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デジタル庁はどのようにつくられるか

安倍首相の退任に伴う次期内閣総理大臣が自民党総裁選挙によって、実質的に菅義偉衆議院議員(以下、菅氏)に決定しました。 菅氏は総裁選挙前からデジタル庁の創設を主張しており、総裁就任後には「新型コロナウイルス禍で浮き彫りになったのはデジタル関係が機能しなかったことだ。思い切って象徴としてデジタル庁をつくる。法改正も早速やっていきたい」と述べています(日経新聞「菅新総裁「規制改革で日本を前に」 デジタル庁創設へ法改正」)。 そしてデジタル庁の担当相には前IT・科学技術担当大臣であり

    • 自動的な行政行為とは?

      昨今、電子行政や行政手続のデジタル化を求める声が高まってきているが、その実態は何なのか(ここでは電子政府という国の行政機関を想起させるワードではなく、地方自治体も含めた電子行政というワードを用いる)。結論を先に述べると、ドイツでは「電子的な行政行為」と「自動的な行政行為」が区別されている。 「電子的な行政行為」とは、行政手続の最終的な決定を電子的に保存し場合によっては送付することを意味する。 「自動的な行政行為」とは、裁量の余地がない行政行為を人間の関与なしに行うことを意

      • 修論 商業登記のオープン化 4

        商業登記のオープン化1 商業登記のオープン化2 商業登記のオープン化3 ここまで見てきた通り、商業登記は各国がそれぞれの歴史のなかで発展してきました。また、どの国においても公示力は商業登記において重要な役割を担っていたと言うことができると思います。 ここからは少し時代が進んだ、現在のEUの前身であるECが出来た事によって各国の商業登記制度に与えた影響について見ていきたいと思います。 1968年にEC委員会で採択された第一ディレクティヴ案では、株式会社、株式合資会社、有限会

        • 修論 商業登記のオープン化 3

          ○修論 商業登記のオープン化 1 ○修論 商業登記のオープン化 2 次に、フランスの商業登記の歴史を考察していきます。 フランスにおいては「会社の公示」と「商人一般に対する商業登記」がそれぞれ別個に発展してきたという特殊な経緯があります。 フランスの会社の公示制度の始まりは16世紀にイタリアの銀行家への規制を目的としたものでした。裕福なイタリア人がフランス国内で銀行を設立し、銀行業を営むためには社員の氏名などを登記することを要し、違反した場合には詐欺罪などで処罰していま

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          修論 商業登記のオープン化 2

          商業登記の歴史を考察するにあたって、まずは世界的な商業登記の起源について考えます。 古代ローマ時代には既に商人に対して、看板を店頭に掲げることを法律で規定していました。これは一般公衆に対する公示と考えることができます。 しかしこれは商人が看板を設けているだけであるので登記ということができるかは疑問が残ります。 登記とは国が管理している情報であるので、古代ローマの公示方法を現代に置き換えてみれば、それぞれの会社が自分のホームページに各々の書き方で登記事項を記載している状態とする

          修論 商業登記のオープン化 2

          修論 商業登記のオープン化  1

          法律には条文があり、それを基礎に解釈や学説、判例が生まれてきます。考え方は人それぞれではありますが、条文や判例などによっては実社会の考え方と乖離しているものも見受けられます。 法律を勉強したことがある方であれば、そのような場面に出くわし、苦しんだことがあるのではないでしょうか。 本稿では専ら、会社法の中での「商業登記の公示力」について考察していきたいと思います。 会社法第908条1項では、『この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に

          修論 商業登記のオープン化  1