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デジタル庁はどのようにつくられるか

安倍首相の退任に伴う次期内閣総理大臣が自民党総裁選挙によって、実質的に菅義偉衆議院議員(以下、菅氏)に決定しました。
菅氏は総裁選挙前からデジタル庁の創設を主張しており、総裁就任後には「新型コロナウイルス禍で浮き彫りになったのはデジタル関係が機能しなかったことだ。思い切って象徴としてデジタル庁をつくる。法改正も早速やっていきたい」と述べています(日経新聞「菅新総裁「規制改革で日本を前に」 デジタル庁創設へ法改正」)。
そしてデジタル庁の担当相には前IT・科学技術担当大臣であり、自民党「デジタル社会推進特別委員会」の座長を務めている平井卓也衆議院議員(以下、平井氏)が就任する見込みです(毎日新聞「デジタル担当相に平井卓也前IT担当相 菅総裁、起用方針固める」)。
ここではデジタル庁は法的にどのように位置づけられるのか、どのように創設されるのかを解説していきたいと思います。

省庁を作るとは(3条機関)

日本には1府12省庁と呼ばれる内閣府をはじめとした法務省・総務省・復興庁などの省庁が存在します。
これらの省庁は国家行政組織法3条に基づく機関、いわゆる「3条機関」と呼ばれ、それ自体として「国家意思を決定し、外部に表示する行政機関であり、具体的には、紛争にかかる裁定やあっせん、民間団体に対する規制を行う権限等を付与」されています(厚生労働省「三条委員会及び八条委員会の概要」)。
これに対して3条期間の所掌事務の処理をするために設置される機関(「8条機関」)が存在します。
省庁は3条機関に該当するため(3条2項)、デジタル庁は3条機関に該当します。
すなわちデジタル庁には、観光庁や中小企業庁と同一の権限が付与されることになると予想されます。

省庁を作るとは(庁の立ち位置)

また、省庁を作る場合には「法律の定め」が必要になります(3条2項)。
この法律とは、内閣府設置法や復興庁設置法と呼ばれるものです。
すなわちデジタル庁を設置するためには、「デジタル庁設置法」を定める必要があります(スポーツ庁の設置には文部科学省設置法の改正で対応しているため、デジタル庁の元となる省の設置に関する法律の改正となる可能性もあります)。
余談ですが、法律の文言において「デジタル」という単語は今まで使用されていません。
デジタル手続法(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律)の中でさえも「デジタル」という単語は使用されていないことから、「デジタル庁」の正式名称は「情報通信技術庁」などになると思われます。
また、国家行政組織法の規定から、庁は省の外局として存在する必要があります(3条3項)。
例えば、金融庁は内閣府、国税庁は財務省の外局です。
デジタル庁も同様に内閣府またはいずれかの省の外局として存在する必要があります。
考えられるパターンは省から独立している内閣府、または通信技術や行政手続を所掌事務としている総務省です。
個人的には「省庁を横断したデジタル化を図る」という目的から内閣府の外局として設置した方が機能すると考えています。

デジタル庁はどのようにつくられるか

ここまで見てきた通り、新たに3条機関であるデジタル庁を設置するためには、国家行政組織法に基づき、デジタル庁設置法のような立法をする必要があります。
菅氏を新たに総理大臣に指名するために臨時国会を開く予定があるため、早急にデジタル庁を設置するのならば、その臨時国会において法律を制定する必要があります。
とはいえ、法案の作成には内閣法制局による審査等のフローが存在するため、臨時国会に間に合わない可能性もあります。
その場合には、1月に開会される2021年の通常国会において法律が制定されることとなります。
以上、簡単にデジタル庁の法的位置付けや設置フローを解説でした。

中央大学法学研究科博士後期課程・行政書士 飯田森

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