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2020年下半期 心にうるおいをくれた10本の映画

2020年下半期に見た映画についてです。

7〜12月に劇場で見た映画の中で心に残った映画を選んでみました。
個人的に好き!って思った映画か、何かしら引っかかった映画です。
順番に意味はありません。ひとこと感想も、、一応書きました。

劇場版「アンダードッグ」 前編・後編

なんと予告も入れたら約5時間。うぎゃーーー!って上映時間。
だけど、これ、傑作!!!!すんごかった。
年齢的に限界の迫るかませ犬ボクサー、若手のホープ、芸人ボクサー、3人それぞれが、人生のどん底から人生を賭けて戦うボクシング群像劇。
役者がみんなすごい。とにかく森山未來、すんごい。いや、みんなすんごい。
後編はもちろんすごい盛り上がるんだけど、個人的には前編のラストが超絶来た。
番組の企画でボクシングをやる芸人役の勝地涼!!!すばらしかった。
大物芸能人の二世で、金はうなるほどあって、浮かれた生活をしていて、でも生きてる実感はまったくなくて、そんな彼が初めて真剣に向きあうものに出会って、それがボクシングで…。
そこからのクライマックス。体中の水分が全部干上がるんじゃないかってくらい泣いた。
とにかくどう転がるかわからない飽きることない5時間だった。
どん底から輝け!!!
配信でドラマ版が見れるみたいで、こちらも早く見ないと。

アンダードッグ(2020年)
製作国:日本 / 上映時間:前編131分/後編145分
監督 武正晴
出演 森山未來 北村匠海 勝地涼


「燃ゆる女の肖像」

どえらく美しい映画だった。
見る者と見られる者という映画的テーマ。
それをじつにていねいに、繊細に描き混むことで、目に見えない「想い」が強烈に表出してくる奇跡のような作品だった。
劇中で印象的に使われる2曲の楽曲もすばらしくて、目と耳と感覚と研ぎ澄まして見る喜びに震える映画体験だった。
28ページ、そしてヴィバルディ…うーん、とにかく儚い。
人生の中でのほんのわずかな期間のできごとが、人生のすべてになりうるっていう。
困るのは、この映画、良すぎるってことだ。
あんまり良すぎるから、くだらないことを書きたくないんだけど、島の祭で歌われる合唱がすごく美しい曲で、エンドクレジットで再び流れて、やったーー!っ思って、メロディを覚えようって集中して聴いていたら、歌詞が「フジイ、ナンパする」にしか聞こえなくてなって、なんというか自分の低さだけを感じて帰った。

燃ゆる女の肖像(2019年)
原題 Portrait de la jeune fille en feu
製作国:フランス 上映時間:120分
監督 セリーヌ・シアマ
出演者アデル・エネル ノエミ・メルラン ルアナ・バイラミ


「佐々木、イン、マイマイン」

好きすぎる映画だった。
青春振り返りものの映画に自分がめっぽう弱いってのもあるけど、見てる間じゅう、むずがゆくて、切なくて、なんだかたまらなかった。
佐々木のような存在が自分の青春時代にいたかはともかく、映画が終わる頃には、ぼくの心に佐々木がいた。
世代も環境も違うけど、彼らと共にあの時代を生きてきたような気分になった。
カフカの「変身」だったり、Nintendo64の「カスタムロボ」だったり、調味料増し増しのカップ麺だったり、ディテールに独特の個性があって、本当にいた誰かの過去をのぞき見しているような現実感があった。
佐々木の散らかった汚い部屋を見てるだけで、彼が何を考えていたか、それが頭をかけめぐって、とにかく切なくなる。佐々木〜。
あと、最近何かと気になる萩原みのりが出ているのもポイント高かった。あと小西桜子も。

佐々木、イン、マイマイン(2020年)
製作国:日本 上映時間:119分
監督 内山拓也
出演者 藤原季節 細川岳 萩原みのり


「魔女見習いをさがして」

20年前のアニメシリーズ「おジャ魔女どれみ」の完全新作劇場版。
「おジャ魔女」世代ではないけど、そんなん関係なく、とっても良いアニメだった。つーことは、世代ど真ん中の人たちには刺さりまくるんだろうな。
「おジャ魔女」を見て育った悩める3人の女性たちが主人公。
そんなメタ構造のちょっとトリッキーな続編。
アニメの中でアニメの舞台になった場所を聖地巡礼をしつつ、子どもの頃に信じていた「魔法」に触れていく。
好きなモノをずっと好きでいて、それは人生の支えにもなって、それが希望に変わっていく、なんともステキなお話でした。
そして、モモクロ・百田夏菜子の声優力の高さにやられた。

