に触れられ、英語を学ぶ素材には事欠かない。しかし、自分が"正しい勉強法", "成長する学習法"を身につけているか、悩んでいる人も多いのではないだろうか。着実に英語力はついているだろうかと。

 本書で、読解における新たな視点を自分に取り込むことができれば、英語の文章をより咀嚼して、自分の中で消化することができるようになり、より味わえることができるようになる。この喜びは、とても大きい。

 受験勉強などを通じて、基本的な文法力、読解力を身に付けた人は、スピードや語学力の問題ではまだまだトレーニングが必要なものの、習得に苦労を要する「英語を正確に理解するスキル」がかなりの部分まで身に付いています。これは中級者の英語力を目指す上で大きなアドバンテージです。日本で教育を受けてきた人なら、読解力の基礎を強みとして他の能力にも応用していく方が効率が良い。本書が読む能力に焦点を当てている背景にはこういった考え方があります。

 TOEICで満点に近いスコアを取っている人でも、英語の原著を読んでいて著者の主張を正確に読み取っているか自信がないという人は、多いはずだ。


著者は、英文を読んでいくにあたっての前提条件は3つあると説く。

①文法の理解、②広い意味での語彙力、③英文の内容に関する背景知識。
①大学受験でかなり網羅されている②受験レベルと実践レベルにかなりの乖離あり③知識の有無や多寡がもたらす理解度の差が、読解の学習にどのような影響を与えるかは理解しておいて損はない。

 個別の一文を読み解こうとして、①これ文法的にちょっとおかしくない?、②主語がないけどどういうこと?③え、このasってどういう意味、と感じる場面があるはず。和訳が出ている英語本ならば、正解との読み合わせができるが、必ずしも英語版原書の和訳版が出ていない本も多い。大意は掴めるけれども、原書を読み終えて、なんとなく消化不良、6-7割の理解度かな、という場合があるかと思う。

 よく「映画やドラマを見ると、英語力が伸びるよ」というアドバイスを聞くが、そのようなアドバイスが自分の耳に入るような人の多くは、まずは読解力を伸ばすのが、英語力上達の近道だろう。

読解力が伸びた上で、Listeningを伸ばすのが効率が良い。Listeningの素材としては、映画やドラマ(英語上級者向け)よりも、講演やスピーチ、ニュースを聞く方が、効率の良い英語学習法といえるだろう。


リーディングに比べてリスニングがからきしダメという人は、読むスピードが足りていないケースがほとんどです。
英語の文章を一分間に少なくとも150語のスピードで読めなければ、話している英語の音声の意味は聞き取れないのです。


 文法については、豊富な生きた文例をもとに、文の構造を読み解く解法を本書では説明していく。。

 長文の時事英文の読み方についても、whole part法 (一般的な言葉で全体像を示した上で、具体的な詳細について個別に論じていく方法)を用いて、詳しくパラグラフ毎に解説している。原文は、Japan Timesの記事などからの引用であり、東京オリンピックの1年延期決定、日本の政治に関する話題など、最近の身近な時事問題を取り入れている点も頭に入ってきやすいので、ありがたい。

例えば、次のような少し硬い文章を、訳せるかということ。

 The folly of our nature which we are discussing puts forth three shoots, ambition, vanity and pride. The difference between the last two is this: pride is an established conviction of one's own paramount worth in some particular respect; while vanity is the desire of rousing such a conviction in others, and it is generally accomplished by the secret hope of ultimately coming to the same conviction oneself. Pride works from within; it is the direct appreciation indirectly, from without. So we find that vain people are talkative and proud, taciturn. ("The Wisdom of Life" Arthur Schopenhauer (1890)


本書では、上記のような文章の読解について、一文一文ずつの丁寧な解説を試みている。接続詞や助詞の説明も含めて、細かく解説がされています。著者の文章に込めた意図を100%消化できていない、あのモヤモヤ感が少しでも解消されるようになれば、本書を読んだ甲斐があるといえるでしょう。

①その文章全体の構成がどうなっているか、

②そのパラグラフの、全体の文章における役割は何か(例:全体の概要まとめ、具体例の提示、前段との比較対比、反論/反証の提示など)

③個別の一文ずつの解説、というような流れだ。

 本書を読み終えると、英語文書に対峙したときに、「あ、まずは全体の構造を捉えよう。」「各パラグラフの位置付けってどうなってるのかな」「ちょっと引っかかるな。ここは保留して後で全体から見直そう」という視点を少しずつ持てるようになるだろう。

 すると、一歩上の高いところから、英文に接する事ができる。

ステップ1:新たな英語文章の捉え方に気づこうとする自分が芽生える。

ステップ2:様々な文章を読み、量をこなしていくことで、徐々により難解な英文を読み解けるようになる

という良いサイクルに入れるかと思う。


(追記1):本書を購入しようと思っているか悩んでいる人へ

 下記の3つの英文の構造が一つも分からないという人は、本書を読むよりも、先に大学受験レベルの文法書などで、英文法の基礎知識と応用力をつけるのが良いでしょう。 (正確な和訳は本書にてご確認下さい)

1. The person believed to have helped the thief escape has denied he had anything to do with the incident.
2. What I think is important is if this restaurant will become a hit among young people.
3. When I opened the door, I was so shocked that he was there that I was utterly speechless.

(追記2):  その他にも、本書には下記のような役に立つ情報が掲載。

①:英語ニュースメディア。

ABC News, Al Jazeera English, Arirang News, Bloomberg News, CNA, DW News

②:語彙を増やす方法として、英英の語源辞典。(例:Online Etymology Dictionary)

闇雲に単語を覚えていくよりも、単語を構成する部位の語源/意味合いを掴むことは、英語力アップには欠かせません(例:Pre=前もって、Co=共に)。

覚えにくい単語でも、語源を知っていれば推測が容易になる。

(例:「anthropo= 人間の」ということを知ってれば、philanthropy=博愛,人類愛 ・anthropomorphism=擬人化も覚えやすい)

③Google 引用符検索 (""を使って、その用法が正しいかを確認)(本書p.52)

例:"make his dream come true"で検索すると8.8億件数表示され、恐らく正しい使い方だとわかる。

④Google アスタリスク検索 ( * を使用した検索)

例:上記のdreamの代わりにwish,purposeも使えるか?
"make his * come true"で検索してみる)


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