高額薬価に是非を問えますか?

先日、脊髄性筋萎縮症に対する遺伝し治療薬「ゾルゲンスマ」が薬価収載され、保険適用になりました。薬価は1投与あたり1億6707万7222円。3割負担で4800万ですが、高額医療費が適用されるので最大で自己負担額は14万円くらいです。

さて、なんでこんなに高額になるのか?ちょうど↓こんな記事がありました。

ゾルゲンスマが使えるのは、2歳未満で、1回の投与で長期間効果があります。この病気にはスピンラザという薬が元々ありましたが、これは4ヶ月に1回投与が必要でした。ゾルゲンスマを1回使うことでスピンラザの投与11回分が不要になるそうです。よって、スピンラザの薬価944万円×11本=1億1000万円くらいをベースに、先駆け審査指定制度加算と有用性加算が合わせて60%乗って、1億6000万を超えたということです。

これが妥当なのかと、金額だけ聞いたら思ってしまいます。さあどうでしょう?ちょっと考えてみましょう。

脊髄性筋萎縮症は指定難病で、乳児期から小児期に発生する患者数は10万人に2〜3人です(難病情報センターより)。ゾルゲンスマは2歳未満にしか適用できませんから、投与患者数は年間25人と市場規模予想は出ています。薬価から計算して44億円です。

医療用新薬の開発は数百億円と言われています。アステラス製薬のIR情報を見ると2018年で約2100億円です。ちなみにゾルゲンスマを開発したノバルティスの2018年研究開発費は91億ドル(1兆円)で、トヨタ自動車と同じくらいです。

しかし、数百億円かけ、10年ほどの年月をかけた医薬品ですが、年間25人にしか使われない。特許は出願から20年ですから、先発として開発費用を回収できるのは長くて10年か15年。300回くらいしか投与されない中で開発費をペイしなきゃいけないわけですから、この1億円も仕方ないでしょう、と医薬品に関わっている身としては思います。

どんなに高価な薬も、人の命には変えられない。

1億円で、乳幼児一人の明るい未来が開けるのなら、安いものではないかなと。


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