魔女見習いをさがして(2020年)
製作国:日本上映時間:91分
監督 佐藤順一 鎌谷悠
出演者 森川葵 松井玲奈 百田夏菜子


「誰がハマーショルドを殺したか」

1961年に飛行機事故でこの世を去った国連事務総長ダグ・ハマーショルドの死の真相を追ったドキュメンタリー。
それは事故だったのか、それとも何者かに殺されたのか、という映画になるはずが、事件を追っていくうちに話は思わぬ方向に転がっていく。
そして、ある秘密組織の存在と、とてつもなく恐ろしい国家の隠謀にたどり着く。
ある事件を追っていくうちに、思わぬ真相にたどり着くって物語はたくさんあるけど、えーと、これドキュメンタリーですよね?
とにかく無類に面白い映画であるのは間違いない。
さっき出てきたあいつが実は…なんていう展開も実に面白い。
だけど、浮かび上がる事実のあまりの恐ろしさに言葉を失う。

誰がハマーショルドを殺したか(2019年)
原題 Cold Case Hammarskjöld
製作国:スウェーデンデンマークノルウェーベルギー 上映時間:123分
監督 マッツ・ブリュガー


「本気のしるし <劇場版> 」

言ってみたら4時間の沼。
どうしようもない人が、どうしようもなく、どこまでも落ちていく。
2019年に放送されたテレビドラマの再編集版。
上映時間はほぼドラマ版とほぼ変わらず約4時間。
職場の女性と曖昧な関係を続ける男と、すぐにばれる嘘をついて周囲を振り回す女の恋愛映画。
その場をとりつくろって、うわべだけで生きている間に、いつのまにかとんでもないところに落ちてしまっているような、まさに沼の映画。
ドラマ版も最高だったけど、これを一気に4時間で味わえるのだ。
なんだ、最高じゃないか。
なんつっても深田晃司監督だ。人間のダークサイドを描かさせたらピカイチだ。
主演2人のポテンシャルも極限まで引き出している。
陽性っぽいたたずまいなのに信頼できない感じの森崎ウィンもいいし、何より土村芳の沼感あふれる存在感。最高だ。
同じセリフを別の人物が言っていることで、意味が全く変わる感じとか、最初の踏み切りと、最後の踏み切りのシーンのつながりとか、一気に見ることで深まる味わい。「最高!」以外に言葉がでてこない大好きな映画だ。

本気のしるし 劇場版(2020年)
製作国:日本 上映時間:232分
監督 深田晃司
出演 森崎ウィン 土村芳 宇野祥平


「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」

とくに欅坂に思い入れがあったわけではないのだけど、それほど詳しくなくても何となくわかる「平手友梨奈」という見るからにやっかいそうな素材がチームの中でどう存在していたのかを確認したくて見てみた。
明るい話ではないだろうなとは思っていたけど、想像以上に何を見せられているのか分からなくなる映画だった。
絶対的センターである平手友梨奈がいて初めて成立するグループ。
その依存度が大きすぎて、センターがバランスを崩して、やがてチームが崩壊していく。そしてそこからまた新しい何かを再構築しようとしていく話。
なんだかアイドルドキュメンタリー映画とは思えない異様なドラマ展開だ。
一番異様だったのは、精神不安定で出演休止した平手がツアーの途中で1曲だけ復帰するところだ。
参加は一曲だけなのだけど、歌いもせず、メンバーが踊る後ろをただうつろに歩くだけというパフォーマンスをする。まるで幽霊だ。
ただ、彼女がうつろに歩くことでパフォーマンスが完成するという不思議なバランス。この危なっかしくて不安定なバランスが「欅」らしさのような気がした。

僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46(2020年)
日製作国:日本上映時間:137分
監督 高橋栄樹


