Naraide

音楽/思想/その他

Naraide

音楽/思想/その他

マガジン

  • 踊ってばかりの国 全アルバム評

    2009結成のロックバンド、踊ってばかりの国の全アルバムをリリースされた順にレビュー予定。

最近の記事

光の中に [2019] 踊ってばかりの国 アルバムレビュー

踊ってばかりの国、6th fullアルバム『光の中に』のレビュー。ガレージロックに回帰したポップなテイストの前作から再び繊細なサイケデリックロックを志向した踊ってばかりの国の代表作かつ安定作である。 ドラム坂本、二人のギター大久保と丸山の加入によって新制踊ってばかりの国となったばかりの頃に出されたやや不安定な前作に比べて、それぞれのメンバーの持ち味が生かされて、下津のサイケロックとして安定が魅せられる。しかしそのサイケ感というのは明らかに『世界が見たい』や『FLOWER』と

    • 君のために生きていくね [2017] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

      今回は6枚目のフルアルバム、『君のために生きていくね』のレビュー。サイケデリックロックというよりUSパンク〜ガレージロックを日本語ロックとして編み直した比較的ポップな作品と言える。  前作『Songs』の愛と狂気による内への志向というものだったが、ここから狂気やアングラ(90’s-00’sサブカル的なものとも換言できる)の要素を大きく抜き取ったのが本作である。サウンド面ではGt.林宏敏の脱退により、ザラザラしたサイケデリックサウンドではなく、サラサラしたガレージロック•US

      • SONGS [2015] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

        4枚目のfullアルバムとなる『SONGS』をレビュー。前作からの傾向を引き継ぎ、刺々しい作風は控えめとなり、その後の踊ってばかりの国の一つの大きな基礎をなしたと言えるのが今作だ。 Bass谷山の加入、そして2013年の活動再開、2014年の1月にセルフタイトル『踊ってばかりの国』をリリース。その約一年後に発表されたのが4th full『Songs』である。休止中から作られていたという曲もいくつかあるものの、前作に見られた愛のための怒りと言うべき主題は見当たらない。当然とし

        • 踊ってばかりの国 [2014] 踊ってばかりの国 (アルバムレビュー)

          3rd fullアルバム『踊ってばかりの国』。セルフタイトルにして休止からの復帰作。昔からのコアなファンの間では支持を集めるアルバムだが、サブスクは解禁されていない。 2012年の『FLOWER』リリース後に脱退したBass柴田の脱退に伴い活動休止したが、2013年春にBass谷山が加入し、再開した。谷山は加入時、ベース経験どころかバンド経験もなかったというから驚きだ。活動再開後の一枚目として2014年1月に出したのがこのアルバムだ。 正直なところ前作に比べても、同時代の

        光の中に [2019] 踊ってばかりの国 アルバムレビュー

        • 君のために生きていくね [2017] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

        • SONGS [2015] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

        • 踊ってばかりの国 [2014] 踊ってばかりの国 (アルバムレビュー)

        マガジン

        • 踊ってばかりの国 全アルバム評
          9本

        記事

          FLOWER [2012] 踊ってばかりの国 (アルバムレビュー)

          今回は3rd mini アルバム『FLOWER』だ。このアルバムは踊ってばかりの国の一つの臨界点にあると言える。またフルアルバムでもメジャーでもないが、同時代の日本の音楽シーンにおいて特異点という意味で重要なアルバムの一つだと考えている。 ある時代以降「日本社会を歌う」、「ミュージシャンが社会批判にコミットする」というのは困難となっていった。「政治を音楽に持ち込むな」、「音楽を政治利用するな」等々。忌野清志郎の死というのは生物的な死以上の意味を持つ。カウンターカルチャーとし

          FLOWER [2012] 踊ってばかりの国 (アルバムレビュー)

          世界が見たい[2011] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

          今回は2nd fullアルバム『世界が見たい』。このアルバムに関しては長めのインタビューが残っているので半分以上がそれに依拠している。最後にリンクを載せてある。 このアルバムは踊ってばかりの国にとって大きな転機であった。その理由は大きく分けて二つある。 一つはサウンド面でギターの大きな役割を担いつつ、下津と共に踊ってばかりの国のブレーンでもあった滝口敦士の脱退だ。理由として下津との方向性の違いがあるとされている。この脱退によりギターは林が中心となり、重厚感のあるサイケデリ

          世界が見たい[2011] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

          SEBULBA [2010] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

          踊ってばかりの国のアルバムのレビュー。今回は1st fullアルバムである『SEBULBA』だ。 もしも前作『グッバイ、ガールフレンド』を尖った作品だと見なすならこの作品はややマイルドになったと評されるだろう。下津の声の刺々しさは相変わらずだが、歌詞やサウンドでは彼が想いを歌っているのがわかる。ここまで優しく愛を歌うというのは前作と次作『世界が見たい』との間にあることを考えると不思議に思われる。想いというのは恋人のみならず彼の周辺の様々な人たちへのもの。一般的にもイメージし

          SEBULBA [2010] 踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

          グッバイ、ガールフレンド[2010]踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

          踊ってばかりの国のアルバムについて。『おやすみなさい。歌唄い』に続く2回目。ぜひ前回のも読んでほしい。 2ndミニでEPアルバム、『グッバイ、ガールフレンド』。アルバム名からは失恋ソングだと思い、手に取ったり再生ボタンを押した人は多かったかもしれない。ただ実のところこのアルバムに典型的で誰にでも分かるような失恋ソングは含まれていない。下津が仕掛けたちょっとした挑発的なトラップのようにさえ思える。 このアルバムはちょうど踊ってばかりの国のメンバーたちが神戸から東京の吉祥寺あ

          グッバイ、ガールフレンド[2010]踊ってばかりの国(アルバムレビュー)

          おやすみなさい。歌唄い [2009] 踊ってばかりの国 (アルバムレビュー)

          何回かに分けて踊ってばかりの国のアルバムのことについて書きたいと思う。単なるレビュー以上のものを目指して書いている。基本はアルバム全体と曲ごとという構成の予定。サウンドより歌詞の話がメイン。 2009年リリースの1stミニアルバム。彼らがまだ神戸に本拠地を置くときのもの。下津の声は荒削りで毒々しさがある。全体としてはインディーズらしい音のチープさがあるが、演奏は決して軽くなく、曲調が不安定でサイケデリック感が強い。のちの曲と比べても多くの曲はゆったりとしたリズムテンポなのも

          おやすみなさい。歌唄い [2009] 踊ってばかりの国 (アルバムレビュー)

          実家の文化資本をたどる

           Twitterでなにかと話題になる“親ガチャ”、“文化資本”というワード。耳にしていたが、あまり詳しくなかったし恥ずかしながらブルデューさえも知らなかった。(つい最近図書館で入門書を斜め読みした)  このnoteで自分の実家にあった文化資本、自分が肉親(一部友人)から与えてもらった文化資本を思い出して中学校まで年代順に綴っていく。高校からはほぼネットが文化資本への接続口だったから言及しない。またブルデューについては上にあるようにほぼ知らないので専門的なことにはほとんど触れ

          実家の文化資本をたどる