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【本紹介】自分の意見で生きていこう(著/ちきりん)

 子育てには、悩みはつきもの。すくすく心身健康にさえ育って欲しいと思いつつも、「(できれば)勉強ができるように育ってほしい」「(できれば)スポーツができるように育ってほしい」と思うようになり、さらにはそれがエスカレートしていき、「xx (例:弁護士・医者・スポーツ選手)になって欲しい」等と、親である自分が達成できなかった夢を子供に託すようになる。

 もっとも大切なことは、「自分の人生を主体的に選び取り、肯定的に生きていくこと」だと思う。そのために必要なことを我が子には伝えていきたいと思っている。そんなことを考えながら、子供が中学生なったら紹介したい本をストックする作業をしている。そのうちの一冊になり得るのが、ちきりんさんの「自分の意見で生きていこう」。

 成人しても、自分の価値観がどういったものなのか、どのように生きたいのかについてうまく深堀りすることができずに、特にこれといった明確な目標を持たずに生きている人は多い。①ネットやSNSの情報、周囲の意見に流されてしまう ②自分の意見に自信が持てない③周囲の目を気にしすぎ、ネガティブな考えが抜けない、等の悩みを持っている人も多いだろう。

自分の子どもには、そんな自分のようになってほしくない。堂々と自分の人生を歩んで欲しい。そう考えるのは、子の幸せを願う親であれば、ごく自然な感情だと思う。先日、名古屋の高校2年生が東京大学の共通試験会場で受験生を刺すという痛ましい事件が起きたが、背景には「東大に入る事」だけが彼の現時点における価値観を占めており、それが達成できなければ、自分は生きている価値もないと思った点がある。人生は多様であるという事を子供に伝えていくのは難しく、正解がない人生の中でどう子供と接したらいいのだろうか、どんな言葉を日々かけていったらいいのだろうかと考えている親御さんも多いだろう。挑戦をポジティブに捉え、失敗をもをポジティブに捉えるタフさを身につけてほしいと、私は自分の子どもに対して考えている。

【本書から学べる事】

 生きる事は選択の連続である。どんな選択肢が自分にあるのか、どう物事を考えたらいいのか。その思考訓練の方法が実践できなければ、betterな選択肢を選べない。また、若いうちに失敗も含めて行動する癖をつけておかないと、自らの人生を切り拓いていく事ができない。

 考える力は、自らの考えを言語化して表す事で磨かれていく。書き出してみる、文章にしてみる。考える手法を増やす。そうすれば生きやすくなる。

本書において、著者は、正解のない問題を考えることの重要さを説く。正解がある問題と正解のない問題の区別がついておらず、直面している問題についての細分化、自分の中での自分の答えの出し方の手順がわかっていない(持ち駒が少ない)と、感じる人にとっては参考になるだろう。


今必要なのは"自分はどうすべきか考えること"であって、"正しい答えを調べること"ではないと理解できてないからです。
問いに正解があるはずと誤解していると、考えることに時間をかけず、ひたすら調べることに没頭してしまう。それではいつまでたっても答えは解決できない。

今自分が悩んでる問題が、正解のある問題(調べればファクトがわかる問題)なのか、それとも正解のない問題なのかを最初に見極めることがまず大切。直面している問題を分けてみて、①:調べてみてわかる事(ファクト)については、ネット検索するなり、専門家に聞くなりする ②:調べてわからないこと、自分が判断しなくてはならないことは何なのか、を項目ごとに整理して書き出す。
③:②の各項目については、その判断基準やそれぞれの選択のメリット/デメリットも書き出すと、より思考が整理できる。

よくやってしまいがちなのは、上記の整理ができていないにも関わらず、いきなりネットで検索してしまうこと。何が判断軸としてあり、自分の優先順位は何なのかという整理が自分でできていないので、ただ情報の波を漂い、それっぽい意見を情報収集することだけに時間を使ってしまう。結局、何も決める事ができない。そんな人には、本書はお勧めです。

意見の表明にはスキルやエネルギーが必要だったのに、SNSが、考えないと発信できなかった時代を、考えなくても発信できる時代に変えた。だから発信する人が爆発的に増えた。
SNSは、反応しかしない人や反応しかできない人、すなわち意見を言えない人意見のない人にも発信できる方法を提供し始めた。それがいいねボタンでありリプライやリツイートといった仕組みです。

 意見を発信するには、自分の頭で考え、言語化するという訓練を必ず通る必要があります。やってみるとわかることですが、言語化(=アウトプット)してはじめて、自分の意見や価値観に気づく事は、よくあること。自分の言葉にしてみてはじめて、自分のものとなります。

 自分の意見を明確にするために考えるという行為が必要な事はわかるが、その具体的な方法のステップがわからない人、自分がどこの位置にいるのかわからない人は、短い文章であっても本書で紹介されているステップを踏んで、手を動かすのが良いでしょう。

一定量以上の意見を表明すると、ある時点からその意見の集合体が、その人の自我や人格を形成し始めます。

これほんとに自分の意見かなと確認したい時→世の中の9割の人が異なる意見であっても自分の意見はこれだと断言できるか、自問してみる等、具体的な手法が紹介されています。段々と自分の考えや核となるもの、深い価値観・大切にしたいものが明らかになると、自分にとっての幸せの輪郭がより明らかになり、日々の選択もしやすくなっていく気がします。

大事なのは今、自分は幸せ、楽しいということであって、そうであれば、たとえ過去の選択が不正解であったとしても何も問題は無い。
意見を言うとは、ポジションを明確にすること。自分の意見を棚上げし、他者の否定や質問ばかりしていてもいつまでたっても自分の意見は明確になりません。
意見をいう時に気をつけるべきは、その意見が正しいか、間違っていないか、ではなく、「その意見とやらは、本当に自分の意見なのか?」という事の方でしょう。
継続して様々なことに意見を表明する→人格(キャラ)が伝わる→ ファンができる。

<最後に> 

 論理的に帰結できるもの、パターン化されるもの、大量のデータを収集すれば推定できることは、徐々にAI等に置き換えられていくのでしょう。『替えの効かない自分』を確立していかないと、生きづらい世の中になると言われています。私って、結局何のために生きてるんだろう?とはなりたくないものです。主観がAIに置き換えられることは、決してありません。

自らの「主観」を育てる。そんなことを念頭に、日々の子育てにも、自分自身にも向き合っていきたいものです。

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