「はちどり」

息苦しい世界の内側の話。
94年、韓国、中学2年女子。何も起きない日常。
自分に通じるものなんて何もないのに、この感覚は知っている。
何者でもなく、何もできず、逃げだすこともできない。
狭い世界で自分しか見えてなかった少女が、初めて自分以外の世界があることを知るまでの話。
しばらく離れていた家に久しぶりに帰ったときに感じるちょっとした違和感とか、何気ない感情や感覚が映像にぎゅっと圧縮されていて、圧倒的によくできた映画だった。
この映画のすぐ後に「ボヤンシー 眼差しの向こうに」という映画を見た。
こちらはカンボジア。14歳、学校にも行けず家の農業の手伝いをさせられる少年。
貧困状態で未来に希望のない状況から抜け出そうと、外の世界に踏み出すも、そこに待っていたのは逃げ場のない船の上で続く永遠の奴隷労働という映画。
小さな船の上という究極の閉塞空間で展開されるまさに地獄のような世界。
「はちどり」の逃げ場のなさも辛いけど、逃げ出してしまったら本当の地獄が待っていたという…14歳、救いがなさすぎる。

はちどり(2018年)
原題 벌새/House of Hummingbird
製作国:韓国アメリカ上映時間:138分
監督 キム・ボラ
出演者 パク・ジフ キム・セビョク イ・スンヨン


「ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー」

ガリ勉女子高生コンビが高校最後の夜に大冒険する青春映画。
「スーパーバッド 童貞ウォーズ」のガールズサイドっていえばそうなんだけど、
すばらしいのが、この映画の中の世界の描き方だ。
ノー・ヒエラルキー!
人種もジェンダーも見た目も何も全然関係ない。
みんながそれぞれ人生を謳歌している。
物語上で邪魔するイヤなヤツ的なキャラクターも出てこない。
ガリ勉女子の主人公って、以前ならちょっとサエない雰囲気に描かれがちだったけど、この映画では自己肯定感全開のバリバリの陽キャラとして登場する。
自分たちが世界で一番イケてるって思ってる。
主人公2人の掛け合いがいちいち最高で、見てるだけで幸せになるし、最高にうらやましいし、何なら泣けてくる。
物語は、誰かを蹴落とすでも、誰かに邪魔されるでもない。
これでじゅうぶん映画は成立するし、なおかつ面白い。
やってることは下ネタ満載で、超下品でくだらないんだけど、掲げている理想の高さはピカイチだ。
世の中をアップデートさせる映画。
こういうエンタメから世界の常識って変わっていくよね!ってそう思わされる映画だった。

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー(2019年)
原題 Booksmart
製作国:アメリカ 上映時間:102分
監督 オリヴィア・ワイルド
出演者 ケイトリン・デヴァー ビーニー・フェルドスタイン


「海辺の映画館 キネマの玉手箱」

大林宣彦監督の遺作となった作品。
当初この映画が公開される予定だった日に監督は亡くなった。
2020年4月10日。
この数日前に緊急事態宣言が出されて劇場は休業され公開も延期された。
それから三ヶ月以上経っての劇場公開。
とてつもなくぶっ飛んだ映画だった。
日本と戦争の歴史をたどる映画であり、映画史でもあり、ミュージカルでもあり、コメディでもあり、ラブストーリーでもあり、ホラーでもあり、アクションでもあり、SFでもあり、実験映画でもあり、つまり何かというと「これこそが映画だ」ということだ。
映画そのものの価値を問い直しつつ、自らの映画人生の集大成として、大林節をこれでもかと見せつけてくる。
本気で何かを残そうとする強い意志を感じた。
まるで遺書だ。
脳みそが3億光年くらいぶっ飛ばされた気分だ。

海辺の映画館―キネマの玉手箱(2019年)
製作国:日本 上映時間:179分
監督 大林宣彦
出演者 厚木拓郎 細山田隆人 細田善彦


ちなみに、上半期の10本はこちら。

おまけ:年間ベスト10

それで、上半期・下半期を合わせて2020年の個人的ベスト10を選んでみた。
あくまで個人的なセレクトなんだけど、「パラサイト」は?「ロングショット」は?「ウルフウォーカー」忘れてません?とか、全然決めきれない…。ああ…。
ちなみに2020年に劇場で見た映画の本数は、劇場161本、配信・Blu-ray等172本、テレビ放映(主に午後ロード)146本でした。
以下、劇場で見た中から選んだ10本です。

1 新喜劇王
2 アンダードッグ 前編・後編
3 本気のしるし
4 はちどり
5 燃ゆる女の肖像
6 ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
7 佐々木、イン、マイマイン
8 ストーリー・オブ・マイ・ライフ わたしの若草物語
9 ビッグ・リトル・ファーム
10 37セカンズ


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